第四十九話 運命の引き寄せと、眠れる帝国の遺産
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私たちは、互いに半信半疑のまま、家族しか知り得ない些細な思い出を一つずつ照らし合わせていった。
その結果、目の前の彼女が間違いなく優希姉さんであることが判明した。
再会できたことは心の底から嬉しい。
けれど、異界を二度も跨ぎ、数百年という時間を超えて再び巡り合うなんて。
もはや何らかの巨大な力によって、私たちの運命が一点に引き寄せられているとしか思えない。
「……単なる奇跡として片付けるには、魔導論理的にも確率が低すぎますね。ところでシェリル、そもそも何故あんな危険な場所に? その酷い怪我の理由は……」
私の問いに、シェリルは忌々しげに、そして悲痛な面持ちで語り始めた。
彼女は、帝国時代の私の婚約者――ヴァルガス。
かつて私の研究を私物化しようと画策していたあのクズの末裔、カイル・ソル・レヴァント率いる闇組織に捕らえられていたのだという。
ヴァルガスの名前を聞いた瞬間、あの時の事を思い出す。
そうだ、あの時私を突き落としたのはあの男だ! だけど……どうしてそんな事になったのかまでは、まだ思い出せない。
だけど、私を裏切った事は、確かだ! 私を突き落とした時のゲスみたいな笑顔が、頭にこびりついて離れない。
シェリルは、話を続ける。
「……あいつ、ヴァルガスに中身までそっくりで反吐が出たわ。私を監禁して、ルナの時に、貴方が残した生物兵器の資料を形にするために、無理やり人工魔核を作らせたのよ」
シェリルの口から語られる凄惨な監禁生活。
拒めば暴力を振るわれ、逃げ出す間際まで生ける道具として扱われていた事実。
何より、かつて私を裏切った男の血筋が、数百年を経てなお、私のたった一人の姉を傷つけ、その尊厳を蹂躙した。
(……私を裏切った男の血筋が、今度は私の姉を道具にした、だと……?)
その瞬間、私の中で、シェリルの親友としてのルナの憤怒と、弟としての悠月の家族愛が、激しく火花を散らして融合した。
許せない。自分への裏切り以上に、姉を苦しめたことが、今の私には耐え難い屈辱だった。
「……そうですか。その組織、およびカイルとやらは、私が地獄の底まで叩き落としてあげます。……塵一つ残さず、この世界から消去してやりましょう」
「ユエ……顔、これまでになく恐ろしいわよ。でも、あいつらには私が罠を仕込んだ魔核を渡してあるから、いつか自滅するはずだけどね」
姉の言葉に、私は冷徹な笑みを浮かべた。
「自滅を待つまでもありません。こちらから引導を渡しに行きますよ。ですが、その前に……」
私は一度思考を切り替え、今の優先事項を整理した。
「シェリル、今は冬が目前です。闇組織を迎え撃つための武力、および本格的な冬を越すための強固な拠点基盤を同時に作り上げます。並行して資材集めを行いましょう」
ー・・・・ー
それから数日が経ち、シェリルの傷が癒え始めた頃。
私たちは拠点の強化と、素材集めを本格化させていた。
私とシェリルが手際よく仕分けをしていると、ふと彼女が手を止めて爆弾発言を投下した。
「そういえば……今さらなんだけど、ユエ。帝国研究所跡地の特一級・戦略物資集積区画は見に行った? あそこなら、開発途中の魔導兵器や重機、色んな道具の製造ラインまでかなり残っているはずよ」
「……あ。そういえば、盲点でした。あそこなら、組織を殲滅する兵器も、冬の備えもすべて揃う!」
私たちは全員で、研究所の深部へと向かった。
私がこの姿で誕生した場所を通り過ぎ、厳重に封印された巨大な防壁扉の前へ。
「あら、カード持ってたのね。ハッキング(物理)でもして無理やりこじ開けようかと思ってたわ」
姉の脳筋な発言に苦笑しながら、私はカードをかざした。
次の瞬間、重々しい駆動音と共に、合成音声が響き渡った。
『――認証を完了しました。ルナ・キングスレイ研究員、戦略物資集積区画への入室を許可します』
驚く仲間たちをなだめ、私は数百年もの間、時を止めていた過去の遺物たちが眠る倉庫へと、ゆっくり一歩を踏み出した。
第四十九話までお読みいただき、本当にありがとうございます!
追記:修正おわりました。
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