第四十六話 時を超えて再会
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日が暮れ、セドリックに夕食の支度を任せている間、私はじっと彼女の傍らでその時を待っていた。
香ばしい料理の匂いが部屋に漂い始めた頃、彼女が小さく声を漏らしてゆっくりと上体を起こした。
「う、ん……?」
しかし、全身の傷が痛むのだろう。彼女はすぐに顔を歪め、再び寝床へと倒れ込んでしまった。
「まだ動いちゃダメだ。痛むだろうから、そのまま寝ていた方がいい」
私が声をかけながら近づくと、彼女は私を見るなり、弾かれたように大きく目を見開いた。
「ルナ……!? え? 私、やっぱり死んだの!? ここ天国なの!?」
パニックになりながら叫ぶ彼女の口から出たのは、帝国時代の私の名だった。
私自身、今の姿でその名を呼ばれるとは思わず、心臓が激しく脈打つのを感じた。
「残念だが、君はまだ死んでいない。……それより、なぜその名を知っている? あなたの名前は?」
彼女は呆然と呟き、自分の体に施された丁寧な手当に気づいて「私、助かったのね……」と安堵の息を吐いた。
そしてもう一度私を凝視し、どこか不思議そうに、私の頭の二本の角と、腰から生えている蛇に目をやった。そして、彼女は自身の名をシェリルだと名乗った。
「シェリル……!? あなたは、本当にあのシェリルなのか!?」
私は思わず彼女の肩を掴み、まくしたてるように問い詰めた。
「痛い! 痛いってば! 怪我人なのよ私! ……っていうか、なんで貴女が私の名前を知っているの? そもそも、なんで私のことをシェリルって呼んだの。……貴女、本当にルナなの?」
驚きと困惑を剥き出しにして問い返してくる彼女。
涙目になる彼女を見て、私は慌てて手を離した。
「あ……すまない。つい興奮した。怪我をしているのに、強く揺さぶったりして悪かったな」
私が申し訳なさに肩を落とすと、彼女は患部をさすりながら「いいわよ、別に。それだけ驚いたってことでしょうし」と、少し毒気を抜かれたように私を見つめ返した。
「……いいわ。お互いが思っている本人かどうか、これで確かめましょう。昔、深夜のテンションで一緒に作ったあの合言葉、覚えている?」
そう言うと、彼女は寝台の上で精一杯胸を張り、朗々と叫んだ。
シェリル:「筋肉こそが、生物における最大かつ最強の機能美!」
その瞬間、私の体は数百年という時間を飛び越え、条件反射で動いていた。
ユエ:「魔導こそが、世界を記述する唯一無二の論理!」
そして、示し合わせたわけでもないのに、二人の声は完璧に重なる。
二人:「「その融合こそが、真理へ至る唯一の道!」」
言い終えた瞬間、視界が熱くなり、お互いの目から一気に涙が溢れ出した。
ああ、間違いない。
シェリルだ。
こんなアホみたいなやり取りを、一点の曇りもない真面目な顔でやり遂げられる相手なんて、世界中で彼女と私しかいない。
「シェリル……!」
「ルナ……!!」
確信した私たちは、なりふり構わず抱き合った。
数百年という時を超えた再会。
ボロボロと涙を流しながら「シェリル!」「ルナ!」と名前を呼び合って騒いでいると、あまりの爆音に驚いたセドリックたちが、慌てて部屋に飛び込んできた。
「な、何事ですかユエ様!」
「ユエ! 敵襲か!?」
血相を変えて入ってきたセドリック、ラウ、それからノアと魔猿たちも。
彼らは、泣きながら抱き合う私たちを見て、完全に「何が起きているんだ……?」という顔で、ただ呆然とその光景を見守る。
3話目今、考え中・・・21時までには、投稿します。
数百年の時を超えた、ルナとシェリルの再会。
「アホな合言葉」を叫び合いながら泣いて抱き合う二人を、温かく見守っていただけたなら幸いです。
この二人の今後の活躍が気になる!面白かった!と思っていただけましたら、
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