表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚された俺、エルフの賢者と融合して究極のキメラになる〜禁忌魔術で、滅びた帝国を勝手に復興させてもらいます〜  作者: 神蛇紫苑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/64

第四十三話 帝国の跡地に逃げる謎の少女

ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。


ー・・・・ー



ユエと、ラウチームが分かれた同時刻、帝国跡地の西側の方角。


「はぁ……はぁ、っ……く……」


二の腕から流れる血がじわりと袖を濡らし、体温を奪っていく。致命傷ではない。だが、凶悪な魔物が徘徊はいかいするこの帝国跡地で、息を潜めて逃げ回るにはあまりに限界だった。私は大きな木の後ろに身を隠し、追っ手の気配が遠のくのをじっと待った。


私は、帝国跡地からほど近い街で、しがない魔道具師として日銭を稼いで生きてきた。私には前世の記憶がある。帝国がまだ栄華を極めていた時代の記憶だ。その頃の私は魔導兵器の研究者だった。だからこそ、今世で貧しい家庭に生まれた後も、当時の知識を総動員して使い捨ての魔道具を作り、なんとか食いつないでこれたのだ。


それにしても、皮肉なものだ。今世で物心がつき、鏡を見た時、そこに映っていたのは前世の自分――シェリルと全く同じ姿だった。名付けられた名前までもがシェリル。なぜ私が私として、当時の姿のままこの時代に送り出されたのか。その理由は分からない。だが、その知識が、結果として災いした。


街で活動していた私は、ある闇組織に技術士として拉致らちされた。組織の親玉に引き合わされた時、私は心底からの吐き気を覚えた。その男は、前世での親友ルナの婚約者に瓜二つだったからだ。


ヴァルガス・ソル・レヴァント……魔導帝国の第四皇子だった男。外面だけは聖者のように取り繕い、裏ではルナの研究を私物化しようと画策していた、あの最低のクズ。純粋に研究に打ち込むルナを便利な道具としか見ていなかったヴァルガスの本性を、私はずっと苦々しく思っていた。いつかルナに別れるよう忠告しようと思っていた矢先、あの爆発が起きたのだ。


「俺は偉大なるソル・レヴァント魔導帝国の正当な血を引くカイル・ソル・レヴァントである! 貴様に、我が覇道のいしずえとなる名誉を授けてやろう」


目の前の男――カイルは、私を見下しながら傲慢ごうまんに言い放った。ああ、やっぱりあいつの一族か。中身までそっくりで反吐へどが出る。


カイルが手渡してきた書物に目を通した瞬間、私は絶句した。それは紛れもなく、親友ルナが研究していた生物兵器の資料。なぜ、これを彼が持っている?


カイルは最強の生物兵器を完成させ、帝国を復活させると豪語した。逆らえば命はない。私は死にたくない一心で人工魔核アーティファクト・コアの製造に着手したが、もちろんそのまま完成させるつもりはなかった。私は密かに、人工魔核アーティファクト・コアの術式を書き換えた。


一定時間が過ぎれば魔力が枯渇こかつして自壊する。さらに、足りない魔力を外部から補おうとすれば、その魔力が回路を暴走させ、内側から肉体を焼き切る……そんな二重のわなを仕込んでおいた。補填ほてんされた魔力によって、一見すると爆発的にパワーアップしたように見えるだろう。だがそれは、許容量を超えた魔力のオーバーフローによって、肉体が崩壊へと突き進んでいるあかしに過ぎない。


(ま、魔晶石ましょうせきそのものを直接食べて、無理やり魔力をねじ込みでもしない限り、暴走することはないだろうけれど……。そんな狂った真似まねをする奴なんて、流石さすがにいないわよね)


ある日、とうとう、その小細工がバレた。私は組織から脱出し、あえて危険な帝国跡地へ逃げ込んだ。けれど、負傷した体での逃亡生活は、とうに限界を超えていた。ふらつく足取りで奥へ進むと、案の定、猫型の魔獣に遭遇した。


「……っ!」


護身用の閃光弾を叩きつけ、全力で走る。それを何度も繰り返すうちに、ついに道具が底を突いた。もう、逃げる気力も残っていない。混濁していく意識の中で、重なる人生が走馬灯のように駆け巡る。


帝国でルナと切磋琢磨せっさたくました日々。そして、それよりもずっと長く心に刻まれている、日本で神嶌優希かみしま・ゆきとして過ごした、愛おしい家族との時間。不器用だった父。笑顔の母。そして双子の姉、優里ゆり。けれど、最後にまぶたの裏に浮かんだのは、三姉弟の末っ子として誰より愛していた悠月ゆづきの姿だった。


「お姉ちゃん!」と笑って私の後を追いかけてきた、あの温かな手の感触。少し生意気になっても、可愛くて仕方がなかった自慢の弟。あの日、私が先に死んでしまったことで、悠月ゆづきはどれほど泣いただろうか。それを思うだけで、今でも胸が引き裂かれそうになる。


(ああ……私、また死ぬのか。優里ゆりや両親もあんなに悲しませたのに……ルナ……皆に、また会いたい)


薄れゆく意識のふちで、最愛の末っ子の名を、祈るようにつぶいた。


悠月ゆづき……あんたは、そっちで元気にやってる……? ちゃんと、ご飯……食べてる……?」


視界が暗転する。目の前に魔獣の鋭い爪が迫る。あらがう力も、術も、もうない。


その時だった。どこからともなく、一人の男が割って入った。視界の端に映ったのは、褐色の肌と、燃えるような赤髪を持つたくましい後ろ姿。


(あー……死ぬ前に、好みの男を走馬灯で見られてよかった……)


そんな場違いな感想を最後に、私は深い闇へと意識を手放した。



3話目今考え中です。少々おまちを、21時までに出す予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ