第三十九話 ノアの驚くべき事実
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あの戦いから1ヶ月ほどが過ぎた。
拠点の生活にもすっかり馴染んだノアを見ていると、驚かされることばかりだ。
この子は、とにかく賢い。改良したキメラ化の術式の恩恵か、あるいは私の遺伝子の一部を組み込んだことによる影響か……。
実は、それは父親であるラウも同じだ。
雑な術式だったとはいえ、私の遺伝子が混ざっている彼は、今や常人を遥かに凌駕する能力を備えている。
彼は学術的な理屈こそ疎いが、戦闘における間合いの管理や魔力運用の最適解を直感的に導き出す、いわば武術の天才だ。
親子揃って、異なる分野で常軌を逸した天才の領域に足を踏み入れているのだ。
だが、ノアの知識における学習スピードは、そのラウの成長速度すら倍で行く異常なものだった。
たった数日のうちに、たどたどしかった言葉を流暢に操るだけでなく、すでに語彙の選択において私と対等に渡り合えるレベルにまで達していたのだ。
ある日、私が食文化の開拓のために、キメラ技術を応用した品種改良の試行錯誤をしていた時のことだ。研究に没頭していると、ノアがトテトテと近寄ってきた。
「ユエ、何をしてるの?」
興味津々といった様子で袖を引いてくる彼に、私は現在行っている研究について簡単に説明した。
ノアは私の言葉を一字一句漏らさぬよう、キラキラとした瞳で一生懸命に耳を傾けている。
そして私が一通り話し終えると、彼は少しだけ首を傾げてこう言った。
「つまり……この植物の持つ情報の配列を書き換えて、過酷な環境に耐えられるようにしながら、育つエネルギーを効率よく使い切るように作り直してる……。それに、前よりもずっと美味しくなるように工夫してるんだよね!」
専門用語こそ使わないが、彼は今私が話したばかりの複雑な術式理論の本質――さらには、私が最も重視している味の向上という目的までも一瞬で見抜き、的確に言語化してみせたのだ。
私は思わず絶句した。
この子の頭の回転の速さは、もはや異常という言葉すら生ぬるいレベルに達している。
私は開発の手を止め、ノアと正面から向き合うことにした。
念のため、現代の知識を用いた知能テストを彼に受けさせてみたのだが……結果は驚くべきものだった。数値にしてIQ140相当。
父が武の天才なら、子は智の天才。
ラウの思考速度も凄まじいが、知識の集積と処理において、ノアはもはや私ですら追い抜かれかねないポテンシャルを秘めている。
(……この子は、私の第二の助手として育てるべきだろうな)
そう確信した私は、アイテムボックスから高度な図鑑や教育本をいくつか選び、ノアに手渡すことにした。
ノアはすでに大人顔負けの速度で文字を読みこなし、内容を瞬時に咀嚼する力を備えていたからだ。
「わあ、ありがとう! ユエ、大好き!」
ノアは本を受け取ると、宝物でも手に入れたかのように嬉しそうに笑い、セドリックに自慢しながら自分の部屋へと戻っていった。
その足取りは子供そのものだが、脇に抱えているのは厚さ数センチもある『魔導薬学大辞典』なのだから恐ろしい。
私はセドリックに、もしノアが解らない文字があったら教えてあげてほしいと、そっと頼んでおいた。
……まあ、おそらく数日中にはセドリックの方が教えを請う側になっているだろうが。
これからの成長が、本当に楽しみだ。
私はほくほくとした気分で研究を再開した。その後、品種改良を次々と成功させ、早速来年の収穫に向けて畑を耕し始めることにした。
いま、続き考えてます。ご飯食べてから、また後ほど投稿しますね。




