第三十七話 炎の鉄槌そして解せぬ結末【後編】
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
あの魔猿が魔晶石を取り込んでさらなる変異を遂げ、ラウを圧倒しはじめたのを見て、私は思わず椅子を蹴って立ち上がった。
すぐに助けに向かおうと足を踏み出したが――その時、ラウに劇的な異変が起きた。
全身を包み込む烈火。
炎の中でみるみる姿を変えていくその様は、まさに日本伝承に登場する妖怪そのものだった。
「鵺……っ!?」
猿の胴体、蛇の尾、そして燃え盛るたてがみ。その異形の咆哮が、戦場を震わせる。
変貌を遂げたラウは、そのまま弾かれたように魔猿へと飛びかかっていく。
先ほどまでの劣勢が嘘のように、ラウは相手を圧倒した。
魔猿が目にも止まらぬ速さで拳を振るうが、ラウはそれを紙一重の制動で躱し、回転の勢いを乗せたサソリ蹴りを魔猿の顎めがけて撃ち抜いた。
『がっ……!』
よろめく魔猿。
ラウは一切の攻撃の隙を与えず、両手に魔力の塊を凝縮させると、至近距離から叩きつけた。
火のエレメントが炸裂し、凄まじい衝撃波が周囲をさらう。
その爆風の中で、魔猿の片方の太い腕が根元から無残に弾け飛んだ。
『ぐらぁあ”あ”あ”!!』
悲鳴を上げる魔猿。
しかし、ラウの手は止まらない。
仰向けに倒れた魔猿の腹部めがけて、渾身の踏みつけを見舞う。
地面が陥没し、周囲の岩盤が派手に跳ね上がるほどの衝撃。
悶絶する魔猿の足に尾を絡めると、そのまま豪快に岩壁へと投げ飛ばした。
ドォォォォン!!
重い衝撃音が響き渡り、壁面が大きく崩落する。
満身創痍になりながらも、なお立ち上がろうとする魔猿。
だが、そこへラウが猛然と肉薄し、鋭く突き出した貫手で奴の胸部を深く貫いた。
パキィィィィン……!
乾いた音と共に、奴の力の源であった人工魔核が砕け散る。
魔猿の体は、過度な魔力汚染でボロボロになっていたせいか、灰のようにサラサラと崩れ去っていき――。
そのまま、静かに絶命した。
静寂が戻った戦場で、ラウの姿が徐々に光に包まれ、人の形へと戻っていく。
だが、そこで私はさらに驚愕の事実を目の当たりにした。
なんと、人型に戻ったラウの姿が……劇的に変わっていたのだ。
以前より10歳ほども若返り、見た目は30代前半といったところだろうか。身長はさらに伸びて2メートル近い巨躯となり、鍛え上げられた肉体はより洗練されている。
以前の姿も渋くて長身ではあったが、今の彼は……なんというか、野性味の中に大人の余裕と、どこか「色気」のある雰囲気を醸し出しているのだ。
「解せぬ!! なんで猿の姿から、そんな超絶男前になってるんだよぉ!!」
魔眼の視界越しに、私は思わずそう叫んでいた。
命懸けの復讐劇が終わった感動を、私の理不尽な嫉妬(?)が上書きした瞬間だった。
スライディング投稿!まにあいました。今日は、これで終わりです。ちょいちょみすってるところは、明日なおしておきます。おやすみなさい。また明日。




