第三十六話 【ラウ視点】
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【ラウ視点:覚醒と咆哮】
激しく激突する。
俺は奴の動きに注目し、その単調な攻撃の癖を読み解いていく。
ユエに教わった通り、力には力で対抗せず、その流れを次々と受け流していく。
奴が大きく振りかぶった一撃をいなし、姿勢を崩したその瞬間。
俺は半回転の勢いを乗せ、受け流した奴自身の力をそのまま肘に乗せるようにして、脇腹へ痛烈な一撃を叩き込んだ。
「ぐぁあああ!」
あまりの激痛に奴が前のめりになる。
逃がさない。
俺は奴の首根っこに足を掛け、バク宙の要領で全体重を乗せて地面に叩きつけた。
土煙が舞い、奴は地面で苦悶の表情を浮かべてのたうち回る。
『なんだ? さっきまでの威勢はどうした?』
冷たく言い放つ俺に、奴は血走った目で睨み返してきた。
『くそ……! 貴様、よくも!』
畳み掛けようとしたその時、奴は振り返りざまに拳を振るうフェイントを見せ、もう片方の手の鋭い鉤爪で俺の目を切り裂いた。
「ぐっ……!?」
思わず目を押さえて後ずさる。
視界が真っ赤に染まったその隙を逃さず、奴がトドメの一撃を放とうと迫る――だが、俺には蛇の尾の目がある。
死角からの不意打ちを難なく躱してみせると、奴は驚愕に目を見開いた。
『なに……!? なんだ、その尾は!』
俺の異質な姿に恐怖し、奴は後ずさる。
そのまま踵を返すと、後方にそびえ立つ魔晶石の柱へと走りだした。
『待て! 逃げる気か!』
俺の叫びを無視し、奴は魔晶石を破壊してその破片を鷲掴みにした。
そして俺を見てニヤリと笑うと、それを一気に口の中へ放り込んだ。
バリバリという嫌な音が響き、奴の姿がさらに異形へと膨れ上がっていく。
『ぐるるぁあああ!』
獣じみた咆哮と共に飛びかかってきた奴の速度は、先ほどまでとは別物だった。
避けきれず直撃を受け、俺の体は崖の壁面へと叩きつけられる。崩れた岩石が俺の体に降り注いだ。
「ぐっ……!」
追い打ちの一撃が迫る。
腕を交差して受け止めようとしたが、あまりの衝撃に力を分散しきれず、俺の両腕が嫌な音を立てて折れた。
「ぐああああ!」
叫ぶ俺を嘲笑うように、奴は拳の雨を降らせてくる。
全身の骨が砕ける感触が伝わり、意識が遠のきかける。
(……このままじゃダメだ。俺には、まだ守らなきゃいけない家族がいるんだ!)
俺は死に物狂いで、ユエに教わった魔力操作を試みた。
周囲の大気から魔力を強引にかき集める。
すると、体の奥底から得体の知れない熱が溢れ出してきた。
無我夢中で魔力を練り上げると、次の瞬間、俺の全身から猛烈な炎が吹き出し、巨大な火柱となって俺を包み込んだ。
『ぐるぁあ“あ”……!?』
あまりの高温に、奴が悲鳴を上げて飛び退く。
炎の中で、俺の肉体が作り変わっていく懐かしい感覚があった。
炎が晴れたとき、そこにはかつての魔猿に近い姿を取り戻した俺が立っていた。
体躯は以前の3倍。
黒い体毛には虎のような赤い模様が浮かび、頭から腰にかけて生え揃ったたてがみは、逆巻く本物の炎のように赤く揺らめいている。
額には新たな二本の小角が天を突き、全身からは以前とは比較にならない力が溢れ出していた。
あまりに急激な俺の変貌に、奴は戦いも忘れ、絶望に顔を引きつらせて固まっている。
その隙を、俺は見逃さない。
「おおおおお!」
咆哮と共に、俺は一気に地を蹴った。
驚愕に目を見開く奴の懐へ瞬時に潜り込み、みなぎる力のすべてを乗せた拳を、その無防備な顔面へと叩き込んだ。
3話目、今急いで書いてます。少々おまちください。21時すぎたらすみません。




