第三十一話 【ラウ視点③】
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二人きりになると、息子は堰を切ったように泣き出した。
俺は震える肩を抱き寄せ、優しく念話で語りかける。
『どうした、大丈夫だ。ゆっくりでいい、何があったのか話してみろ』
息子は何度か深呼吸を繰り返し、震える声で事の経緯を話し始めた。
俺が群れを追われた後、新しい長は恐怖によって仲間を支配したのだという。
気に入らない者は追放し、仲間が命懸けで獲ってきた食料を根こそぎ奪う。
群れの長にあるまじき卑劣な所業だ。
俺の愛する妻は、仲間のために何度も直談判したらしい。
だが、あの男は聞く耳を持つどころか、暴力で彼女を黙らせようとしたのだという。
『あの卑怯者が……!』
腹の底から煮えくり返るような怒りを覚えた。
もともと現長は、俺が全盛期の頃は優秀な右腕だった男だ。
だが、俺の老いを見計らって裏切り、力で俺を追い出した。
唇を噛み締める。
あいつを信頼した俺が馬鹿だった。
長の座など、どのみち譲るつもりだったのだ。
だが、仲間を苦しめ、俺の家族にまで手を上げるなど、断じて許せることではない。
息子はさらに話を続けた。
ある日、森の外から「人間の群れ」がやってきたのだという。
人間どもはこの森を恐れて近づかないはずなのに、不審に思う間もなく、その集団は仲間を次々と襲い、捕らえ始めた。
現長は返り討ちにしようとしたが逆に叩きのめされ、無様に群れを見捨てて逃げようとしたが、見たこともない装置で捕まったらしい。
混乱の中、妻は息子に『お父さんの所へ逃げなさい』と告げた。
息子は止めたが、彼女は逃げ遅れた仲間を助けるために人間に襲いかかった。
……だが。
人間の放った一撃により、妻の身体は引き裂かれた。
息子は、その凄惨な光景を思い出して絶叫した。
まだ息のあった妻が、最期の力を振り絞って『逃げろ』と念話で伝えてきたのだという。
息子は泣きながら森を走り、なんとか逃げ延びた先で、散り散りになっていた仲間たちと合流することができた。
しばらくは洞窟に隠れ、俺を探しながら数日の間、肩を寄せ合って過ごしていたらしい。
だが、事態はさらに悪化した。
死んだか捕まったはずの現長が、仲間たちの隠れ家に戻ってきたのだ。
しかし、その様子は明らかに異常だった。
体から無数の魔晶石が生え、異様な雰囲気を纏っていたという。
『よくも俺を置いて逃げやがったな』
狂気に満ちた念話と共に、現長は仲間の遺体を投げつけ、従わない者はこうなると脅した。
息子は恐怖に震えながらも、仲間を守るために立ち向かっていった。
だが、異形となった男の力に及ぶはずもなく、返り討ちに遭い、大怪我を負ったまま放置されたのだ。
気がついた時、周りには誰もいなかった。息子は痛む体を引きずりながら森を彷徨い、広場まで辿り着いたところで力尽きた。
……そして、俺に救われた。
「……っ!」
ふつふつと湧き上がる、殺意に近い怒りに身が震える。
妻の最期、仲間の惨状、そして変わり果てた現長の姿。俺は息子の頭を一度だけ強く撫で、念話で伝えた。
『大丈夫だ。母さんの仇は、俺が絶対に討つ。おまえは、心配するな』
俺は暗い決意を瞳に宿し、静かに、けれど激しい怒りを孕んだ足取りで部屋を後にした。
今日は、これで終わりです。
つづきは、また明日。
なんども訂正してることがあるので、申し訳ないです。




