第二十八話 翌朝、とりあえず朝ごはんを食べよう。
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翌日、ラウの息子はだいぶ落ち着きを取り戻していた。
私は彼に即席で仕立てた服を着せた。
本当はもっとデザインにこだわりたかったのだが、彼自身が相当疲れていたのだろう。
昨夜は食事も取らずに、泥のように眠ってしまったのだ。
朝になり、ようやく目を覚ました彼は、ラウに先導されながらおずおずと食卓についた。
昨日ラウから聞いた話では、彼らには種族特有の「念話」があり、同族同士なら意思疎通ができるのだという。
……実に興味深い。
すでに概念の伝達手段を持っているのなら、言語の習得もラウよりずっと早いのではないか。
そう思考を巡らせる。
あとで詳しくヒアリングしてみるとしよう。
私の思考が透けて見えたのか、あるいは野生の勘というやつか。
ラウが心なしか寒気を感じたように身を震わせていた。
息子の方は、まだ状況に困惑気味ではあったが、父親の言うことを聞いて大人しく席についている。
「おはようございます、皆様」
セドリックが嬉しそうに朝食を運んできた。
……案の定、ラウの好物であるシチューだ。
(……昨日もシチューだったじゃないか!)
という叫びが喉元まで出かかったが、私はぐっと飲み込んだ。
おそらく、息子にとって人生初となる文明的な食事を、父親の一番好きな料理にしてあげたいという、セドリックなりの気遣いなのだろう。
……分かった、今日は我慢して食べよう。
私は心の中でしくしくと泣きながら、白いスープを口に運んだ。
一方、息子の方はラウにスプーンの持ち方を教わり、不慣れな手つきで一口目を掬った。
その瞬間だった。
やはり親子と言うべきか、彼はラウと全く同じ反応を見せた。
瞳をキラキラと輝かせ、猛烈な勢いで目の前の料理を平らげていく。
育ち盛りなのも相まって、すぐにおずおずと「アウ! アウ!」とおかわりを要求し始めた。
「はいはい、どうぞ。たくさんありますからね」
セドリックは実に甲斐甲斐しく、嬉しそうにおかわりをよそっている。
その横ではラウが「そうだろ! うまいだろう!」と言わんばかりに――自分で作ったわけでもないのに――得意げなドヤ顔を決めていた。
なんだろう、世話を焼くセドリックがだんだん「お母さん」に見えてきたのは、私だけの秘密にしておこう。
――だが、そんな賑やかな食卓に、ふと静寂が訪れた。
勢いよくおかわりを頬張っていた少年の手が、ぴたりと止まったのだ。
彼は持っていたスプーンを握りしめたまま、窓の外、遠くに広がる暗い森の方を不安げに見つめている。
その瞳に宿ったのは、先ほどまでの輝きを塗り潰すような深い怯えだった。
「……アウ……」
掠れた声で小さく鳴き、震えながら父親の腕にしがみつく。
彼があれほどの深い傷を負い、死に物狂いで森を抜けてきた理由は、まだ誰も知らない。
平和な朝の空気に、森から漂う不穏な影が差し込んだ瞬間だった。
今日は、これで終わりです。ちょいちょい修正かけたりしてるので、内容が所々変わったりすることがあるので申し訳ないです。おやすみなさい




