第二十四話 消えかける灯火を救え
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【ラウ視点】
俺はユエに、この森で一番美味いもんが採れる場所を教えていた。
ここは群れにいた頃、仲間にも教えなかった俺だけのとっておきの場所だ。
二度も命を救ってくれただけじゃない。
新しい力と、温かい飯と、何より「仲間」という居場所をくれた恩人に、俺は精一杯役に立ちたかったんだ。
だからこそ、ユエが喜ぶ顔が見たくて、俺は鼻を高くしながら得意げに先導していた。
だが、そんな穏やかな時間が一瞬にして凍りついたのは、その直後のことだった。
ふいに、俺の鼻と、尻尾の蛇が、大気に混じる生々しい血の匂いを捉えた。
そしてその匂いの奥に、忘れるはずもない懐かしい匂いが混じっていることに気づき、俺の心臓は激しく跳ねた。
(嘘だ……嘘であってくれ!)
叫びたい衝動を抑え、俺は木々の間を縫うように、飛ぶような速さで駆け抜けた。
ユエを置いてけぼりにしていることさえ頭から消え、ただひたすら、匂いの源へと無我夢中で突き進む。
森を抜けた先の広場で、俺はそれを見つけた。
地面に横たわる、一匹の魔猿。俺は同族だけに許された念話を、枯れんばかりに絞り出した。
『子よ! 俺の大事な子よ! 返事をしてくれ!』
そこにいたのは、全身を深い傷と大量の血に染めた、俺の息子だった。
……かつて、俺がボスの座を追われた時、俺には若すぎる息子と、俺と同じく年老いた妻がいた。
老いた身体で二人を守りながら群れの外で暮らすのは不可能だと、俺は泣く泣く二人を安全な群れに残して去ったのだ。
群れの掟では、前ボスの血縁という理由で傷つけることはあり得ない。
なのに、なぜ息子がここにいる。なぜ、こんな無惨な姿になっている。
妻はどうした。
頭の中を絶望と疑問が埋め尽くすが、今はそれを考えている暇はない。
『頼む、答えてくれ!』
必死の呼びかけに、息子はうっすらと目を開けた。
『……父、さん……?』
弱々しい念話が返る。生きてる。
だが、傷があまりに深い。
その時、ユエがつけてくれた空飛ぶ球体――フギンが息子の頭上へ移動し、青い光でその身体を包み込んだ。
『解析ガ、完了シマシタ。バイタル反応ガ極メテ低イデス。体外及ビ体内損傷ガ極メテ危険ナ状態デス。スグニ適切ナ治療ヲ推奨シマス』
球体はさらに、俺が聞いたこともない言葉を続ける。
『解析データヲ、ヴァルキリー経由デマスターニ送信シマシタ。速ヤカニ、サブマスター・ラウニ進言。マスターノ方ヘ戻ッテ下サイ』
難しいことは分からねぇ。
だが、ユエなら……あの不思議な力を持つユエなら、息子を救ってくれるかもしれない!
『大丈夫だ! 俺が絶対助ける! もう少しの辛抱だ、耐えてくれ!』
俺は震える手で、壊れ物を扱うように息子を抱きかかえた。
頼む、ユエのところに着くまで保ってくれ。
俺は祈るような思いで、今来た道を、血の匂いを振り切るように全力で引き返した。
もしかしたら。あと1話追加できそうです。少々おまちを。21時までに、投稿予定です。




