第二十三話 老猿だったときの過去の因縁
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【ユエ&ラウ視点】
私たちはラウの案内で、さらに森の奥深くへと足を踏み入れていた。
「ユエ! コレ、オイシイモノ! コレモ、アレモ! ア……コレハ、オナカ、イタイ、ナル……」
ラウはせわしなく動き回りながら、次から次へと食べられる植物を教えてくれる。
私は彼に導かれるまま植物を採取し、アナライズ・メガネで成分を分析。
香辛料として食卓に革命を起こせそうなものを選別しては、片端からアイテムボックスへと放り込んでいく。
「ふふ、ラウ、助かりますよ。これなら今夜の料理はもっと……」
穏やかな収穫の時間が続く。そう思っていた、その時だった。
木の上にいたラウの顔が、見たこともないほどに険しくこわばった。
次の瞬間、彼は言葉を発することもなく、弾かれたように木々を蹴って跳躍した。
シュバッ、と鋭い風切り音を立てながら、驚異的な速度でどこかへ消えていく。その後を、随行ドローンのフギンがぴったりと追従していく。
「――っ、ラウ!?」
さっきまでの楽しそうな様子とは打って変わった、あの鬼気迫る表情。あまりの豹変ぶりに、私は一瞬、反応が遅れてしまった。
大声で彼の名を呼びましたが、すでにその姿は彼方へと消え、返事は無い。
「一体、何が起きたというんですか……」
困惑し、立ち尽くした私の鼻腔を、不意に生々しい刺激が突き刺した。
空気中に漂う、濃い、鉄錆びたような血の匂い。
私の蛇の尻尾が、鎌首をもたげてチロチロと舌を出し、大気中の情報を貪欲に拾い上げていく。
蛇には空気中の匂い物質を捉える器官が発達しており、その鋭敏な感覚は、匂いの主がどの方向にいるのかを正確に指し示した。
「あっち……ラウが向かった場所だ」
嫌な胸騒ぎが止まらない。
私は採取道具を投げ出すようにして、尻尾が示す血の匂いの源へと、全力で駆け出した。




