第二十一話 午後のランチ、深刻な味の問題。
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
拠点に近づくにつれ、鼻腔をくすぐる香ばしい匂いが漂ってきた。
扉を開けると、そこには完璧なタイミングでテーブルに料理を並べるセドリックの姿があった。
「おかえりなさいませ、ユエ様。ちょうど準備が整ったところです」
その傍らでは、ラウが「メシ! メシ!」と言わんばかりに、子供のように椅子の上ではしゃいでいた。
私はそんな彼を「行儀が悪いですよ、ちゃんと座りなさい」と優しく窘め、食卓についた。
並べられていたのは、こんがりと焼き色のついたホワイトグラタン。
そして、その横には頭ほどもある大きな柑橘類ラボンの果汁を絞ったドリンクが添えられていた。
さっそく一口飲むと、ゆずとシークヮーサーを合わせたような、酸味が控えめで優しい甘みが口いっぱいに広がります。
「このラボンは、ラウが採ってきてくれたんです」
セドリックが紹介すると、ラウは誇らしげに胸を張った。
この周辺の植生については、長年ここで生きてきた彼の方が詳しいようだった。
驚くべきことに、帝国時代の私の記憶や、膨大なデータを誇るアナライズ・メガネにさえ登録されていない新種の植物が度々混じっています。
(……本来、数万年単位の時間をかけて進化するはずの植物が、わずか数百年の魔力汚染でこれほどまでに変異してしまったのか。これは探索のついでに、生態系調査もしっかり行う必要がありそうですね)
研究者としての好奇心が疼きます。
ですが、それ以上に目の前の問題が一点。
(……美味しい。美味しいんですが……毎日、乳製品ベースの料理ばかりですね……)
ホワイトシチューの次はホワイトグラタン。
セドリックの腕は上がっていますが、いかんせんバリエーションが白一色です。
二人は満足そうに食べていますが、地球の豊かな食文化を知る私としては、そろそろ別の味覚が恋しくてたまらなかった。
(よし。彼らにも、世界にはもっと多種多様な味があることを教えなければ。これも文明教育の一環です!)
私は、心の中の「やる事リスト」に調味料の新規開発と料理の多角化を、かなり優先度高めでそっと追加した。
「ラウ、セドリック。今日はこの後、みんなで周辺を歩きますよ。新しい味の冒険にもなるかもしれませんね」
私はグラタンを頬張りながら、午後からの探索への期待を膨らませるのでした。
今日の投稿は、これでおわりです。つづきは、また明日。おやすみなさい^^




