【第2章】第十九話 ラウは、勉強より武術を習いたい!
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数日が過ぎました。
あの後、セドリックと今後の生活について話し合い、まずは「ラウの教育」を最優先事項に据えた。
セドリックと交代で、単語を一つずつ指差し、根気よく教える日々。
元が知能の高い魔猿だったことに加え、キメラ化による脳の活性化のおかげか、ラウは驚くほど真面目に学習に取り組んでくれた。
今ではまだカタコトながら、日常的な意思疎通ができるまでになっている。
「ユエ、コレ、ナニ?」
「それはスプーンですよ、ラウ」
そんな会話が拠点に響くようになりました。
言葉と並行して、人としての最低限のマナーも叩き込んでいる。
外見は立派な渋いおじ様なのに、中身が野生の猿のままでは、もし生き残りの人間に遭遇した時に「話の通じない怪物」扱いされかねませんからね。
「……何か、子供向けの知育本みたいなものはないでしょうか」
私はアイテムボックスの奥底をひっくり返しました。……まあ、知っていました。
出てくるのは小難しい魔導書や生体解剖の記録ばかり。
そんな中、ふと1冊の古びた本に目が止まりました。
「これは……体術の指南書?」
流派の型や筋肉の動きが精密な絵で描かれた、いわば格闘技の図鑑です。
なぜこんなものが私の私物の中に? 記憶のラグをたぐり寄せ、ようやく思い出した。
(そうだ……ルナ時代の親友、シェリルの私物でしたね)
彼女は新型魔導兵器開発のスペシャリストだったが、趣味は格闘技観戦と武器収集という、なかなか男前な女の子だった。
そして何より、彼女の好みは「強くて逞しい、渋い男性」。
ふと、セドリックから熱心に言葉を教わっているラウを見やった。
(……あー。生きていたら、彼女の好みにド・ストライクでしょうね、ラウは)
苦笑しながら本をパラパラとめくっていると、休憩時間になったのか、ラウがトテトテと寄ってきて本を覗き込んできた。
「コレ……ナニ?」
「これは武術の本ですよ、ラウ」
「ブジュツ……?」
首をかしげる彼に、私は身振り手振りを交えて教えた。
「悪いやつをやっつけるための、強い体の使い方を記した本です」
なるべく難しい言葉を避け、わかりやすく説明すると、ラウの金色の瞳がキラキラと輝き始めました。
「オレ、コレ、ヤル! ユエ、オシエル!」
必死な顔でお願いされてしまった。
困りましたね。
ルナ時代も悠月時代も、私は格闘技の実戦経験なんて皆無。
……いえ、待てよ。
経験はなくても、私には地球の格闘ゲームやアニメで培った知識という名のイメージトレーニングの蓄積がある。
(……二次元の知識で、異世界のキメラに格闘術を教える。……ふふ、面白いじゃないですか)
「いいですよ。ですが、まずは言葉と文字をしっかり覚えてから。それができたら、特訓を開始しましょう」
「ベンキョウ、ガンバル!」
ラウは鼻息を荒くして、やる気に満ち溢れた様子でセドリックの元へ走り去っていった。
その後ろ姿を眺めながら、私は微笑ましい気持ちで呟きます。
「さて、師匠役をやるからには、私も少し格闘技の型をこの本で予習しておかないといけませんね」
廃墟の拠点に、新しい活気とやる気が満ち始めた、穏やかな午後のひとときだった。
いま、いそいで、あと2話書いてます。少々おまちください。
あと、ここまで読んでくれてありがとうございます。気に入ってくれたら感想など、ブックマーク、評価おねがいします^^。この小説は、読んでて楽しんでもらえる内容なのかちょっと不安になっきたのは、内緒^^;w




