第十八話 月と太陽、新たな名付け、そしてやっぱり服!全裸は、ギルティー(罪)!
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何度も修正すみません。ちょっと納得しない部分があったので・・修正しました。
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記憶のすり合わせを終えた私に、セドリックが「睡眠が深くなりすぎました!」と慌てて起きてきた。
真面目すぎる彼を苦笑いで見送り、部屋に残ったのは私と、昨日羽化したばかりの彼だ。
遅れて起きてきた彼は、まだ新しい身体の重心に慣れないのか、寝床から「おっとっと」という感じで床に転げ落ちてしまった。
「あああ、大丈夫ですか!? 怪我はない?」
心配して抱き起こすと、彼は目を白黒させながら寝床に座り直した。
「やっぱり、その感覚には慣れませんよね。私も最初は大変だったんですから」
私が呟くと、彼は不思議そうに首をかしげた。
言葉の意味は通じていないようだが、その知能の高さは行動の端々から見て取れる。
彼は自身の尾である蛇の頭を鎌首もたげさせ、その目を通してじっと自分自身の姿を見つめていた。
(自分の姿を確認しようとするなんて、普通の魔物にはない知性だ。これは教育しがいがあるな)
そうなると、まず必要なのは名前だ。
燃えるような赤い髪、褐色の肌。
どこか神話の戦士のような佇まい……。
「私の名がユエなら、貴方は太陽に関連する名がいいですね。エジプトの太陽神から取って……『ラウ』というのはどうでしょう?」
うん、響きも良いし、何より彼にぴったりだ。
私は自己満足に浸りながら、彼の正面に座り直した。
ラウは容姿の確認をやめ、本体の目と尾の蛇の目の両方で、不思議そうに私を上目遣いで見てくる。
(……何だろう。見た目はアラブ系のイケおじなのに、中身はお猿だからいちいち行動があざといというか。母性――いや、父性本能をくすぐるというか……)
少し困惑したが、気取り直して言語教育を開始する。
自分を指さして「ユエ」、次に彼を指さして「ラウ」。
これを何度か繰り返すと、察しの良い彼はすぐに応えてくれた。
「……ユエ。……ラウ」
「そう! よくできました!」
私はめちゃめちゃに褒め倒した。
どうやら言葉を覚えるのは早そうだ。
セドリックが戻ったら、彼の名前も覚えさせることにしよう。
だが、言葉の次に……いえ、文明人として言葉以上に優先すべきことがあった。
そう、服だ。私のオタク魂が再び轟々《ごうごう》と燃え上がった。
急に目つきが変わった私を見て、ラウは「ユエ……?」と不安そうに呟いているが、構わない。
私はラウの両手を掴んで立ち上がらせ、壁際へと連行した。
「さあ、ラウ。私と同じように、ビシッと背筋を伸ばして立っていてください」
お手本を見せると、ラウはおずおずと、けれど真面目に私の真似をして壁の前で直立不動になった。
その隙に、私は解析眼鏡を起動。全身のサイズをミリ単位でスキャンしていく。
「よし、ラウ。もう座っていいですよ」
手を引いて寝床に座らせたが、ラウは「何だったんだ今の儀式は……」と言いたげな、困惑の極地といった顔でこちらを見ている。
そんな彼を放置して、私は空間収納から素材と医療用縫合セットを引っ張り出した。
セドリックは知的な漆黒の執事系だった。なら、ダンディな赤毛のイケおじであるラウは……。
(……よし。袖まくりした情熱的な赤のシャツに、カマーベスト。シックで色気のある、バーテンダーのような大人スタイルに仕上げよう!)
一度火が付けば止まらない。
空中に浮かぶ型紙を魔法で操り、凄まじい速度で布を裁断し、縫い合わせていく。
廃墟の一角で、漆黒の針と赤い布が舞い踊った。
「……できた。最高にクールな一着です!」
完成したのは、ラウの褐色の肌と赤い髪を最大限に引き立てる、大人の魅力溢れる衣装だ。
ただ、どうしても靴だけは作れなかった。
丈夫な革も、ソールにするための素材も、今の拠点には揃っていない。
セドリックはもともと獣型で肉球も丈夫なため裸足でも問題ないようだが、人型に近いラウや私はそうもいかない。
(道具と素材が揃ったら、真っ先に三人の靴を仕立てないと……。それまでは、裸足で我慢してもらうしかないですね)
私は出来上がった服を掲げ、自画自賛の笑みを浮かべる。
「服は整った。仲間も揃った。……さて、次はもう少しこの家をまともにするとしようか。やりたいことは、山ほどあるんだから」
窓の外には、かつて世界を焼き尽くした炎の名残のような、真っ赤な朝日が昇り始めている。
だが、その光はもう絶望の色ではない。
私、ユエ。
忠義を誓う執事、セドリック。
そして、再誕した赤毛の戦士、ラウ。
異形の三人が歩む、滅びた帝国のその先へ。私たちの物語は、まだ始まったばかりだ。
ーーーー第1章 完ーーーー
今日話しは、ここまでで。のこりは、また明日。おやすみなさい。
次は2章に移り変わります。




