題十五話 再誕した大切な仲間と祝の料理
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
赤紫色の繭が中央から、激しく音を立てて裂けた。
中から現れたのは、かつての老いさらばえた姿とは似ても似つかぬ、圧倒的な存在感を放つ「男」だった。
燃えるような赤い髪はボサボサの長髪で、褐色の肌に包まれた肉体はボディービルダー並みに引き締まっている。
頭部には太く立派な二本の黒い角が天を突き、そして腰のあたりからは、私と同じくキメラの証である、黒い鱗が鈍く輝く太い蛇の尻尾が生えていた。
顔立ちは、彫りの深いアラブ系のイケメンおじさん。
白目部分が黒く、鋭く光る金色の瞳が私を射抜く。見た目の年齢は40代前半といったところだろうか。
(……解せぬ。なぜ、私と同じキメラ化の術式なのに、彼はちゃんと『男』のまま羽化したんですか。私だけ何故、性別が無い状態だったんでしょうか……。これは、一体何のバグなんですか……)
私が内心でもやもやしていると、元魔猿の彼は、劇的に変わった自身の身体と環境が理解できず、あたふたとパニックを起こした。
かつての私と同じく、尻尾の蛇と視界を共有する感覚に慣れていないのだろう。
元魔猿だったので、言葉の出し方がわからず戸惑った猿のような声を漏らしていた。
「大丈夫、落ち着いてください。貴方は生まれ変わったのですよ」
言葉は、理解している様子はない。
私は彼を優しくなだめながら、とりあえず「生まれたて」の彼に、予備の布を腰に巻かせました。
彼はじっと私と、そして自分の新しい身体を見比べています。
私の遺伝子……もとい、キメラ細胞が混ざったことで、知能が格段に向上しているのでしょう。
自分も私と同じ種族になったのだと、困惑しつつも察したようだった。
その時、彼の視線が後ろに控えていたセドリックを捉え、「ウウゥ……ッ」と低い唸り声を上げました。かつての敵であった変異種の気配を感じ取ったのでしょう。
「落ち着いて。彼は私の忠実なしもべ、セドリックです。もう貴方を襲うことはありません」
私がなだめると、そこに追い打ちをかけるように、私のお腹が限界を知らせる「グゥゥ~」という音を鳴らした。
さらにセドリックのお腹からも、さながら猛獣のような重低音の空腹音が鳴り響き、その音のせいで元魔猿が再び警戒を強めるというカオスな状況に。
「よし、とりあえずご飯にしましょう! 花より団子、再誕祝いよりシチューです!」
私はばばっと、用意しておいた熱々の異世界シチューを彼の前に置いた。
彼はキョドりながらも、器に顔を近づけてクンクンと匂いを嗅ぎ、私とセドリックを交互に見ています。
私が「早く食べなさい」と促すと、彼は恐るおそる一口口にした。
――瞬間、あの時のように瞳をランランと輝かせ、彼は猛烈な勢いでシチューにがっつき始めた。
「ふふ、食欲があるのは良いことです」
その隣で、私とセドリックもようやく胸を撫で下ろし、食卓についた。
セドリックにとっても、ホムンクルスとして生まれ変わって初めて口にする記念すべき料理。
燕尾服の端正な格好も忘れて、彼は夢中でスプーン……もとい木片を動かしています。
塩気の効いた温かなシチュー。
美少女のような見た目のキメラである私と、イケおじキメラの元魔猿、そして燕尾服の獣人執事セドリック。
廃墟の一角で繰り広げられる、あまりにも奇妙で、けれどどこか温かな夕食の時間。
私は二人(二匹?)の食べっぷりを眺めながら、心ゆくまでお腹いっぱいシチューを堪能するのだった。
ついに、老猿ふっかつしました。残りのストーリーは、また明日考えます。
なにか、文脈的におかしいよって感じたら気軽に、言ってください。私も一応何度も確認してるんですけど。見落としがちなので^^;




