第十二話 全裸の従者に救済を
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セドリックが持ち帰った食材を改めて検分すると、驚くべきことに毒性のあるものは一つも混じっていなかった。
(……奇跡的、ですね。いや、私の落ち度です。彼に詳細鑑定の補助もなしに探索へ行かせるなんて)
セドリックを私の有能な助手として育てるなら、彼にも「目」が必要だ。
私は空間収納の奥底を探り、予備の魔道具を引き出しました。それは私が愛用している眼鏡型ではなく、片眼鏡型のアナライズ・モノクル。
「……ふふ、セドリックは立ち居振る舞いがシュッとしていますし、モノクルはさぞ似合うでしょうね」
そう思って彼を振り返った瞬間、私は致命的な忘れ物に気づいて硬直した。
(……待って。セドリック、ずっと全裸じゃないですか!?)
見事な筋肉美を湛えた獣人型で、あまりに堂々としていたから違和感が仕事をしていなかった。ですが、文明人としてこれは看過できない。
かつての私は、致命的に不器用だった姉のために、コスプレ衣装の制作を一手に引き受けていた衣装制作担当でもあった。
今こそ、あの修羅場で鍛え上げたオタクの技術を魅せる時……!
「……いや、絶対に使い所を間違っていますけどね」
自嘲気味に呟きながら、裁縫セットを探す。
ですが、エルフ時代の私は刺繍セットの一つも持っていない、可愛げのない研究者だった。
代わりに出てきたのは――生体実験用の医療用縫合セット。
(……前の私、本当にサイコパスですね。今の私と混ざって、ようやくまともな思考ができるようになった気がします)
「あの、ユエ様。他に私にできることはありませんか?」
感慨に耽っていると、セドリックが神妙な面持ちで声をかけてきた。
「すみません、セドリック。少し待ってください。今、貴方に服を作ってあげようと思っているんです。そこに立っていてもらえますか?」
そう言うと、彼は「服」という言葉に反応したのか、嬉しそうに少し離れて、モデルのように綺麗な姿勢で直立不動になった。
(……やっぱり。気のせいじゃなく、彼には確実に自我が芽生えていますね)
気になりつつも、今は作業が優先です。
私は解析眼鏡の測定機能を起動し、セドリックの全身をスキャン。正確な寸法を網膜に記録した。
「よし、セドリック。動いていいですよ。私は今から製作にかかるので、貴方は外で薪を集めてきてくれますか? ……あと、これ」
私はアナライズ・モノクルを手渡した。
「これを着けて周りを見てごらんなさい。使い方は簡単です……」
簡単に使い方を要約して伝えると、モノクルを装着したセドリックは、驚くほど知的で様になっていた。
……全裸でなければ、もっと良かったのだが。
彼がいそいそと薪集めに向かうのを見送り、私は本格的な魔改造・裁縫を開始した。
素材は、空間収納に眠っていた私の予備の私服数着と、未使用の薄手の掛け布団。
私は解析眼鏡に念じながら、記録したデータをもとに空中に正確な型紙を投影する。
布を切り出し、医療用の縫合針と糸を魔法で操り、凄まじい速度で縫い合わせていく。
(……この曲線、このフィット感。型紙なんて、脳内の3Dモデルで十分です!)
オタクの血、そしてクリエイターとしての執念が、この廃墟で爆発した。
数刻後。
そこに完成したのは、あり合わせの布で作ったとは思えないほど、凛として美しいシルエットの燕尾服。
「……完璧です。まさか、シーツと古着からこれほどの逸品が生まれるとは。自画自賛したくなりますね」
私は出来上がった漆黒の(一部、布団の白がアクセントになった)燕尾服を掲げ、うっとりと自画自賛する。
これこそ、知識と技術の無駄遣い。ですが、主の面目躍如というもの。
あとは、彼がこれを着こなしてくれるのを待つばかりだ。
とりあえず。追加でセドリックに服を作るストーリを書きました。
セドリックごめんね。




