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二人で御飯を食べ御茶を飲んでいた時の事だ。
時計を見ると目を丸くした。
夜の九時だ。
そして明日香の方を見るとノンビリと寛いでいた。
「あはは~~」
バラエティー番組を見て笑う彼女は普通の女の子に見えた。
無防備に見えるその姿は何故か年相応に見える。
ではなく。
「なあ~~ワニ怪人」
「鳳よっ! 鳳っ!」
「どうでも良いけど」
覚える気がないし。
「良くないっ! 花も恥じらう乙女に向かって何言ってるのっ!?」
「乙女?」
僕は何処にいるのか困惑した。
「其処っ! 私よっ! 私ですっ!」
はいはい。
「良いけど……帰らなくて良いのか?」
「え? 御父様から聞いてないの?」
「何を?」
はい?
「私が貴方の妻に成る事」
「マテ」
うん。
行き成り話がぶっとんだっ!
「聞いて無いし妻に成る事も了承してないが」
「御父様が嫁の居ない貴方の事を心配して頼んだの」
「聞いてないぞおおおおおおっ!」
余計なお世話だあああああああっ!
「まあ~~私としても渡りに船だったから助かったけど」
「マテ」
妻になることを軽々しく……。
「組織を裏切ったからね帰れないし」
「其れと妻がどう関係する?」
意味不明だし。
「御父様が身内に成るなら保護するというし」
「身内に成るのが僕の妻?」
え~~。
「そ……幸い貴方は独身だし」
幸いって……。
「なので婚姻届を出したから安心して」
良い笑顔です。
いやマテ。
「何を安心してだっ! 其れに僕は婚姻届に判を押して無いぞ」
「偽造して届けたから私に手を出しても合法よっ!」
サラリととんでも無いこと言いやがったっ!
「止めろはしたないっ! 其れに考え直せ僕はオジサンだぞっ!」
「好みだから良いわ」
「良いんかいっ!」
好みは人それぞれだなっ!
おいっ!
「オジサンなのは嫌だけど」
「じゃあ何で婚姻届けを出したっ!」
頭痛い。
「ノリ?」
「ノリで出すなああああっ!」
「冗談よ幹部候補の私を撃退した所に惚れたの」
「え~~」
何で其れで惚れたの?
意味わからん。
「だからよろしくね旦那様~~」
いや良いんだけど。
良いんだけど。
中身は怪人だが美少女だし。
普通に結婚は出来ないと思ったが……。
まさかあっさりと決まるとは……。
しかも年下。
良いんだろうか。
「はあ~~良いけどさまあ~~結婚云々は兎も角」
「兎も角?」
「居候として扱う」
今はね。
そう今は。
後で考え直すかもしれんし。
「手を出さないの?」
「出すかっ!」
顔を赤くしながら怒鳴ると鳳明日香は……。
いや今は暁明日香か。
何か突然妻が出来たな。
いや良いけど。
良くないが。
うん?
何かが鳴っている。
何処から?
音源を探ると明日香のポケットから聞こえる。
「少し待って旦那様」
「あ~~」
何か慣れない。
こんな可愛い子が僕の妻?
しかもノリで決められたみたいな感じだし。
良いけど。
嫌良くないが。
「旦那様大変よ御父様が……」
「御父さんが何?」
ため息を付きながら僕は首を傾げる。
はい?
「私が元居た組織に捕まったみたい」
「はいっ!?」
明日香の報告に僕は沈黙する。
御父さんが捕まった?
その言葉に僕は沈黙する。
「其れ本当?」
「ええ旦那様」
「ソース元は?」
「組織です」
あ~~。
「私が裏切ったとはまだ知られてないから報告してきたの」
そうなると……。
不味いな。
御父さんが何をして捕まったのは兎も角。
今この状況は不味い。
目の前の明日香を見る。
真剣な表情をしてる。
だがその考えは読めない。
「良いのか僕に話して?」
「うん? 何のことです?」
「前は兎も角ママチャリライダーの保護を当てに出来ないだろう?」
「ああ~~其れですか……旦那様を裏切り組織に返り咲くつもりと思ったんです?」
何しろ担保が無くなったに等しいからな。
「まあね」
「無いですね」
明日香の言葉に僕は戸惑う。
「言ったでよね旦那様の妻ですよ私」
その言葉に僕は思わず赤面した。
「幹部候補迄上りつめた私を恐怖させた旦那様を裏切れるわけないでしょうっ! 怖すぎる」
「そっちいいいいいいいっ!」
思わず絶叫する僕。
仕方ないよね。
好かれてると思わないがまさか逆の理由とは思わんわっ!
恐怖で裏切らないって何っ!
「ああ~~でも旦那様を愛してるのは本当ですよ」
「胡散臭い」
ジト目で見る僕。
普通はそうだろ。
うん。
「命乞いする私を容赦なく埋めようとする冷酷さゾクゾクする」
「明日香さん」
まさかそちらの性癖があるとは……。
ジト目で見る。
「イヤだわ~~妻に他人行儀な~~」
「君に好感度を爆上げしたことないんだが……」
頭痛い。
「そう? 私は好きよアノ冷酷さ怪人の私を超えてるし」
「全然嬉しくない」
いや本当に。
「そう」
うん。
話が逸れた。
「まあいいや君は此処に居て」
「旦那様はどうするの?」
「御父さんを助け出す」
「悪の組織に行くの?」
「ああ」
「どうやって?」
「……」
「良いわ旦那様其れを使いなさい」
明日香の指さす方を見て僕は目を丸くする。
戦闘用経口ナノマシン。
此れが何の役に立つのやら。
「幹部に成れば支給される此れは独自の判断で部下に渡せる物なの」
「そういえば此れは何なんだ?」
「簡単に言えば人を簡単に改造人間にする機械……」
「へえ」
「一つ飲めば戦闘員に二つ飲めば怪人になるの」
「つまり御父さんを助ける為の覚悟を決めろと?」
「そう」
「組織の裏切り防止は?」
「有るけど死にはしないは聞きたい?」
「いや……」
「では使うわね」
「いらない」
「何故?」
「悪いが裏切り防止が何なのか分からない状況ではリスクが高い」
「そう」
「だから使わない」
僕は力を手にする機会を放棄した。




