8.ミストのお茶会(1)
コーデリア達は王都の別邸に着くとお茶会の準備をした。王宮へは侍女エリーと護衛のカイトがついてきた。前回、二人で泣きながら戻ってきたのを見て、カイトが今回はついてくると譲らなかった。ミスト嬢のお茶会へは再び母のリボンがついたドレスを着る事に。デザインが古いらしいが、高身長の母が仕立てのでサイズもドレスの形も合っていたからだ。
お茶会の場所は温室近くの庭園の一角だった。美しい花々に囲まれた場所にテーブルがあり、ミスト嬢が待っていた。挨拶の後、招待されたのがコーデリアだけだと知った。
「コーデリア嬢、今日は来て頂いてありがとうございます。美味しいお菓子と飲み物を用意していますので、ゆっくりお話しましょう。」
「ありがとうございます。またミスト嬢にお会い出来て嬉しいです。」
「見て下さい。貴方に影響されてここにリボンを付けたの。どうかしら?」
ミストの胸元に小さなリボンが3つ付いていた。
「とても素敵です!私、リボンを笑われた事があったのですが、可愛いくて好きなデザインです。」
「笑われたの?もしかしてライアン殿下にかしら?」
「え。はい。」
「全くもう。実はライアン殿下は私の幼馴染なの。」
「え!」
「もう出てきたらどうなの?笑われたって言ってるわよ。」
垣根の裏からムスッとしたライアン王子が出てきた。コーデリアは思わず立ち上がった。
「待ってくれ。君と話たかったんだ。座ってくれないか。」
「殿下と話す事はありません。」
「俺があるって言ってるだろ。」
ミストがライアン王子を睨む。
「そういう態度が良くないのよ!王都まで出てきて頂いたのよ、ちゃんと話して。二人でどうぞ。」
そう言って席を立った。
ライアン王子が気まずそうにコーデリアを見た。
「君は誤解をしているからそれを解きたかったんだ。」
「誤解?」
「俺は君に好意的な事を言ったが、それは嘘じゃない。リボンだって面白いと思ったが馬鹿にはしてない。」
コーデリアは混乱した。何を言っているんだと。
「え。どういう事です?」
「君は、好意的な言葉が嘘だった事に謝罪は無いのか、と言ったろ?俺は君に嘘は言っていない。リボンが増えて面白かったのは確かだが、素直なんだな、と思っただけさ。」
「でも、私に呆れていたから、舞踏会の日には別れようと決めていたのでしょう?」
「君に呆れてだからじゃ無い。君は俺の容姿が好きだったろ?優しい王子である事と、容姿にしか興味を持たれていない、と思ったから別れる事にしたんだ。」
「……殿下の容姿には確かに惹かれていました。隣に居るだけでドキドキして…本人に言うのも変ですけど。でも、あの優しい王子は嘘だったんですよね。」
「嘘って。君だって俺と付き合っていた時と全然ちがうだろ。大人しくて慎ましくて殆ど喋らなかったよな?」
「あれも本当の私です!初恋ですよ?恥ずかしくてどうにも出来なかったんです。演技している殿下と一緒にしないで下さい。」
「王子には色々あるんだよ。演技しないと面倒な事が多いんだ。ッて喧嘩しに来た訳じゃない。」
ライアン王子が侍従を呼ぶと箱を持って来た。箱を開けると金と銀の美しい刺繍の入った白いリボンが入っていた。
「君への言葉には嘘は無かったんだ、信じて欲しい。…これは君に引きちぎられた可哀想なリボンに刺繍させてもらった。返すよ。」
手渡されたリボンにコーデリアは驚いて息を飲んだ。メイド達が作ってくれた大切なリボンなのに、テーブルに叩きつけた事を後悔していた。それが美しく刺繍されて戻っきた。素直に嬉しかった。
「これは…とても素敵…。ありがとうございます。」
ミストがスッと現れた。
「仲直り出来たかしら?」
ライアン王子が頷いてコーデリアを見る。
「仲直りでいいか?」
「付き合ってないのに、仲直りって違うと思います。」
コーデリアはリボンを持ったまま半目で答えた。
ライアン王子か吹き出した。
「あははは!そりゃそうか。じゃ友人として仲直りというのはどうだ?…是非、私の友人になって下さい。」
そう言うと急に佇まいを直し、優しい微笑みを向けた。
コーデリアはのけぞった。反射的に顔が赤くなったが、気を取り直した。
「その微笑みにはもう騙されません。でも、殿下と気軽に話せるのは楽しいかもしれません。宜しくお願いします。」
リボンの箱をきゅっと抱きしめた。




