↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/9

5.社交界デビュー当日

 今日はコーデリアの社交界デビューだ。兄はエルパーカー領に帰っているので、別邸を出る時はメイド達に見送られた。愛しのライアン王子がエスコートしてくれる予定でとても緊張していた。


コーデリアは随分早く舞踏会ホールに着いてしまい、王子の侍従が迎えに来てくれるまでかなり時間が余ってしまった。なので先に挨拶を済ませておこうと、侍女とライアン王子の控え室に向かった。控え室に着くとドアが少し開いており声が漏れてきた。


 ライアン王子とその侍従の声だ。

「殿下、コーデリア様とは今日でお別れするのですか?」


「その予定だ。それにしても、コーデリアの派手なドレスは随分と噂になってるな。」


「それは殿下がお褒めになったから、段々と派手になったのではないですか。」


「リボンが増えていたのは笑ったな。面白かった。今日の格好も派手なら貴族達がまた噂話をするだろう。」


 コーデリアは混乱した。ライアン王子はいつも優しく、こんな言い方は聞いた事が無かった。信じられない気持ちのまま立ちすくんだ。側についていた侍女エリーも青ざめている。


 ふと、侍従が少し開いてる扉に気付き、廊下にいる人影を見て素早く近づき扉を開けた。


「聞いていたのか。」

ライアン王子はばつが悪そうに言った。、そして侍従に指示しコーデリア達を部屋へ招き入れた。


 コーデリアが唖然としているとライアン王子が眉根にシワつくりため息をついた。美しい顔が台無しだ。そして椅子には肘をついて気だるそうに手に顔をのせている。

「いつもより態度が悪くて驚いたか?こっちが本当の俺だ。本当は舞踏会の後でと思ったが、バレたなら俺達の関係はもうこれで解消だな。」


 いつも優しい微笑みの姿勢正しい王子様と同一人物とは思えなかった。


「そっちも少しの間だが俺と付き合って王都を楽しめたからもういいだろ?」


 コーデリアはやっと状況を把握した。そして震えながら胸元の白いリボンを握りしめた。殿下に似合うと言われ嬉しくて着たドレスだ。しかもリボンは侍女達が仕立ててくれた。


「今日は社交界デビューだったな。俺の代わりにエスコートする奴を探すからホールで待ってると良い。あと…俺の性格は誰にも言うなよ。言えばそれなりの報復があると思え。」

ライアン王子は言うと立ち上がり襟を正した。そして侍従に2人を部屋から出すように指示した。


「お待ち下さい。」

キレたコーデリアが唸った。近付いた侍従を片手で制止し、今までとは別人のような気迫で王子を見た。


「殿下と付き合えてとても幸せでした。私にとって初めての恋でした。」

深々と頭を下げキッと顔を上げた。王子を見る瞳からは涙が溢れだしたが、表情は凛とし、言葉もしっかりと発した。


「しかし、私への好意的な言葉は嘘だった。その事に関して謝罪の気持ちは無いのですか。」


 ライアン王子は固まった。


 コーデリアは胸元の大きなリボンを引きちぎりテーブルに叩きつけた。そして、静かに、しかしハッキリと言った。


「貴方が可愛いと褒めてくれたリボンです。どれほど嬉しかった事か。でも、影では面白いと笑っていたのですね。」

悲しげな表情を一瞬見せたが、すぐに背を向けた。


 唖然とするライアン王子と侍従を残し、コーデリアは侍女を連れて部屋を出て行った。


*****


 コーデリアは舞踏会には出ずに帰りの馬車に乗った。涙が次から次へと溢れ止まらない。ライアン王子から言われた言葉と表情が頭の中から消えない。侍女のエリーも泣きながら寄り添う。


 別邸に着くとカイトが慌てた様子で出迎えた。

「随分と早かったですね!実は今、領の屋敷から早馬が来て旦那様が倒れたとの事です。」


 次の日、コーデリアは初恋の日々を送った王都を後にしエルパーカー領へ戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。