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4.美しいライアン王子


 コーデリアはライアン王子と初めての観劇に出かけた。モルガナが選んでくれたフリルのドレスは、リボンを加えて更に派手になっていた。ライアン王子にエスコートされるだけで注目されるのに、更にドレスも注目された。


「ライアン王子とあの方は誰かしら?随分派手ね。」

「クク、迫力がある女性だ。」

「あらあら、大きなリボンね。一昔前に見たわ。」

「どこの誰だ?」


 貴族達がヒソヒソと噂する。しかし、緊張しているコーデリアは気付かなかった。ライアン王子はいつもドレスを褒めてくれ、歩いているだけで気持ちが浮ついてた。

 

 初めての観劇は悲恋物だった。コーデリアは涙が止まらなかった。ライアン王子に感想を聞かれ、主人公の女性が倒れる原因になった優柔不断の男性を剣で切り捨てたい!と答えたかったが、緊張で「楽しかったです。」としか言えなかった。


 その後、貴族の間でコーデリアは噂になっていた。ライアン王子の今回の恋人は随分派手な女性だと、話のネタになっていた。音楽鑑賞に出かけた際は、「あの、噂の女性だ。」と興味深々で見られたが、ライアン王子と歩けば注目されるのは当然だろうと当人は気づかなかった。


 コーデリアは夢のような日々を送っていた。マナーと芸術の勉強にはげみ、ライアン王子の事を考えるだけで顔が赤くなった。時々、切ないため息をつく。そんな様子を護衛のカイトと侍女エリーは見守っていた。


別邸の廊下で護衛のカイトが腕を組んで首を傾げる。

「あの、じゃじゃ馬お嬢様がこうも変わるものか?」


侍女エリーがカイトを肘で小突く。

「じゃじゃ馬お嬢様とは失礼でしょ。天真爛漫なの。でも、あの勇ましい剣さばきや、果樹園で泥まみれで走り回っていた姿から想像出来なかったわ。」


カイトが肘で小突き返す。

「それ言い方、変えただけだろ。」


エリーは譲らない。

「じゃじゃ馬は駄目。」


二人は仲良く小突きあった。


*****


 コーデリアとライアン王子は美術館に来ていた。相変わらず周囲からは好奇の目で見られていた。ライアン王子と一緒に歩く事に少し慣れてきたが、まだ目が合うと照れてしまい、美しい立ち姿に目を奪われる。


 ライアン王子は美術館を歩きながらコーデリアに優しく話しかけた。

「美術作品がお好きなのですか?とても良く知ってるようですね。」


「もともとは詳しくありませんでした。殿下と美術館に来るので勉強したのです。今はとても興味があります。」


「貴方は正直な方ですね。とても好感が持てます。」


「ありがとうございます。」

コーデリアはすぐに照れてしまう自分が自分で無いようだった。


帰り際、ライアン王子が足を止めた。

「二人で色々な所へ行ってみましたが、どうですか、楽しめましたか?」


「とても楽しかったです。ライアン殿下は、見惚れてしまう程、お美しいですし。こんな素敵な方と美術鑑賞が出来るなんて幸せです。」

コーデリアは照れながら失礼のないように気をつけて話す。


「……そうですか。良かったです。」

少し声のトーンが落ちたが、コーデリアは気付かない。


「ライアン殿下、次の王宮舞踏会で私の社交界デビューが決まりました。……それで、その。」


少し考えてからライアン王子が微笑む。

「では、私にエスコートさせて下さい。」


「ありがとうございます。宜しくお願いします。」

コーデリアはライアン王子の微笑みが眩しくて少し後ろに下がった。


*****


 エルパーカー家の別邸、コーデリアの部屋では会議が始まった。コーデリアと侍女エリー、別邸で働く裁縫上手なメイドが集まった。


「私の社交界デビューでライアン殿下がエスコートして下さる事になりました。」

皆、パチパチと拍手し感無量である。


「それで、サイラス兄様が買って下さったドレスにリボンをつけたいのです。リボンは殿下が褒めて下さったのと、モルガナ嬢がリボンを付けると良いとアドバイスをくれました。」

コーデリアが舞踏会用のドレスを手に取って見せた。薄いピンクを基調としてフリルが多い。侍女とメイドが真剣に考える。


「ドレスの生地に合わせてリボンを作りましょう。形崩れしないように固くして。」

「リボンはフリルと同じ白はどうですか?大きくして‥‥数は少なくして。」

「コーデリア様は背が高いので、腰の後ろにリボンをつけたら長く垂らしたら良いのでは?」

「胸元には少し大きめなリボンを付けたいですね。」


これまでも自分達でリボンを付けてきた為、それぞれドレスのデザインを考えるようになっていて、センスも洗練されてきた。


 数日後、試行錯誤の末、薄いピンクの生地に白く小さなフリルが多く使われたドレスの胸元に、白いリボン、腰の後ろには大きな白いリボンを付け端を長く垂らし出来上がった。


「どうかしら?」

コーデリアがドレスを着てくるりと回った。


侍女達が手を叩いて褒める。

「とてもお似合いです!!」


「ありがとう。」

コーデリアは舞踏会がとても楽しみになった。



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