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二度目の人生、愛されない私は静かに消えたいのに  作者: もも子


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3/11

強引な庇護と、狂い始めた狂言

「誰も愛さず、誰からも愛されずに生きていきたい」


私の口からこぼれ落ちたその言葉は、アルフレッド殿下の心をひどく抉ったようだった。

彼を包んでいた冷徹な空気が砕け散り、その美しい顔が苦痛に歪む。


「……っ、そんなこと、俺が絶対に許さない!」


次の瞬間、ふわりと身体が宙に浮いた。

驚く間もなく、私はアルフレッド殿下のたくましい腕の中に抱き上げられていた。いわゆる『お姫様抱っこ』という体勢だ。


「で、殿下!? なにを……っ、降ろしてください! 私はこれからお茶会へ……」


「行かせるものか!」


怒鳴り声に近い、悲痛な叫びだった。

そのあまりに切羽詰まった声に、私は息を呑む。


「お前を、あの地獄のような家には二度と戻さない。ジュリアンにも、あの義母たちにも、指一本触れさせない……! お前は、俺が俺の城で保護する」


「保護、って……私はただの伯爵家の娘です。王太子殿下がそのようなことをされる理由が……」


「理由など、後からいくらでも作れる。……お前はただ、俺のそばにいればいい」


有無を言わさぬ強引さで、アルフレッド殿下は私を抱きかかえたまま屋敷の玄関に停められていた豪奢な王家の馬車へと向かって歩き出した。

周囲の侍女や護衛たちは、突然の事態と王太子の凄まじい覇気に圧倒され、誰一人として声を上げることも止めることもできなかった。


馬車に乗り込み、殿下のマントに包まれるようにして座らされても私の心は奇妙なほど冷え切っていた。


(どうして、こんなことに……)


窓の外へ遠ざかっていく伯爵邸を見つめながら、私はぼんやりと考える。

どうせすぐに、私がつまらなく無価値な女だと気づいて城から放り出されるのだろう。

一度目はジュリアンに捨てられ、二度目は王太子殿下に捨てられる。それだけのことだ。

だから、期待してはいけない。

心が動かなければ、捨てられた時の痛みも感じないのだから。


私は静かに目を閉じ、抵抗することを諦めた。



その頃、伯爵邸の庭園に設けられたガゼボでは、苛立たしげにテーブルを指先で叩く男の姿があった。

セレスティアの婚約者であり、ノルディック公爵家の次男、ジュリアンである。


「遅い……。あの陰気な女、俺を待たせるとはどういう神経をしているんだ」


「まあまあ、ジュリアン様。お姉様にも何かご事情があるのでしょう。……ふふっ、きっとジュリアン様にお会いするのが怖くて、お部屋で泣いているのではありませんか?」


ジュリアンの腕にすり寄りながら、甘ったるい声で笑うのはセレスティアの異母妹、ミレーヌだ。

ジュリアンもミレーヌの腰を抱き寄せ、冷酷な笑みを浮かべる。


「違いない。だが、月に一度のこのお茶会は、あの女を精神的に追い詰めるための大事な儀式だからな。さっさと病んで、静かに死んでくれれば、俺たちは晴れて……」


その時、青ざめた顔の執事が慌てふためいた様子でガゼボに駆け込んできた。


「も、申し訳ございません、ジュリアン様! お茶会は……本日は、中止となりました……っ!」


「なんだと? セレスティアの奴、ついに俺との茶会をすっぽかす気になったのか? 随分と偉くなったものだな。公爵家への侮辱だと、伯爵に……」


「ち、違います! セレスティア様は……たった今、アルフレッド王太子殿下によって、王城へ連れ去られました!」


「…………は?」


ジュリアンの手が止まり、ミレーヌの笑みが凍りついた。


「王城へ? 殿下が? あの、誰の目にもとまらないような地味な女をか!?」


「は、はい……! 殿下はひどく焦ったご様子で、自らセレスティア様を抱きかかえ『城で保護する』と……!」


ジュリアンの背筋に、嫌な汗が伝った。

王太子アルフレッドといえば、次期国王として絶大な権力を持つだけでなく冷徹で一切の隙がないことで知られている。

その王太子が、なぜ突然セレスティアのような女に執着を見せたのか。


(……待て。もし、あの女が王太子の庇護下に入ってしまったら)


ジュリアンと義母たちが進めていた、「セレスティアを孤立させ、暗殺して伯爵家を乗っ取る」という完璧な計画が、根底から崩れ去ってしまう。

城の奥深くに匿われてしまえば、毒を盛ることも精神的に追い詰めることもできない。


「くそっ……! なぜだ、なぜあの女に殿下が……!?」


思い通りに動いていたはずの盤面が、突如としてひっくり返された焦燥感。

ジュリアンはテーブルの上のティーカップを苛立ち紛れに薙ぎ払い、ガチャンと甲高い破砕音が庭園に響き渡った。

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