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066 護衛依頼27

  

 盗賊たちは、崩壊のセトギワにあるとも言える。


 恐ろしい邪神の使徒みたいなモノからホウホウのテイで逃げて来たかと思えば、軍務卿ベナッジョ率いる討伐隊に前方をふさがれる。その結果、彼らの心情はといえば、混乱と興奮がゴチャマゼのごっただ。

 それでもようやく20人近く集まりかけていた彼らだが、やはりというか兵士たちほど規律が取れているわけではない。

 近づいてくる討伐対応を恐れて逃げ出そうとするものや、実際に逃げ出す者が続出する。


 1人は顔を青くしながら周囲をキョロキョロとうかがい始め、後ろにいる男から「テメエ逃げんじゃねえぞ!!」と言われながらエリ首をつかまれ、ちぎれるほどさぶられてあきらめる。揺さぶった方も恐怖と戦っているのだ。他者の逃走は許さない。


 1人は逃げ出そうとする仲間を見て捕まえようとし、ふと冷静になって考えて自分も逃げ出すことにする。


 1人は逃げ出したはいいが6歩と進まないうちに、怒った仲間から手オノを背中に投げつけられて絶命する。



そんな光景を見ながら、ホホに傷のある男ジンジャは


 っとに、大将がいてくれりゃあよお!


とツクヅク思いながらイチイチ声を張り上げる。


「逃げんじゃねえぞボケヤロウ! 逃げたら死ぬぞ!!」


「逃げんじゃねえ! 逃げるヤツは殺すぞ!!」


「いいか? お前らよく聞け! 生きてまた女を抱きたかったら! まとまってここをしのぐしかねーんだ! わかったか!」


1部の盗賊たちも彼に続いて声を上げる。


「俺が逃げてねーのに、お前だけ逃げんじゃねーぞ!」


「敵をぶっ殺す!! ヤるぞテメエら!!」


「生きて! 生きのびてまた女を抱いてやる!」



 ジンジャは別に、戦術に明るいわけではない。彼の戦いに関する教科書といえば、邪神との戦いに参戦した、同じ農村のジイさん達の話や辺境に侵入してくる蛮族の討伐に従軍した父親世代の男たちによる多分に脚色された話を聞いたモノでしかない。

 そして彼は、目を輝かせながら聞いたそんな話の登場人物の1人である軍務卿ベナッジョが、敵方を指揮しているとは知らない。


 そんな彼だが、今まさに目の前で敵の軍勢が真ん中を割って2つに分かれたこの状況が、絶好の機会であることを理解する。昔何度もせがんで聞かせてもらった話の1つ、“中央突破”という戦術だ。


 このチャンスを逃しはしない!


 そう胸に熱く思いながら、ホホに傷のある男は叫ぶ。


「突撃だぁ!! あぁ? いいから突撃しろっ! あの敵の割れているところに突撃すれ勝てるんだよ! さっさといけぇ!!!」


尻を叩かれた羊がしぶしぶ移動するといった感じで、この盗賊たちも動き出す。そんな彼らを見ながら、彼は思う。


 大将、アンタがいてくれりゃあ……



 盗賊たちがしぶしぶ前進するその時、その先、敵の間隙かんげきに違和感が現れる。


 はたして、それは少女だ。


 小さな彼女にとって、大きすぎる杖を持った少女だ。


 そのあどけない少女が杖を掲げるのを見たとき、ジンジャは直感的に思う。


 イヤな予感がする


そして昔に聞いたイクサ話の、負けていったヤツらが自分に重なる……



 兵士たちの間に立つ少女の、掲げた杖が光りだす。シブシブ進んでいた盗賊たちもその異様さに気がついて歩みが尻スボみになる。


 これじゃあまるで、武器や鎧を装備した大人の兵士たちは、あの少女が何かするのを待っているようじゃないか……



 そして実際に、その通りであった。




 大きすぎる杖を掲げた少女の後ろから、軍務卿が


「サジュ殿、ドデカイのを1発頼む」


と言うと宮廷魔術師の弟子サジュは


「ん!」


と返事をしながら、重そうに杖を持ち上げる。その動作は、見た目が木製の杖にしては大げさだ。

 そしての腰の高さに掲げられた杖の先端に穴があき、その内部で赤色せきしょくというよりは白に近い色で輝き出す。ゴツゴツした木の表面のアチコチから、熱気を帯びた空気が高い音をたてながら吹き出し始める。


 薄暗くなっていく世界で、その少女は光に包まれている。


 そんな輝きの中でサジュが杖を支える手に、ギュッといっそう力を込める。すると白い輝きは、青白い輝きに変化していき……


 そして……


杖の先端の青白く輝く空洞から、青白く輝く何かが飛び出していく。

 それとともに、サジュは4~5歩よろけて後退する。


 飛び出した小さな激しい輝きは、正面にいる盗賊たちに向かってまっすぐ飛んでいく。


 その速度は速いことは速いが、目で追えないということでもない。しかし、正面に迫ってくるそれをとっさによけるのは難しい。


 光は盗賊たちの先頭を歩いていた2~3人の男たちの胴体や盾代わりのナベなどに穴を開けながら進み、盗賊たちの真ん中よりやや前方に着地し消滅する。


 否、地面に穴があき、その中で輝いている。


 と、その瞬間、穴のある一帯が光に包まれる。直後、周囲に衝撃がまき散らされ爆心点から5歩圏内の盗賊たちは絶命し、遅れて轟音ごうおんと爆風が全ての方角に駆け抜けていく。


 さらに遅れて、土煙が辺り一帯を閉ざていく。






【バグ】

 ラグと一緒にバカデカヘビと戦っている。


 一時はどうなるかと思ったが、なんとか善戦できている。ヘビが1人をカミつこうとしたならば、もう1人が反対側から剣を叩き込んで牽制けんせいする。とっさにできた戦い方だが、このヘビには効いている。結局デカヘビは攻撃しきることができずに、傷を増やしていくだけだ。


 このままならひょっとして勝てるかもしれない。


 そんな希望を感じ始めたとき、後ろの方からモノスゴイ音がひびいてくる。


 近くではない……


 アイツらが逃げていった丘の向こうか?


 カミナリみたいなデッカイ音だ。


 もちろん今は“夜”ではあるものの、雲ってはいなく晴れている。


そんなことに俺が頭を巡らせながら、思わずそちらの方にチラッと向いてしまう。


 それが間違いだった……


視線を戻そうとしたとき、俺の両足に衝撃が走り、視界が傾く。倒れながら状況を把握しようとヘビの方に視線を向けると、アイツはシッポを降りぬいた体勢だ。


 やっちまった!


 すぐに立ち上がろうと手をつくが、足に力が入らず立ち上がれない。


 くそっ!


 打たれた両足がジンジンと痛む。感覚もない。


「バグ!」


 俺を呼ぶ声に顔を上げれば、迫ってくる蛇の顔……


……と、その向こうに斬りかかるラグの姿が……


「やめろラグ!」


力いっぱい切りつけられた大きなヘビは、体をくねらせながらラグの方を向く。


 俺はまだ立てない……


 ヘビはラグにキバをむく


 1度目のカミつきを横に跳んでかわすラグ


 俺はようやく、感覚のない足で地面に立つことができる……


 2度目のカミつき


 ラグは体勢を立て直すことができていなかったが、地面を転がることでなんとかそれをかわす……


 俺は動かない足で前に進む……


 はって進んだ方が速いんじゃないかってくらい進まない……そんな足をひっぱたく


 うごけ! 俺のあし!



 そして


 俺がヘビにもラグにも近づけていないまま……


 ラグがまだ、転がった状態から体勢を立て直せていないまま……


 デカヘビの3度目の噛みつきが、ラグに迫る!



 俺は倒れるように手を伸ばす……


 もちろん届かない……


 そして間にあわない……


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