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060 護衛依頼21

 

【?】


 いとおしい子が待っているはずのスミカに近づくほど、フアンが増してくる


最近、スミカの近くにあった、あの“長細く不気味にうモノ”のニオイやアトがあったからだ


ウツくしく、ヤスラげる場所が、ケガされている


そしてエモノを獲るのに、手間取ってしまった



ドンドン移り変わっていくケシキ


岩からアセリが忍び出てきて


草影から不安がノゾいてくる




  ……そして


  ……そして


  そのアトを見つけたとき


  ワレは永遠のコワバリを覚え


  世界は色をウシなう



 それはあの“長細くイヤしく地を這うモノ”のって行ったアト……


そのアトは……

誰も立ち入ることが許されないはずの

スミカへと続いている……



 力の抜けたアゴから、ドサリとエモノが地面に落ちる


 ワレは、走り出していた


 スベテを、かなぐり捨てて走り出していた


Ww W Wow Wowl Wowl Wwooooooooowl!!(ウゥ ウ ウォッ ウォッ ウオオオオォォォォ!!)


スミカに近づくなり、あの愛おしい存在の影を探す


無数にある木の根を1つ1つのぞき込む


 イナい!


 イナいっ!


 あの子がイナいいぃっ!



スミカはほとんど、荒れたアトもない


きっとあの子は、アガらうこともまだ知らなかったんだ


スミカからは、“長細くまがまがしいモノ”がはったアトが外に向かっている



 走りだしていた


 このアトの先に、我が子を食ったヤツがいる


 このさきに!


 絶対につかまえて、引き裂いてやる


 そうすればまだ……


 まにあうはず……








【】

 緑が心もとなく点在する、果てしなく続く荒野の果て――地平線から“夜”が解き放たれ、昇り始めている。もうすぐすべてのモノは“夜”がおおいつくすことだろう。

 果てなき荒野も、その先にある山々も、しなだれた草々も。そしていずれは天頂に輝く“昼”さえも。この世界にあるすべてのモノが、等しく、一様いちように、“夜”に染められていくのだ。


 そんな荒野をそんな時間、進んでいく1団がある。

 彼らは集団であるにもかかわらず、大声で話す者はなく、黙々と進んでいく。


 それは、軍務卿ベナッジョが率いる盗賊討伐隊だ。彼らは、捕まえた盗賊の1人から仲間の居場所を聞き出し、被害にあった村を後にして、盗賊たちのいる場所へと向かっているのである。




 いよいよ実際の戦いを目前にヒカえた彼らの様子は、貝ガラの内側が様々な色に光るように、人それぞれだ。興奮して意気込む者もいれば、おびえて青ざめている者もいる。中にはあまりの恐ろしさに、周りの様子を見て逃げ出そうかと迷っている者も。そして特に何も考えない者もいる。



 意気込む者たちの代表としては、ゴドリー隊や一部のハダリー隊だ。誰かのために、または自分の趣向として、など理由は様々だが、彼らはこの討伐に前向きな人たちだ。

 特にゴドリー隊のメンバーは隊長ゴドリーを始め、血気盛んな人物が多く、これから行われるであろう戦闘を待ちきれないと言わんばかりにグイグイ進んで行く。倒れた倒木も、踏みつけながら進んでいく。


 一方のハダリー隊はといえば、それぞれがユニークだ。

 ここで確かな成果をあげたいと思っている隊長ハダリーは、自信たっぷりに倒木を乗り越えていく。

 優しいベーヤはこれから倒す盗賊たちのことを思ってか、自信にあふれているとは言えないが、それでもしっかりした足取りで倒木を乗り越えていく。

 ブーバーはこれからは命の取り合いをするというのに、いたって気楽そうである。昨晩飲んだハンニニンガ領都のまずい酒のモンクを口にしながら、ヒョイッと軽く倒木を乗り越えて行く。

 マレは緊張しているというわけではなかったが、彼は口数の少ない男だ。ブーバーの話を聞きながら、着実に倒木をまたぐ。

 おっとりとしていて大柄なボゴタは、これからの戦闘に興奮しているわけでもなく、かといっておびえている風でもなく、まるでそうすることが日々の日課だという感じで、ゆったりとそれをまたぐ。


 それに続くのはハダリー隊の兵士ではない、ガナリという男だ。どうゆう人物かといえば、兵士たちに捕まった盗賊の見張りだ。

 彼は縄で両腕を体にくっつけてグルグル巻きに縛られている。彼はこの行軍に乗り気の部類ではなく、おびえているグループの方の分類だ。

 彼はとてもユウウツな表情で、下を向きながら歩いている。彼をしばる縄の端は、大柄で力のあるボゴタが手に巻きつけて握っていて、とても外れそうにない。

 彼は自主的に、というよりはそうさせられて、やっとのことでその倒木を乗り越える。



 その後に続くのは、やっぱりハダリー隊のメンバーだ。

 小柄な少女がねたかと思うんと、倒木を踏みつけて飛翔し、右回りに1回転半して軽やかに着地する。遅れてサンゴ色のフワリとしたクセ毛が、フワリとバウンドする。鳥の羽のように音もなく着地したものの、進行方向から1回転半すると逆方向だ。

 それを見て、少年が言う。


「そっちは反対方向だぞ、バカ女……」


「……わ、わかってるよ! ちょっと勢いがついちゃっただけだから……」


そう言い訳しながら進む少女の後を、“夜”色の髪の少年が確かな足取りで倒木を踏みつけて、乗り越える。

が、丸い倒木が一瞬ぐらついてカンパは焦ってバランスをとる。うまく着地した彼は、誰も気づいていないことを確認してそそくさと歩いていく。




 ハダリー隊の後に続くのは、この討伐隊の最高責任者である軍務卿ベナッジョを始めとして、神殿教ウガ王国支部の神官ヴェイザ、その後に静かについていく宮廷魔術師ヴィクマの弟子のサジュ、エユィドナ共和国からきた奴隷商人ヴォネラムとその護衛のジャンタープといった、重要メンバーとその護衛だ。


 軍務卿は始め、これらの人たちは領主軍の半分と一緒に村に残ってもらうつもりだった。しかし神殿教神官ヴェイザは「また救いを必要とする人が、いるかもしれませんので」といって、奴隷商人ヴォネラムは「商人の宿敵である盗賊の最後は何が何でも見させていただきたい!」といってそれぞれ引かないので、軍務卿は仕方なくこれらを良しとしたのだった。サジュについては、単純に強力な戦力となることから連れて行くつもりだった。




 彼らの後ろに続く、この集団の最後尾に位置するグループは、これから行われるであろう戦闘を恐れる者たちだ。すなわち、領主軍である。

 戦いに不慣れなものが多い彼らは、目の前に迫った不安に押し黙っているか、その不安を少しでも減らそうと口からヒソヒソと不安あふれ出させていた。もっともそれで不安が和らぐことはなく、むしろ1歩進むごとにその重圧が心にのしかかってきていて、1歩進むごとに頭を低く垂らしている。


 この集団の中にいるレクセイも、多くを語らずただ歩いていく。



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