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019 Bird"s Attack 1


 コスキンが昔をナツかしんでいる間、ナルガ王子はアイネと2言3言、話しかけるがすぐに中断されることになる。

 カンパが戻ってきて、報告したからだ。カンパはメンドクサそうな声で


「失礼します」


と言う。アイネが多少ナジみのある顔にいくらかの安堵を感じる横で、王子が


「なんだ」


と言うとカンパは、


「今、管理官からある村に猛獣が現れたので、ハダリー隊が出動するよう命令されました。ですので……その……」


と言いよどむと、昔から戻ってきたコスキンは


「なんだ? はっきり言わないと、わからんぞっ」


うながす。カンパはなんで自分が、といった不満をわずかににじませながら、


「ハダリー隊長から、そこのおん……アイネを本当に連れていくのか確認するように、と……」


と言う。

 コスキンを見るナルガ王子の顔は、どこか心配そうだ。アイネはそんな王子の様子につられて、やはりコスキンを見る。コスキンは、


「我らが王から、方針の変更は聞いていない。よって……」


と言ってアイネを見ながら


「このアイネもハダリー隊に同行し、兵士としての任務をつとめるべきである」


と現状における結論を明らかにする。コスキンは大きな麻袋をアイネの方に掲げ、


「お前は今日から兵士になる。そう思ってこいつを持ってきた」


コスキンは水袋を麻袋から取り出し、アイネに手渡す。それから片手剣・盾と両手剣を取り出し、


「どちらがいい?」


と聞く。アイネは近づいて両手剣を受け取り、その悪くない作り、むしろ良くできた作りを眺める。


「こっちがいい」


アイネはそう言ってホホエむ。






「今回の猛獣は、鳥だってよ」


 もろもろの準備を急いで済ませたハダリー隊は、アイネを加えて王都を出て、目的の村に向かう。

 その途上とじょう、事情を良く知らないアイネにカンパが説明している。

 アイネは歩きながらカンパを見て、


「とり?」


と緊張感のない疑問を、遠慮なく撒き散らす。辺りは川から離れた場所で、葦の草原がなくなり、草や木が思い出したようにしげる乾いた荒野だ。


「まぁ、鳥っていえば鳥だけどよ。オオニククイドリっていってバカでかいヤツだ」


「でも鳥でしょ! つまり鳥肉! 捕まえて食べちゃえばいいじゃん」


「ちっげ~~よ! まあ、結果的にはそうなるにしてもよ、そう簡単にはいかねえんだよ! 子供なら丸呑みにされるくらいデカイんだ。下手したらお前が食われて、鳥のウンコになっちまうくらいにヤバいヤツなんだよ」


「うへ~~。食べるのはいいけど、食べられるのはやだな……。カンパはよくそんなのと戦っているね」


「オメーもこれから戦うんだよ! 食べられなくても、クチバシでついばまれたり、爪で引っかかれたり、とにかくヤバいヤツだ。とにかく気をつけろよっ」


「……それはわかったけど、兵士ってそんな危ない仕事ばっかなの?」


「危なくない仕事の兵士ってなんなんだよ?」


「それもそうか」


とアイネは言って、カラカラ笑う。

 カンパがその笑い声を聞いていると、真面目に説明している自分がバカらしくなる気がしてくる。そう思っていると、


「すっかり仲良しだな」


と隊列の前から声が投げられる。カンパはちょっと怒った感じで


「仲良しなんかじゃねぇよ、ブーバー」


と、目つきが悪く頬のこけた男に返す。ブーバーは


「仲良くしてるじゃねえか。なあ、マレ?」


と、後ろのやり取りにまったく興味を見せないマレという男に話を振る。マレは振り向きもせずに、


「……ガキのことなんてほっとけ……」


「まあ、そうなんだけどよ。こっちが真面目に仕事してんのに、やる気が削がれるだろう。なあ、ボゴタ?」


ブーバーは今度はボゴタという、でかい斧を背中にカツいだ体のでかい男に話を振る。ボゴタは歩きながらゆっくりと振り返り


「ブーバーが真面目なことって、ほとんどないよ」


と言うと、更に前を歩いていた副隊長のベーヤが


「はっはっは、痛いとこ突かれたなブーバー」


と言えば何人かがつられて笑う。アイネも楽しげなフンイキにホホの筋肉を緩める。

 その時、先頭を歩いていたハダリー隊長が皆に言う。


「村が見えてきたぞ!」


彼らが進む荒野の道の先、古びた木材で囲まれ門を閉ざした村がある。

 それは荒野の色に似ていて、サビれたサビしさがタダような村だ。




 村に近づくと、村を囲う城壁の様子が見えてくる。

 城塞と言っても、古びた丸太や土盛りや乾燥レンガという継ぎはぎでできた壁を城壁と呼べるなら、という条件つきの話ではある。

 そしてその規模も、昨日ハダリーたちが奴隷商人を迎えに行った村よりも大分こぢんまりとしている。


 ハダリーたちが門前まで来ると、門のカタワらの、素材も高さもちぐはぐな壁の上から顔を出していた男が、


「よく来てくれた! 待ちくたびれたぞ!」


とやかましく言ってくる。それはちぐはぐの壁の上から風に乗って降りかかってくる、砂ボコリのようでもある。

 そして門の男は


「今開ける。とにかく中に入ってくれ」


と何かから降りて見えなくなった、壁の向こう側から言ってくる。

 しばらくして扉は開き、


「ささっ、入っとくれ! いつ、あいつが来るかわからんからなっ」


と開いた扉の中から男がまくし立てる。



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