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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第1章 

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ダエワ


「ああ、退屈だ。」


ジャクラは退屈していた。


「最近は特につまらない。」


「作業だよな、これ。アニマの残党狩りなんて。」


「ボタン一つでポチポチってさぁ……ベルトコンベアの作業員かよ。」


陰鬱に沈んでいると、後ろからほかのダウワ達の声が聞こえてくる。


肛門爆竹とか言っとく?


お前、おもんな。もうそれ、旬が過ぎたネタだから。


じゃあおめぇはどんなのがいいんだよ!


虫攻め!穴蔵!ペロリンチョ!


ぎゃははは、と下品な笑い声が聞こえてくる。


それ! おもっくそノーマルだから!


ネタぎれ乙!


などと、益体もないことを言っている。


ジャクラは分かっていた。


こいつらもまた、退屈してるのだ。


遊びに耽る。


遊びに本気になろうとするのは。


それだけ、飽いているから。


はぁ、つまんねぇ奴ら。


ダエワにも個性はある。


好む悪逆の方向性が異なる。


ジャクラはそのなかでも異質な存在だった。


「人生ってのぁ、飯食ってクソして寝るだけじゃ、生きてるとは言わねんだよ。」


「それじゃ機械と変わんねぇ。」


ハリをなくした人生は惰性だ。


己の本道を見失い、迷走するものは真に生きてはいない。


人生のハリ。 


生きがい。  


渇望。


言い方なんぞなんでもいい。


ようは、心が満たされない飢えがある。


どれだけ腹が満たされていようが飽くなく己が欲する欲の形。



ジャグラは己を知っている。


己が求める欲望はすなわち。


強者をおちょくりたい。


殺すだけでは満たされない。


攫ったら追いかけてきてほしい。


盗んだらおいかけてきてほしい。


壊したら追いかけてきてほしい。


始まりはなんだっていい。


行為の中身はあとから付いてくる。


「怒れよ。」


「憎めよ。」


「その感情で、ずっと俺を見てろ。」


俺に心を釘付けにしたい。


俺の心を釘付けにしてほしい。


トドのつまり。


無視されたくないのだ。


俺に対する怒りや憎悪で常に心を満たしていてほしい。


なのに。


もうアニマはダメだ。


神は死に、彼らは力をなくした。


壊れたおもちゃはそれだけで、罪だ。


もう俺を楽しませることはできない。


おそらく永遠に。


この退屈が無限に続くと思うと死にたくなる。


昔は良かった。 


おちょくれる相手がたくさんいて。


たくさんのやつが俺を無視しなかった。


だが今はもう。今は誰をみても、同じ顔に見える。


昔は良かった。


神がまだ生きてる時代はアニマ達も精強で、策謀や罠、拷問も、簒奪も、失敗すれば死にちょっけつするというスリルがあった。


強いやつらとのやり取りなら、例え死んでも悔いはない。


そういう意味じゃ、死に損なったとも言える。


命の掛け合いがあった 賭け甲斐があった。


今はもう、見る影もない。


ジャクラは自然体で被害者ぶる。


ジャクラに自責の念などない。 


自分を退屈させる原因は常に外にある。



俺は俺の性を理解している。


俺は他者でしか自慰行為を行えない。 


一人じゃ気持ちよくなれねぇ。


他人がいねぇと、退屈すら感じられねぇんだ。


「どっかにいねぇかなぁ……」


「飽きねぇおもちゃ」


ジャクラはボソリと呟く。そんなありもしないものを妄想するくらい、彼は飽いていた。


◇  


ジャグラの部下であるペイルは弱いものいじめが好きだ


ダエワの生産区画(通称、ファクトリー)。


出荷用、繁殖用、肥料用、改造用、エトセトラ、エトセトラ…


「この備蓄数える時間が一番好きっすわ〜。」


家畜の恐怖する顔を見渡しながら笑みがこぼれる。


見てくださいよこの顔 。


“刺されませんように”って祈ってる顔だ。


「で、刺した瞬間のあの絶望……ウケるんすよねぇ。」


うちのボスは強いやつにばかりちょっかいかける。


「うちのボス、ほんと頭おかしいっすわ。」


ペイルはジャクラとは異なり、典型的なダエワだった。他者の痛めつけること、苦しめることで快楽を感じる生態。


「強いやついじめるとか意味わかんないっしょ?」


「抵抗されるのが好きって……マゾっすか?」


うちのボス、変人で変態だからなぁ。


自分とボスとでは嗜好が異なる。


「抵抗ってスパイスにはなるけど主食じゃないんすよ。」


小さな子供の抵抗なんかは嗜虐心をそそるを


だが、強いやつの抵抗って、可愛くなくね?


子供が嫌がって暴れる時に腕を捻り上げただけで泣きじゃくるの あれ、たまんねぇんだよなぁ。


そう考えると…。


おいらも抵抗されるの、好きっすね…。


「子供か大人かって言われたら……子供っすかねぇ?」


あっ! でもでもっ! 女も捨てがたい!


肉なんか柔らかくて、握り潰すのも、引きちぎるのも、飽きないしなぁ。


そのときの反応を思い出すだけで、たまんないねぇ。


どっちじゃろ?


ポクポクと益体のないことに思考を割く。


そして閃いた!


「子供で女なら、役満じゃね?」


うっしゃこれキタコレ!


「世紀の大発見っす! あとでボスに自慢しよ〜。」


「やだやだやだ!」


そう駄々をこねるこねる小さな少女。


「やめて!やめてぇ!」


「ああ〜いいっすねぇ、その顔。」


「ほらほら、もうちょっと泣いてみ?」


子どもはいい! 


とにかく弱くてすぐ泣く。


少しひねるだけで顔を素直にゆがませる。


何をしても楽しくなるおもちゃ。


飽きることはないッス。


「やめなさい!」


強気な女が前に出る。


アニマの女だった。


「私が代わりに行くわ!」


だから…


「お、いいんすか?」


「じゃあ繁殖用、一匹追加で〜。」


!!!


「私がいるんだから、その娘はいいでしょ!


まだ、こんなに小さな娘 すぐに死んじゃうわ!」


ああ、いいな、この顔も。


アニマって単体でイジメてもあんま面白くないんすよね。


食用にもならないし。


痛めつければ痛めつけるほどに、強い眼で睨み返してきて、怯えることがないを…


どんな拷問だろうと心をへし折るのは難しい。


だからノルマの中に混ぜるに限る。


ノルマは敗北者であるアニマを毛嫌いしてるから孤立する。


アニマは負い目があるし、なにより、自分よりも弱いものをみると見捨てられない。


アニマだけだったら、自害して終わりな場面でも、ほかの弱いやつらを守るために全力で長く生きようとしてくれる。


そのおかげで、じっくりと遊べる。


ペッと唾を吐かれた。

ベロリとそれを長い舌で舐め取り、


アニマの女をひっぱたく


「オタクらの、そういうとこが嫌いなんすよ。」


「“自分らが正しい人間です〜”みたいな顔。」


「人間ってのは欲望の生き物っす。」


おいら達みたいに、他人にかかずらうことなく、欲望のままに生きる存在こそ、


真の人なんすよ。


「滑稽ね。」


あ?


「本当の人間なんて、もうとっくに滅んでる。」


「私達は模造品よ。 でもね、生きてるの! すでにここに存在してる!」


だから…


「本当の人なんて、追い求めること自体が無意味よ。」 


私達は私達以外にはなり得ない。


「仮に本当の人がまだいたとしてもあんたは人になりたいなんて思わない。」


「なのに本当の人なんてものに執着する。」


「矛盾よ。」


「あんたは欲望のままに生きてるくせに、そのうえ他人にまで、自分を肯定してほしいの?」


「みっともないわ。」


「ふ〜ん、言うじゃん。


いいね、遊びがいあるわ、あんた。」


ムカつきました。 


心の底から。


「ホントのこと言ったら傷つくってわかんないのかなぁ?」


君等は人の心の痛みがわかんないんだ。


「そんなんだから嫌われるんだよ!」


おいらの心はガラスのハートなんだ。


もっと丁寧に!


そして、ていちょーにあつかえっての!


「で……こいつの身内どれ?」


アニマの女の瞳にほんの一瞬だけ、揺れがあった。


笑うダエワ。


家畜組を見渡す。 


一人ひとり指をさしていく。


こいつだな。


「彼は関係ない!」


そう言うが、それは逆効果だった。


ああ、今夜は良い夢が見れそうっす。


妄想に耽ろうとした瞬間、


空中要塞が陥落したと連絡が入る。


「……あ?」


「空中要塞、陥落?」


マジかぁ〜。


そう言いながら、笑みが浮かんでいる。


「へぇ……あのブチャイクちゃん、やられたんすねぇ。」


「夏が行方不明?」


「へぇ……いいじゃないっすか。」


「いい暇潰しになりそっすね。」


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― 新着の感想 ―
ダエワの個性がうかがい知れて、長い年月ゆえの歪みもまたよく伝わってきました。究極、生き物は確かに生まれて、食って、最後は死ぬだけで突き詰めるとそれしかしていないのかもしれませんね。後は食うための効率追…
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