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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第三章

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リスタート


第四永久機関、起動

消費された存在エネルギーを再生致します

1,2… 10,…40%回復

意識の再生が完了します


「がはっ ごほっ ぶほっ」


大量に咳き込む

手を何もない地面について、空っぽの胃袋から胃液を吐くようにえずく


「なん、とか、うまく、いった…? は、ははっ マジで、今回ばかりは、奇跡、だな…」


低い確率だった 天文学的な数値だったかもしれない 

だが


「なんとか、なるもんだ… ぶふっ」


きっついな これは 完全回復には、まだ遠い


存在爆弾の"強度"が強すぎる!


完全回復には年単位の、時間が、かかる、だろう、な…


冬真、は…


「あれ? ここ、は? え?」


「ぷっ よかった さすがに冬真だけ還って来れないってのは悪いからな」


「ふ、ゆ? え?ここは どこ?」


「観測不可能領域 つまり 無の世界 その一部だ」


「え? え、えぇ〜! 僕ら、ロスっちゃったの!」


「ああ、俺が存在爆弾を使ったから」


「は?」


一瞬思考がフリーズして、意味を咀嚼すると


「あ、お、え、ぐ、な! あああああ〜!!!」

突然頭をかきむしる冬真


「ああ、冬ってそういうとこあるよね! 一人で決めて 勝手に突っ走っちゃうところ! 事後報告とか、謝っても許されないよ!」


「別に謝ってない」


低い確率とは言ったけど、まぁ、やれるだろうなって気がしたし 


何より俺も冬真も無理矢理、切り離された

あの状態では長くは持たない


一度事象ごと吹き飛ばして再構築した方が生存確率は上がった 何も全くの考えなしでやっだけじゃない


「きぃ〜!」


反省すらしない、だと! 僕は吠える


「でも、生きててよかったよ」

なにより、ちゃんと生きて返してやる約束をした 

死なれては困る


「うっ」 


なんか 腑に落ちないわさ 


そんなふうに言われると僕が、悪いみたいじゃんか


「ぷっ は、ははっ あはははっ」


僕は笑った 冬も笑う


「ごめん」


ほんとはわかってた 冬は間違ったこと言ってないって でも、素直に謝れなかった


「…俺もごめんな」


僕は驚いた 

冬は自分が間違えていないときに謝るような人ではない 


謝罪の価値を 大事にする人だ


「言った内容に対してじゃない お前の前で言うべきことじゃなかった お前やナギの気持ちを、汲んでやれてなかった だから、ごめん」


「冬…」


僕は少しだけ、安堵した 


冬には間違えてないのに、謝ってほしくなかったから


そしてそんな自分がいるのに気づいたから


でも、それと同じくらい嬉しくもあった 


冬は僕とちゃんと仲直りをしようとしてくれていたのだと ちゃんと考えてくれたんだって


理由を探してくれていたことが、とても、嬉しかったんだ


ポリポリと僕は頬を書いて、話を変える



「てか! そうだ! それならナギは? マナツは? ゴルジラフは? どうなったの!」


「真夏、だと? お前、その名前どこで聞いたんだ?」


「え? いや、それは え? 知り合い?」


「…少し、お互いの情報を整理しないとだな」

僕たちはお互い離れていた時の情報を整理する


「うん、結局よくわからんな 重要な情報を握ってそうな奴らは軒並み退場してる 確かめようがない だが」


真冬と真夏 

ノインツェンはその名を地球の傷跡だと言った 

その意味を俺達はまだ知らなかった…


「地球…僕のいた星の名だ 地球で一体何があったんだよ…」


頭を抱える冬真


だが、疑問は尽きない


「地球…か それはとっくに滅びた星のはずだけど…」



滅びの原因は俺のような下層市民には正確には伝えられていない 


都市の中心にいる人物ならあるいは何か知ってるかもしれいないが…


「滅びたって… 僕はつい最近まで普通に暮らしてたんだよ? タイムスリップでもしたってこと?」


「俺にはわからないよ ノインツェンは君のことを知っているようだった 君はノインツェンを知らないのか?」


「聞いたこともない名前だよぉ 科学者つながりだとしても、母さんの知り合いはそこまで知らないんだ 仕事場の同僚とかの名前なんて普通家族にまで話さないし」


「宙、か…」

結局そこに集約する


「冬はさ、宇宙船とか作れないの? あっ! ほら!例えば空想世界で宇宙船を作って、それを…外に…もち、だす、とか… やっぱ、だめかな…」


どんどん勢いをなくす冬真 途中で自信をなくすなよ


「可能か不可能かで言えば可能だ」


「え?マジ?できんの?」


「ただし」


「あ〜あ はいはい 結局だめなパターンね…」


静かにきけないのか… こいつは


「空想世界の技術ってのを現実に持ってくるのはかなり難しい 現実世界と空想世界では物理法則が違う それを無理にやるのなら大きく二種類、方法がある」


「一つは正攻法、膨大な存在エネルギーで無理矢理、現実に非現実を持ってくる この場合、エネルギーを常時消費するので宇宙航行という長時間移動には耐えられないだろう もう一つは界顕体の助力がいる」


宇宙船ってことを考えれば船材や設計に関しては問題ないと思ってる 問題なのはエネルギー 地球からこの惑星までどんなエネルギーを用いてきたのか、公には公表されていない


「界顕体?」


「この空想世界そのものに意思が宿ったものと思えばいい その許容量、処理能力、出力は俺等ちっぽけな人間の比ではない」


「…それ、大丈夫なの?」


「当然リスクが高い 俺らよりも単純に強い存在を作るわけだから 推奨はしない」 


界顕体は現実に出しさえしなければそこまで問題ではない


「もう一つはロハネの遺跡にある宇宙船だが、こっちは当然論外」


とはいえ、白銀が関わる以上、宇宙船は関係ない 俺には無視という選択はない 麗や凛にどんな影響があるか、わかったもんじゃない


「宇宙船というのなら、ディラフトの船が残っているはずだが…」


あいつの船 まともに動くのか?


「それに宇宙船を手に入れても、宙で何が起こっているのか分からない段階で何の準備もなく向かうのは無謀に過ぎる ましてや俺は大幅な弱体化中だ…」


なかなかいい案は浮かばない…


それに今は直近でも問題が出ている 


「真黒 冬始… いいや今は真黒冬、ね あの野郎」


ふざけやがって 

明らかにこちらを挑発している 


あのときのナギとともに俺を襲撃した白髪のメガネ小僧…! 


冬真から聞いた風貌からもおそらく同一人物


だが、だとしたら疑問が出る 


生前と風貌が変わっていた 似ても似つかなかった


それに銀や蒼龍 どれも聞き覚えのある奴らの名前だ


どいつも俺がぶっ殺した奴らだからな


俺含め、同窓会ってガラでもない連中だ 

ずいぶん舐められたものだ

一度ぶち殺した程度では足りないらしい


どうしても血の海ぱーちぃを開きたいらしいな 

なら何度でもぶち殺してやるよ

ご要望には意外と応えるタイプだ俺は


「異世界… 冬は異世界ってどんなところだと思う?てか何をもってして、異世界なんだろう?」


いわゆる現地人から見た宇宙人論争的なやつだろうか?


「学徒の間じゃいろいろ憶測は飛び交ってたな 現実の再解釈世界とか、この世界じゃ扱えない情報を持つ世界とか、死後の世界とか」


「ほうほう つまりどゆこと? バカにもわかるように話しちくり!」


「うんと、転生の概念とかがわかりやすいかな? あれって魂ありきじゃん? でも人は死ねば無に帰る 肉体がって意味じゃなくて意識とかの話ね 存在科学において死後の概念はないんだ 魂の輪廻転生みたいなのは観測できない以上、人には魂というものはない、とされる 単純にこの世のものじゃないから見えないだけかもしれないけどね」


悪魔の証明ってやつだ


「え?意外だな〜 見えないものってもう、ないものって断言しないんだ?」


「いやだって、君の持ってるドラゴンの遺骸だって、存在科学的に見れば、存在していないんだぜ? 刻紋として収容できてるのが不思議なくらい まぁ、ちょっと工夫はしてるけどさ」


「ふむふむ そっか…」


「心も精神も存在構築のための構成要素として在ることが確認されてる 構造もある 存在科学でそこら辺分けられてるのは見え方のせいだね」 


存在科学は観測の世界だ

原子のようなミクロではなく、もっとマクロな領域を扱う


「曖昧な概念を曖昧なまま扱う分野のため、物理脳や数学脳とは相性が悪い だから表現法ミレアのような芸術表現法が相性いいわけ」


「…心と精神って何が違うの?」


「あまり難しく考えなくていいよ 心は感情や感性

精神は思考や意志を表現してる」



ヒカルの能力、凌駕 あれは本来精神エネルギーを媒介にしたほうがより質の高いものになったろう 


異能は内心世界を外に拡張するようなもの、論理構築と情動のアンバランスさが目立った 


異能の力を発揮するための工程が多いのはそのためか 


アニマの持つ特性と含めても相性の悪い異能だったと俺は思う 


ただ利点もある 


聖寵のような異能は第二物理法則に近いが物理法則と連続性を持たない 


曖昧なイメージをそのまま現実に持ってきている 


そのおかげで光速で移動しようが、物理法則の束縛を受けないようだ


一番驚いたのは、この世界の聖寵ギフトと呼ばれる異能の存在情報構造が未知数だったこと


俺の知らないより高次の情報構造を持つ"何か"だった

どうやら界顕体は高位次元の情報すら扱えるらしい

晃はこの世界でも特殊な存在だ 


アニマは神がいなければ異能を使えない 

つまり高次のエネルギーがなければ奇跡は起こせない 


だが、彼女は神からのエネルギー供給ではなく、自身の心をエネルギー源にして聖寵を無理矢理使っている 


そんなぶっ飛んだことすら実現してしまう界顕体の能力は俺の存在構築能力を大幅に超えている


異能を扱っているのが人間の範疇を超えない相手なのが不幸中の幸いだった 


「話がよれたな 異世界の話に戻ろう」


「世界の再解釈、例えば転生を死の定義を再解釈したものととるなら、人が死ねば生まれ変わるものっていうルールそのものが変わる どうやるかは別としてそれができるなら、確かにこの現実世界では扱えない情報になるだろう」

 

「うむり なるほど! よくわからんちん!」

腕組みしながら、首を真横に曲げる


「わからんのかい…」


「わかんなくで大丈夫 冬がわかってるなら問題なし!」


「いや… おい」


「僕はちゃんとついてくよ」


「ついてくって」


「そんで冬がなんか変な方向に進んだら僕がとめるんだ なんとなくやばいって思ったら僕がとめる それが僕の役割だよ」 


そう言って冬真は笑う


俺は、どんな顔をしていただろうか


「…いや、ちゃんと理解してから止めろよな なんとなくで邪魔されたらたまんねぇよ」


「ちょっと! 僕今めっちゃいいこと言ってたよ!」


「ああ、なんとなく良さげに聞こえる無責任な発言な マジ気をつけろ」


「ええ〜」


俺は少しだけ笑って 


それから


「まぁ、これ以上憶測であれこれ言ってもね… だが、もし物語に出てくるような剣と魔法のファンタジー世界なら、死者の蘇生ができてもおかしくはないだろうな」


実際、現実でもそれは実現されているのだから


もっとも真黒冬始の存在情報を調べる限りは、まだ死んでいる、んだけどな 生き返った痕跡がない


どうなってるのやら


虚無の力ともまた違う異質な何かを感じる


「普通、異世界転生って主人公とかがするもんじゃないの? 敵が復活して報復に来るなんて、冬って逆主人公補正働いてない?」


うるせぇよ 

それとあいつらのは正確には報復じゃなくて逆恨みな

それはまぁいいや 


あいつらの解釈などどうでもいい

生き返ってきたというのならもう一度殺すだけだ 


麗や凛には指一本触れさせねぇよ


「それに、マナツ、ね 何者、なんだろうな」


生命拡張ユニット"真夏" 精神拡張ユニット"真冬"

彼女達の名前は地球の傷跡だと

ノインツェンは俺にそういった  


異世界の連中は空想世界で何をしようとしていたのか、まだ不明瞭な部分が多い 


在核が形成される前に逃げられた

結局中身を見る機会は得られなかった

 

それは本当に偶然?


だとしたらあいつらはなぜこんなに詳しい?


本当に異世界に逃げ込んだのか? 


いや、重要なのは…


あいつらが再度こちらを攻め込めるのか? 


ということ


こっちはなんの準備もできていない 奴らがこちらをわかって攻めてくるなら常にこちらは不利を強いられる


守りたければ、勝ちたければ、攻めなければ…



「てか、気になってたんだけど、なんか、その、縮んでない?僕ら?」


おもに身長が ちっちゃくなっちゃってるよ?


「完全回復できなかった 5年分の時間はまだ還ってきてない 完全回復には5年、かかるだろうな」


俺達の見た目は10歳くらいにまで縮んでいた


「…そっか でも、いいように考えれば若返ったってやつじゃない?」


「そんなに都合よくないよ 存在の劣化ってのは でも、夏さんが遺してくれたものが俺を助けてくれてる」


存在のエネルギーだけではなく、存在の規格スケールが縮んでいるのだ 

またしばらく本気での戦闘はできないな

だが、それでも生きてられるのは彼女の、おかげだ…



「記憶も、ところどころ、欠けてるな こりゃ」


夏さんの異能でも記憶の補完はされない

こればかりは第四永久機関で地道にいくしかない


「仕方ないよ それよりもここからどうやって出るの? てか、出れるの?」


「安心しろ ここは俺の領域 もう少し回復が済んだら、ここから出る まだ、やらないといけないことがあるからな」


「外は、大丈夫なの?」


「ああ、存在爆弾はただの爆弾じゃない 時間や空間すら、吹き飛ばす だから俺はあの町で起こった事象そのものを吹き飛ばした」


在核が生成されたことで空想世界に過去が生成された

そのおかげで存在爆弾を使えば過去に遡れる


あの町の混沌をリセットし、今度こそ、救ってせる!


「そっか 目にするまでは、不安だけど でも、本当なら… ううん 弱気はだめだね いこ…」



「それはいいね 君らにはぜひともあちら側に帰ってほしいからね」


「誰だ!」


「はじめまして〜 お二人さん」


そこには金髪ツンツン頭の長身とストレート銀髪頭のちびっこ二人組のスーツ姿の男達が立っていた

赤と青のオッドアイが印象的な男だ 


人間、のようにも見える見た目だが…



「ここは観測不可能領域だぞ!? どうやって入ってきた?」


「いんや? 俺らは君のいう観測不可能領域を知覚してるわけじゃないよ? ようやっと在核が再生したことで君等の存在を探し出せたから、君らの存在に直接話しかけてるんだよ」


たいした事のないように、たいした事を言う奴だ


「あんたら、何者?」


「何者、か〜 むずかしいねぇ〜 その質問 でもおいら達は他所では黄金種って呼ばれてるよ」


「黄金種? なんだそりゃ? 聞いたこともねぇ」


「そりゃ 名乗ったことがないからね 君等以外には」


「…ふざけてんのか? てめぇ 名乗ったこともない通り名なんぞ名乗ってんじゃねぇよ! もったいぶるくらいなら素直に名を名乗れ!」


「おいらは金河 んで、こっちが弟の銀河ね」


「ホイ 銀河もあいさつ、あいさつ〜!」


「ども」


ボソリとだけ告げる銀河という少年 

それだけいい、そっぽを向く


金河と銀河 


「で? 俺等に何のよう?」


「〜ん? 別に何かやってほしくてきたわけじゃないよ 無事が確認できたらもうだいたい目的は達したかな」


「…俺等が無事だと、なんかあんの?」


「続きが見られる」


「続き?」


「君等の物語のね」


「見世物じゃねぇよ ぶっ殺すぞ」


「ごめんごめん 別におちょくるつもりはないよ ただ、ことは君等の間だけで解決する問題じゃないからさ 虚無や、異世界の連中とかもね」


「お前、マジでナニモンなんだよ あいつらのこと、なんか知ってんのか?」


「それはおいらの口から言うことじゃないかな? 下手に介入はしない主義なんだ」 


「なら、何しにここまで会いに来たんだよ うざってぇ」


「一つだけ、冬 君に聞きたい事があるんだ」


「あ?」


スリーサイズとか言ったらぶっ殺すかんな


「スリーサ… ウソウソ! ごめんて もうふざけないから許して!」


「さっさと言えカス!」


「天国計画とは本当に君の求めたものだったのかい?」


冬は金河の胸ぐらを掴み上げる


「お前さ、図々しいよ 自分は何も答えないくせに こっちにはかなり踏み込んだ質問だな? ぶち殺すぞ」


「なら質問に答えてくれたらこちらも一つ質問に答えるよ」


頼んでもない情報開示なんて、ただの嫌がらせなんだよ


ぼくちゃんのメアド教えるからぁ、君のメアド教えてよぉ〜 なんて言われて嬉しいやつはいないだろう


「いらねぇよ死ね!」


「死ね言わない でも君にとっては知りたいことじゃない? 四季のことは」


「あ?」


空気が凍った 


「ぶぐっ!」


金河を殴り飛ばす冬


「兄さん!」


冬は金河の首を絞め上げる


「ぼ、暴力反対! か、かんべん、してぇ〜」


「殺す」


冗談半分で触れていい内容ではない 



「兄さんに乱暴するな」


銀河が抗議する


「黙ってろ てめぇからぶち殺すぞ」


「…やなやつ」


「言ってろチビ」


「お前が、四季を連れて行った存在か? 答えろ」


冬の声は冷めていた 冷徹で、返答を誤れば…


「答えたら、おいら殺される流れっしょ、それ!」


それは答えを言っているようなものだ 


「死ね」


「あのままだったら、四季も麗ちゃん、そして君も、大変なことになった」


「まるで俺達の身に起きたことが大したことじゃなかったみたいな言い方だな あまり不用意に喋るな 楽に死にたいだろう?」


だが、金河は冷静に告げた


「本当に?」


「…どういう意味だ」


「君や四季は強いからいい… でも、麗ちゃんは? 彼女は世界を敵に回しても生きていけるタイプだったかい?」


「てめぇ…」


「麗ちゃんは君さえいれば世界を敵に回してもいい そういうタイプだったのかい?」


その言葉はずきりと胸をえぐった


「おいらが四季を攫ったわけじゃない 攫われたのを救出したのさ でも結局君のもとに返さなかったわけだから、攫ったのと同じだと言われればそのとおりだ でも返したとしてもジリ貧だったと思う 麗ちゃんのほうの心が擦り切れていく どこかで限界をむかえたと思うよ」


それは、的外れな見解、とは言い切れなかった


冬の首を絞める指の力が弱まる



「君と四季は優秀すぎたんだよ この宇宙で一等輝く宝石のように 人の欲を掻き立てる 君等を知りながらも無視するなんてできない そんなことを言う奴らってのはそれを言う時点で既に意識してる証拠さ」


「…ペラぺらと自分達に都合のいいことをくっちゃべっえんな、おい なら、なぜ四季を救出したときに俺等も連れて行かなかった? どうでもよかったからだろ 四季以外どうでも」


「それは… そうだね 意識していなかったよ」 


クズが


「覚悟は、できてるな?」



「すまなかった」

そう言って謝り、膝をついて頭を下げ、土下座した


「あ?」

意外な言葉に一瞬止まる


「兄さん!」


「いいんだ 銀河 これが、彼らの謝罪を示す姿勢らしい それに習おうと思う」


「…」



「おいら達はどうもそういう人の心の機微に疎い 指摘されるまで意識すらしなかった 確かに連れていけばよかったんだな」


「マジで言ってんのか?お前」


「四季に会わせろ、と言うかもしれないが…」


「四季が君の前に現れないのは君のことを気遣っているからだ」


「…」


「君等が一緒に会うには色んな障害がある おいら達がいつだってどうこうできるわけでもない 君自身薄々気づいていたろう? だから君は四季を探すのをやめてしまった」



四季ほどの存在がこの惑星の住民程度にどうこうできるわけない 四季が自分のもとに帰ってこないのには、帰ってこれない相応の理由があるって


そうでなければ君はこの惑星を根絶やしにしてでも探し出したろう


「俺はまだ四季に会えるほどの力がないってことか」


「四季と会いたいのなら邪魔するもの全てを蹴散らせるほど強くなることだよ」


「…なぜ、四季をあんたらは保護する?理由は何だ?」



「四季はおいら達の同胞だ だから、助けたかった」 


「…じゃあ、あんたらは…」


冬は彼らの存在を解析する そして


こいつら、在核が把握できない! 


ないのでも 隠してるのでもない 


知覚できないのではなく、理解できない


「今の君じゃまだ我々は理解できないよ」


そしてそれは四季と、確かに近いものであった なら、こいつらの正体は…




「質問に、答えてくれるかい?もし答えてくれるなら」



「一度だけ 君等が困ったときにおいら達が手助けをするってのは、どうかな?」



「あんたらの助けなんていらねぇよ」


「そんなことないさ 必ず 君等の助けになるよ ついでに君等と敵対は絶対にしないと誓うよ」


俺は訝しむ 本当によくわからない奴だ


「なぜ知りたいわけ?」


面白い半分で首突っ込むなら、楽には殺さんぞ?



「単純に興味って言えばそれまでだけど ことがことだからね おいらの目には君は一人で生きてるほうが性に合ってるように見えたんだ この惑星の人間を皆殺しにしてもおかしくないほどに君は怒っていた そんな人間が天国…どうにも腑に落ちない それは、本当に君の欲だったのかい? もしそうでないのなら、君も、君の大切な人も救われない だから、聞いておきたかった」



それは、ある種の気遣いのようにも感じた 

そこにふざけた様子は一切なかった 


「…それ、答えないとだめ?」


「う〜ん だめってことはないよ これで断られるなら、諦める 無理強いはしない」


「はぁ」

俺はひとこと、息を吐いた




俺は結局、現実にいる他人ひとを愛せなかった


憎悪と嫌悪と殺意 


それだけが腹の内を巡るのは精神衛生上よろしくない


汚いものを消して回る人生と、美しものを創り上げることに費やす人生 


俺は後者を選んだ 


どちらが特別優れているとは思わない 


好みの問題だろう


「冬…僕は、いや、なんでもない なにも、言えないや」



冬真は少し寂しそうに俯いた


人を好きになれない 愛せないってのはどういう感覚なのか、冬真にはわからなかった


僕は少し優しくされるとすぐに人を好きになる 


それが可愛い女の子なら脊髄反射レベルだろう


ちょっと嫌なことがあっても、すぐに忘れる 

都合のいいオツムだ


基本出来は悪いんだけど、冬を見てるとまだ自分はマシなほうなんだなと思う瞬間もある


憎しみと怒りと嫌悪、そして痛み


それが冬の中でずっと巡り続けている


冬の脳は怒りを快楽に変換できない


忘れる機能もついていない


冬は復讐に酔えない


もちろんそれは人として素晴らしいという意味では決してないけれど


復讐心や憎悪を痛みだけで腹の中に抱え続けるのは、地獄だということだ


僕なら耐えられない 


ずっと誰よりも近くにいる僕にはそれが痛いほどわかった だから、何も言えなかった


「お前がそんな顔しなくてもよかろうに… 感じやすいやつは大変だな」


冬はそう言って呆れた


例えそれで気持ちよくなれなくてもな 

目障りなやつを潰す行為ってのは意味があるんだよ

しょうもねぇ綺麗事じゃ、決してうまらないものを焼き尽くすためにな



「人は一人では生きてはいけないというが例外というものはなんにでも存在する それもまた一つの真実だ 君は、一人のほうが幸福になれたろう」


心理学で一番近い表現は孤独適応型だが、その中でも回避型ではなく、拒否型

倫理基準も自己に寄っている

生来の能力値も相まっていよいよ人を必要としない


「…そうだな あんたの言う通りだ、多分俺は普通の人より他者に重きを置いてないと思う 一人のほうが上手く生きられたし、楽しかったとも思う」


「でも、きみはあえてその選択をしなかった」


「それは、なぜだい?」


冬は振り返りもしないで 何もない天を見上げる


「……麗があんな死に方をしたからだよ」


冬の表情は積年の鬱積を吐き出すように

重い鎮痛な表情だった


そしてそれは、きっと天国計画の核心の部分だった


「あいつは結局最後まで自分の意思で何かを選ぶことのない人生だった

俺はなんやかんや自分の好きに生きてきた いや、生きてこられたんだ」


降りかかる火の粉を振り払うだけの力があった


けれど、あいつにはそれができなかった 

やらなかったんじゃない

本当にできなかったんだよ 


社会の構造とか、家族とのしがらみとか 

あいつは多くのものに縛られていた 


選べなかったんじゃない 

初めから選択が与えられていなかった 


彼女は耐えるしかない人生だった

最後の最後も結局…


奪われるためだけに生を受けたかのように

彼女の人生はただ誰かの食い物にされて消えた


何も残らなかった 


傷だけが刻まれて


そんなあいつがいった 

いつか 自分以外の大切なものを見つけられたら 

その言葉は祈りに近かったと思う


他者という存在に価値を見いだしてほしいという彼女の願い


他人なんていらない それは


他者がいないと生きていけない彼女にはその生き方は耐えられなかったんだろう 


そんな人間がいるのが、許せなかったのかもしれない


「欲が出たなんて言ったけど、それは本当じゃない

でもそれを俺の欲だってことにした

あいつの存在が 何一つ、誰にとっても無価値だったってことにしたくなかったから」



あいつが生きてたらこんな選択はしなかっただろう


でもあいつは死んだ 


近しい人間にあんな死に方されたら、たまったもんじゃねぇよ…


あんな結末が欲しくて、生まれてきたわけじゃないだろうに…



冬真は少しだけ、冬のことをまた一つ理解した


全てをひとまとめに人間が憎いと捨て去ってしまってもおかしくなかったのに、冬は抗うこともできずに必死に耐えて、涙を堪えている人を無視できなかった 


それはきっと、麗さんという人を、救えなかったからなのかもしれない



「彼女と君は好きあっていたのかい?」


ぷっ 


「鼻で笑われた おいら、もう立ち直れないかも…」


うずくまり、もじもじしだす


「貴様、兄さんの心になんて傷をつけてくれるんだ!

謝れ!」


「ごめん(棒読み)…」


「もっと! もっと心を込めて!」


「スーパーごめん(耳ほじ)」


あいつにだって選ぶ権利はあるっての

顔も性格も悪い上にブチ切れると自分の親友ぶっ殺そうとする男なんて、誰も好きにならないよ


彼女は監視役として派遣されてたのは分かってた 

あいつが俺のそばにいたのは、そう望まれたから

俺もそれはわかってた 


俺と彼女はかなり特殊な状況で、特殊な関係だった 



でもさ、俺みたいな人間でも長い間一緒にいた相手に何も思わないってことはないわけよ


その程度には時間を共にしすぎた



友達ではなかったし、当然恋人でも家族でもない 

シンパシーを感じたりもしない 


あいつの言ってることは、結局俺にはほとんど理解できなかった


歪な関係だったと思う 

でも、俺みたいなのでもさ、人生生きてれば誰かと繋がる瞬間ってのは存在する 


他者に興味が薄くても、他者と関わって何も感じないわけじゃない 残るものってのはあるんだ


好悪は関係ない



空想小説っていいよね どんなに荒唐無稽でも許容する ほんの少し現実を忘れられる


天国… 善良な者が、その善行を認められ、人生の最後に到達する場所

そこに行けば、本当に救われるのかな?


そう言っていた彼女の言葉を思い出す


生きてるうちから死んだあとのことを考えるのは健全ではない 


思えばあの頃からあいつはすでに死によっていたのかもしれない 


生者の感傷かもな…


「そういう意味で、あいつの人生とか諸々 無駄だったってことにしたくなかった 意味があったことにしたかったんだ まぁ、鎮魂のようなものだな」


「それは君の思想ではないだろう?」


「君は死者は何も考えない 何も思わない 生者が唯一選択できるのだと そういう人間のはずだ」



「それは復讐なんてぇ、死んだ彼女はぁ〜 のぞまぁなぁぃ〜い とかキショい事言うやつに対するカウンターパンチで言ってるのであって、別に俺に死者を冒涜したり、鎮魂を無価値って言ったことは一度もないけどな」



「そもそも死者を悼むのに重要なのは俺の思想を押し付けることじゃない

誰かを想うなら、それは誰かの想いに応えるものでないと意味がない」


死者は何も語らない

なら生き残ったものにできることは、同じ悲劇を生まないように努力することではないだろうか?


彼女なら そう望んだ 

だから 


「手向けってのはさ そういうもんじゃないか?」


誰かに利用されるために生まれてくる社会にはしない

望まれないで生まれてくる子供のいる人生にはしない

頑張って生きてる奴がバカをみるような世界にはしない


生まれてきてよかったと最後に言える世界にするよ


何者にもなれなかったやつをちゃんと、見つけられるように


きっと俺はあいつの人生に意味があったと思えるものにしてやりたかったんだ


「そうか 引き止めて悪かったね それが聞けてよかったよ」


金河はどこか満足そうにそういい そして


「冬 ノインツェンの宇宙船を使うといい ディラフトのものは君等には動かせない だから虹鋼都市に向かい、秋に会うといい ノインツェンの船なら、使えるはずだよ」


「お前らは… いや、いい そうさせてもらうよ」


時間も惜しい こいつらにはなにをいっても無駄な気がした 俺は歩き出す


「最後に 君の天国が、よいものになるように 祈っている、冬 それと君もね、冬真君 君には期待してる」


後ろからそう語りかける


「え?僕?」


僕は自分を指さす すると金河はうんうんと頷いた

冬じゃなくて僕って…なんだろ?


少し釈然としない感があるけど、一応僕はお辞儀をし、冬についていく  


麗の願いから始まったそれは、少しずつ冬の中で輪郭を確かにしていく


アニマ達との生活の中で、自分が本当に望む他者との付き合い方が見えてきたから


彼らとなら、よい天国を築き上げられると俺は信じてる


冬は振り向かず前に進む

前だけを向いて、歩いていった


おそらく人生最初で最後の、誰かの願いのために




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