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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
0章 ザインクラフト

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ゲームスタート



意識がある 

何も見えない空間だけが続く

体は動かせない 声も出せない 最悪な状況だった 

しかし転機が訪れる


「空想園 起動 コード:『アヴェスターゲーム』 マテリアル・リンケージ・リリュージョン 存在情報をコンバージョンします」

「対象のアバター(存在情報)の著しい欠損を確認 緊急シーケンス移行 移行先のザイハックを開始 ザイハック成功 存在IDを発行」

「世界を、アップデートいたします」

アナウンスが響き、そして


急に視界がはっきりする きょろきょろとあたりを見渡す 見知らぬ光景だ 

痛みはあるが、腕も足も動く 

「は?」


本当に意味不明だった なぜ勝手にザインが起動した? 

もしかして、SHIKI?

少し考えて突拍子もないことを思いつくが、まさかなとかぶりを振る

あいつがいるわけがない



っ!!

ふるふると頭を振る 

「考えるのは、後だな」

体がだるい そう思っているとじゃらじゃらと音がする

とらわれているのか? 体に違和感を感じる

自分の体が重く感じる

立ち上がる

あたりを見渡すと鏡があるのが見える

鎖はつながっているが、牢屋内ならある程度、行き来できる

鏡の中を覗き込む


そこには褐色肌にシアン色の瞳 左目の下に二つの泣き黒子 長い漆黒で艶のある黒髪を左側だけ編んであまった部分を右肩から下げている女性とも見まごう美少年の顔があった よく見覚えのある顔だったが、それは見覚えのある自分の顔、という意味ではなかった


「うぁ 綺麗な顔」

「誰だ!」

『やっと目を覚ました?』

「誰だ!頭の中に話しかけてるのは!」

『まぁまぁおちついて」

頭の中で話しかけられるのは非常に不快だ 以前超能力者に似たようなことをされたことがあるが、気持ち悪い、なんてレベルじゃない 自分を解剖されているような気分になる 今回のこれはそれ以上の不快感を伴った まるで自分の存在が他人と混じっているような不快さ 

 

『何もないとこですが、あ、お茶いります?』

まるでディラフトのようなおふざけにイライラも募ってむかついた俺は

ガンッ

『ちょちょっ!』

ガンッガンッガン!!!!

『待った待った待った!』

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!!!

頭の中に自分以外の誰かが同居しているこの感覚が どうしようもなく不快だ

「俺の、頭から、でてけぇええええええええ!!!!!」

『ちょまってって! 謝るから! できるならとっくに出てってるから! お願い待って!ぼく、血とか見るの、嫌なんだって! お願い許して~!!!』

「ふぅ ふぅ ふぅ」


『ごめん、ごめんよ~ ぼくが悪かったから許しておくれ~』

「でていけない、そういった?」

『そう、そうなんだよ!!!よかった やっと会話が成立した ぼく、うれしい!』

頭に手を当てる 少し考える 

「いくつか聞きたい 正直に答えてほしい」

でないと何をするか、わかんない いまの自分の状態を納得させる情報が欲しかった


『え?う、うん』

不穏な恐怖を感じて素直に従うことにした


「まず、君の名は?」

『ぼくは神代冬真 冬真って呼んで!』

知らない名前だった 


「そうか、冬真君 俺は、真白、、、、真白、真白....」

頭を抱えて、くしゃくしゃとかく まるでノイズが走っているかのに痛みが走るが記憶はぽっかり穴が開いたようにそこだけでてこない


『え?どうしたの?』

「下の名前が、思い出せない」

『え?それって』

頭をぐりぐりしても、記憶は出てこない 思い出せない いや、欠けている、といっ

たほうが正しいだろうか


忘れることは人間ならありうるだろう 思い出せないだけ、ということもありうる

ただそういった感覚とは違うように感じた なんといえばいいのか 例えば腕を切り落とされたら、自分は腕を切り落とされたと そう自覚できると思う 無くなったということを自覚できる感覚、といえばいいのだろうか

感覚的すぎて、他人に理解してもらうのはまず無理だと思うが、自分の存在が欠けている、そんな感じがする 存在とはその人物がたどってきた歴史そのものだ

それが欠けるというのは記憶を失うのとはわけがちがう

それもかなりの重症だ おそらく記憶を思い出せないのは虚無どもにやられたせいか?



虚無 あれらは一体なんだったのか 

俺はあの透明な男に頭を食われたはず、だったのに

俺は頭を触ろうとすると、奇妙なものが目に映った

真っ黒な左腕だ 

「なんだこれは?」

そう思っていると、今度は右腕も真っ白になっていることに気づいた どちらも一の腕まで置き換わっている 先ほど虚無に食われたところだ

両手だけではない あの時、俺は両手と心臓、それから頭部を虚無に食われた

その食われた箇所に黒い左腕と白い右腕がついていた 心臓の部分には灰色の穴ができていた 



鏡に映るその姿を再度見る 俺ではない顔 マシロ 

アヴェスターゲームに出てくる主人公とヒロインの幼馴染 そして彼らを裏切り、最後には夏によって殺される男の顔だ 自分の名前が思い出せない 自分の顔も、思い出せない だがこの顔じゃないことだけは思い出せる

この顔なら必然中身はマシロ、でないとおかしいが中にいるのは俺と見知らぬ男の二人、そいつも名前は冬真という 別人が別人の体を占拠していた そう考えると悪いことをしたなと反省する


そうしてると、はっとなる

「ザインクラフトは?」

手持ちにはどこにも見当たらなかった 

呼びかけるが、反応がない 俺が見つけられないのか? 

ザインクラフトは俺の在核アウスヴァイスを登録しているため、存在に紐づいている 失くすということはありえない

一つ思い当たるのは彼の存在 俺と同じアバターの中にいるせいで在核情報が混線して、探せないのか?


『あの~ もう質問してもよろしいでしょうか?』

「だめ 申し訳ないけど、もう少しまって いまいろいろ考えを整理してるから」

彼も状況から考えると被害者だろう 気の毒ではあるが、今は他人に配慮しているだけの余裕がない 

『あ、はい』


そもそも彼はどこからきたのだろうか 疑問がもたげる

マシロのアバターの中に、俺がいるのは百億歩譲ってまだわかる

不本意ではあるが、近くで電源が入っていたアヴェスターゲーム内に緊急避難したんだろう

俺の在核があまりにもぼろぼろになっていたから、俺の投身大のアバターを作成できなかたったと考えれば、ゲーム内のキャラ、元から存在するアバターを緊急避難先に選んだと考えれば辻褄は一応あう

だが彼は? そういえば あの場に似つかわしくないもう一人がいたことを思い出す

「一つ聞きたい 君はあの場にいた少年かい?」

『え?あの場にいたって?』

「俺のことを、冬って呼んだだろう? なぜ俺の名前を冬と呼んだんだい?」

『ごめん、なんのことかわかんない  ぼくと君って初対面だと思うけど』


ならもう一つの可能性も考えないといけないな 彼が、このアバターの本来の持ち主であるマシロではないかと

「君は冬真って名乗ってるけど、マシロって名前だったりする?」

『???えっと、それは、君の名前、だよね? え?どゆこと?』

「混乱させてすまない 身に覚えがないのならいいんだ」

自分の名前を勘違いするようなことはないだろう 彼に俺を騙す理由がなければだが

今考えても仕方のないことはおいておこう


『はぁ よくわかんないんですけど、あなたは冬って名前、なんですか?』

「いや、それは」

この名前は、とある人物が俺の名前呼びにくいってんで、冬君と呼んでただけで本名ってわけじゃ

『よくわかんないすけど、よかったですね 名前、思い出せて』

そう言われて すっと言葉がすんなり入ってきた 本名にこだわる必要もない というより

本名にあまりいい思い出もない あのクソアマのつけたいやがらせの名だ

冬、と呼ばれた記憶だけは残っていた 十分だ

「そうだね 俺の名前は冬だ そう呼んでくれ」

『おっけ!』

彼はよく知らないが、快く承諾した


あの場にいた少年じゃないとするのなら、彼はどこから来たんだ?あるいは、記憶を失っているかだ

存在情報とはその人物が生きてきた痕跡そのものともいえる 存在を削れる、消失させられることを考えれば、記憶にも何かしらの影響を与えていてもおかしくない というより、俺自身が名前を消失しているのだから、ありうる 確かめないとな


「こうなる前の最後の記憶ってどこまで覚えている? 君の侵入経路がわかればここから脱出できるかもしれないから」

ザインが俺を見つけてくれない限り、その脱出方法も使えないけれど、とはまだ言わない

まだ見つける手段は一つ残っているから だから脱出手段を確保はしないと この世界に長時間いるのもまずい理由があるし、俺の侵入経路は使えない 虚無がまだいたらいよいよもって詰みだ


虚無の連中はこちらの存在を削り取っていた あんなことは通常ありえない ザインクラフトを使っても存在エネルギーを消費することはあっても消滅することはない なかったことにはできないのだ 存在兵器に対するアンチウェポン、としか思えない ディラフトが作ったのかどうかはこの際置いておこう いまは情報が少なすぎる とりあえずあの虚無達とは明確な対抗手段がないままに戦うのは避けたい

まずは生き残ること 


『えっとどこまで、って う~ん たしか学校から帰る途中で、青い光が落ちてきて それから だめだ そのあとは思い出せないや』


「学校? 青い光? 学校というのは養成所のことかい?」

『養成所? かわった言い回しをするんだね』

自分からすると学校という表現のほうが時代錯誤だと思うが、現代において学校という文化は存在しない 学徒という制度自体は存在するが、ほんの一握りしかそこには入り込めないし、そこに入り込めるものは小さなころから高度な教育プログラムを課された上級市民の特権のようなものだ」


俺のようにそこに入り込めたのはいろいろと裏口使ったり、一部の金持ちと伝手があるやつだ 遺跡や遺物の回収事業者であるサルベージャーを個人で秘密裏に雇う奴が酔狂で入れ込んだりするが、たいていうまくはいかない 上級市民と下級市民との間にはそれだけの知育水準に断絶がある時代だ


知識の独占化 利益の独占化 金持ちはさらに富み、貧乏人はさらに貧乏になる この惑星に来る前から続く人の社会構造は今もかわらない いや、以前よりもより加速したといえるだろう


今この時代、市民とは、資源だ 下級市民こそ、遊ばせておく余裕はない 養成所で一通りの訓練を行った後に、遺物回収者として安月給で雇われる だいたい死ぬ 生き残った優秀な回収者は個人で契約し、いい給料を手に入れたり、または個人で回収を行い、自分で買取人と渡りをつける者もいる


認識のずれが気になる もしかして

「君はディラフトが連れてきた、異星人かなにかかい?」

『い、異星人!? なにどゆこと?』

「俺の知り合いのディラフトシュラッケンという宇宙人だ いろんな惑星を渡り歩いているといっていたし、最近一緒に宇宙にいかないかと誘われもした 君は彼についてきた一人なのではないかと思って」

『宇宙人、異星人、宇宙人、異星人....』

だめだ フリーズしてしまっている これも違うのか? 彼の存在は本当に謎だな 一体何者なんだ

『僕が異星人だとしたら、なんでぼくと君はこうやって話せてるの?』

言語について聞いているのだろう


「同じアバターを使っているからだろう 脳構造が異なろうと、使っている言語が異なろうと、ある程度、調整はできるよ 同じ体の中で共存させていることがなによりの証拠だ」

俺の作ったアバター技術だ それくらいの調整は可能だ

そもそもそんなに規格の違う存在構造をしているのであれば、同じアバターになんていれようがない

彼も自分達と同じ生体構造をしているのだろう 俺があの場でみた少年は少なくとも俺らの惑星の住人とあまり大差はないように見えた


『ほへぇ よくわかんないけど、すごいんだね!!』

入り組んだ話については聞き流すことにしたらしい こちらとしても全部説明してる時間はないし、そうしてもらえうほうが助かる


「青い光、と言ってたけど、君ら特有のよくある何かなのかな?」

『そんな、全然! いままであんな光景見たことなかったよ 最近ニュースで騒がれてる異世界、のことについてなんじゃないかってぼくは思ってるけど』

異世界、ここでその話題がでるのか


「異世界、というのには君は詳しいのかい?」

『え?う、う~ん ぼくにとっては興味より重要な話って感じかな、ほ、ほら! 剣とか魔法とか それから... ううん なんでもない ただぼくは異世界に、いかなくちゃいけないから』

彼は最後のほうに悲しそうな様子だったが、あまり触れてほしくなさそうなので追及はしなかった 人の事情に訳知り顔で踏み込むつもりもない


それにしてもディラフトと似たようなことを言う 言い訳くさい理由付けにも聞こえたけれど、異世界行きに興味はありそうだ やはりディラフトが連れてきた、異星人で 虚無に襲われ、存在を削られ、その時に記憶も大半失った そして俺と彼で互いの足りない存在部分を補う形でこのアバターににげこんだ と考えれば かなり無理矢理だが、一応辻褄はあうか?


他者と存在を分かち合う、というのは原理原則できない 存在というのは混じらない というより俺の作ったザインクラフトでそういうことはできない 存在というのは自己の存在を維持しようとする性質がある 変化することを嫌うのだ 無理矢理変えることはできるけど、それが人クラスになると難易度は激上がりする そう考えると我々の状態は壊れかけのつり橋の上にいるようなもの

存在の境界を認知できている間に、問題を解決できなければどうなるかわからない もしできなかったら....そこから先は未知の領域だ


「今、俺の考えたある程度の想定を君にはなします 落ち着いて聞いてほしい」

『あ、はい』

それからかいつまんで彼に俺の仮説を話した

結局彼がどこのだれなのかはわからずじまいだったけど、今は互いに危険な状態を解決するために動くべきだ



『えっとむずかしいことはよくわかんないんだけど、ようするに元の体に戻れないとまずいってことだよね?』

「その認識でいいです 表現するなら俺ら二人の体をばらばらにして、そのパーツをつなぎ合わせた状態が、今の俺らです かろうじて人間の形を保っていますが、フランケンシュタインのようなものだと思っていただければいいかと」

『ひぇ』

そういう感想がでるのも無理はない 俺自身がこんなに嫌悪感が強いのだ 彼も同様だろう

自分の脳を半分に割って他人の脳とくっつけている、と言われて気持ちのよい思いはしないだろう


「本来ことなるパーツをつなぎ合わせている以上、どこかでかならず無理が出る 拒絶反応がでずに今の状態を維持できているのは、はっきり言って奇跡に近い」


人間の存在というのはとかく個々の個性いろが強い 同じ人間でも血液型タイプが違うと輸血で拒絶反応を示すように存在学においても型が異なるものは拒絶する 

通称俺は在核の種類の違いを《ブラッドカラー》と呼んでいる 個性を色、型をタイプで分けている

俺と彼はおそらく型が同じで、色も近いのだろう 俺の色は《ブラック》 なら彼も同じブラックか、グレイのどちらかだろう ホワイトはないと断言できる



存在学において、存在の型とは血液型よりもさらに細かく細分化されており、互いの存在で、支えあうというのは事実上、無理だ できてしまっている以上、絶対とは言えないわけだけれど


人間の脳は損傷すると、別の領域が失った部分を補いだすという話があるが、存在にもそういう性質があるのだろうか? 存在学も俺が個人で研究していた分野で白銀からは妄想の産物だといわれ、相手にされなかった分野だ わかっていない部分も多くある

「わからない部分についてはおいておきましょう ここからが本題です」

『まだ何かあるの?』


「今からここを脱出したいのですが、そのために必要な道具が手元にありません それを手に入れる必要があります」

『必要な道具って?』


「ザインクラフト」

『ザイン、クラフト? それって何?』

「存在の力を扱うためのデバイス、と言っても理解が難しいでしょうから 現状を打破するのに必要な道具だと思ってください」

『はぁ わかりました で?それはどこにあるんですか?』

まぁ そういう質問になるよな


「わかりません」

『...え? いや、わかりませんって』

「なのであちらに見つけてもらいます」

『???』

頭に?が三回くらいつきそうな疑問思が飛んできた 戸惑うのも無理はない


『えっと、ザインクラフト、さん? は人なのですか?』

「人工知能のようなものが搭載されている、といえば理解しやすいですか? 人工知能ってわかります?」

『あ、はい、わかります とするとそのザインクラフト、さんにはGPS機能的なものでもついてるんですかね?』

「似たようなものです それより性能はいいですが」

『おお!!! なら一安心ですね』

「いえ、ここからが問題なんです」

『え? ど、どういうことですか?』


「先ほどから反応をうかがっていますが、応答がありません おそらく俺の在核アウスヴァイスを探知しきれていないのだと思います」

『やばいじゃないすか! じゃ、じゃあどうするんですか?』

「おそらく俺を見つけられない理由は 君の存在です」


『え?』

動揺は瞬時に恐怖へと変わる 自分を害される 消されるとでも思ったのだろう ある種間違っていないだけに、言い訳のしようもないけれど


「あなたを害そうとは思っていませんが、危険を冒してもらうことにはなります」

『い? いや、いやいやいやいや!!!』

「俺とあなたは互いにお互いの存在を認知することで自己の存在を安定させています」

我思うゆえに、我有り、という言葉があるが


存在学においては【我思うゆえに、我有り、されど他者なくして、我有らず】 という文言を付け足す



【自己認知】と【他者認知】 宇宙論の一つに宇宙とは人に観測されて始めて存在しうるというトンデモ理論が存在する 人が認識せずとも宇宙は存在できる それは宇宙の自己認知能力がけた外れに高いからだと俺は考える 人間も自己認知は十分高い 世界に自分の存在を認知させられるだけの存在の力を持っているのだ だが空想の存在はそれができない 存在の力を持たないがゆえに、現実には存在できない ザインクラフトは現実に存在するものから存在エネルギーを抽出し、それを別の情報体に移すことで実体化させる 限度はあるが、それ自体はすでに実証済だ

 

問題は俺と彼の存在がかなり希薄になってしまっているということ お互いの存在を自分で担保できるだけの存在力がない 空想存在と大して変わりのないレベルにまで低下していると考えられる

まずは現実に戻れるだけの存在のエネルギーを供給しないといけないが、この世界は空想世界だ

空想世界で存在エネルギーを満足に供給できるはずもない 仮に存在エネルギーを供給しても現実に顕現できるだけのエネルギーは供給できない 空想情報はあくまで空想情報でしかないからだ

方法としてはザインクラフトを使って現実の存在エネルギーを供給してもらうことで回復を図る、というもの

だが、問題が一つ 彼の存在と俺の存在の堺が曖昧な状態では、俺のザインが俺を、俺として認識しきれないというもの

ザインクラフトに登録できる在核は一つだけ 理由は複数登録すると互いの在核をオープン状態にしてしまうから つまり見放題弄りたい放題というわけ 別のザインクラフトを持つものが第三者を悪意で攻撃できてしまうのも理由の一つ(ザイン持ってるのなんて俺だけだけど) リスク管理からも一つの登録が必須 だが、今回のような特殊な状況ではうまく機能していない


なら方法は一つ

「君には消えてもらうことになります」

『無理! 無理無理無理! 絶対嫌だから!!!』


「消えるといっても、死ぬのとは違います 殺すという話ではありません」

『いや、でも、だって!!』


「落ち着いてください」

『これが、おちついていられるかって!!』

彼がパニックに陥りそうになっている 脅すようないいかたになってしまった以上、責任は俺にある 


「俺はあなたを無事に現実へ送り帰します」

俺ははっきりとそう宣言した


『え?』

彼はぽかんとする

「約束します 絶対にとは言えませんが、最悪俺が死ぬことになってもあなたが生かせる状態ならそうします これではいけませんか?」


『ど、どうして、そこまで』

「あなたは巻き込まれただけです 自分から危険に飛び込んできたならその限りではありませんが、あなたが被害者なら、俺が加害者だ 自己に責任があるのなら、知らねぇよとはいいません 責任は俺がとります」


『...どうすれば、いいですか?』

「俺とあなたは互いの存在を認知することで、この世界にかろうじて存在しています ですが今はそれが悪さをしている ザインが俺のことを俺として認識できない要因を作ってしまっている なのであなたと俺の視線を、一度切ります」


観測、という行為は存在学において最も重要な意味を持つ 他者認知と自己認知 その比重が不安定だとこの世に存在すること自体が、不安定になる

眼を閉じる、というのは存在学では、観測をしないということ 観測するには世界というフィルターが必ずいる そのフィルターがなければ人は他者を認識できないから 世界を認識できないから 

そしてそれは同時に世界からも俺たちが認識できなくなるということ 世界から認知されない、それはつまり 無の世界に落ちることを意味する かなりの崖っぷちだ だがこのままではどのみちジリ貧 ゆっくりと死ぬか、ばくちでも命がけで実行するか そのどちらかだ


『それをすると、どうなるのですか?』

「世界に認識されなくなり、無の世界に落ちるでしょう」


『そんな、そんなこと、やっぱり』

「このままほっておいても、そうなりますよ?」


「俺たちの状態は今、かなり危うい いつ無の世界におちてもおかしくないほどに」

『そんな、なら、選択肢なんて、最初から...』


「心配しているようですが、ザインがこちらを見つければすぐに引き上げますよ 即死するような話ではない」

『でも』


「心配はわかります ですが、あまり待ってあげることもできません 1秒先には、そうなっておかしくない状態では、迷っている猶予もない 俺が言うのもなんですが、覚悟を決めてください」


『...本当に、俺のこと、帰してくれますか?』

「帰します 少なくともあなたを切り捨てた瞬間に俺も無におちる、この件に関しては一蓮托生です 仮にザインが俺を見つけても即座に無事になるわけではない あなたを切り捨てることは俺のためにならない 俺もリスクを冒してます 俺がもし自分の利益しか考えていないなら、あなたにこんなにいろいろ話しません 勝手にやりますから」


『...わかりました』

少し考えたが、彼なりに誠実にこちらへ応対してくれているのは感じる

それが冬真の気持ちを軟化させた 


「では、心の準備を 俺があなたから視線を切ります その瞬間あなた側からも俺が見えなくなるでしょう ですがパニックを起こさないように 数は数えないで 行きますよ 3...2...1」

そういって指を折り曲げていき、カウントが0になった瞬間 ドポンッと まるで海に落ちたような感覚に陥った



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