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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 【最後の善意解放作戦】

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善意の引き金



「いい加減に、して…ください!」


すなおはなけなしの勇気を振り絞って声を上げる ここで声を上げなければ、私は今後何も言えなくなる

険悪な雰囲気の人達が私に視線を向ける


彼も、こちらをみている その瞳は極彩色の輝きを放っていた こちらの全てを見透かしてるかのようにすら思えるその瞳に、怖気づきそうになる 彼の放つ強烈な殺気や言葉に、私はずっと引け越しになっていた

でもこのままじゃだめなんだ 今、言わなくちゃ!


「そんな話、どうでもいい! 今大事なのはこの町の人々の生活じゃないんですか?」


「すなお…そうだよな」

うしっと自分の頬を叩いて冬のほうをまっすぐみるせいぎは、わずかに震えを残しながらもすなおの横に立つ まるで彼女をかばうような位置になるように、少しだけ前に出て


「この町の人達は飢えてます 私達が見たこともない本物の大地の上にいながらもその生活は決して楽じゃない ううん 私達よりもずっと苦しい立場にあるんです! なのに」


「どうやってやるの?」

冬は言葉をかぶせるようにいう


その一言が再び静寂を齎した 


「どう、やって、て…」


強い言葉ではなかった 叱責するのでもない 

問題提示

一番の問題であるのは確かだが、一番の問題を解決するための手段がない 

それもまた事実だった


「例えば…食料が足りないなら、外から、持って、くるとか!」


彼女の言ってることは間違ってはいない 

ただ、正しさを享受できるだけの環境にない存在にとっては、正しさとはただの暴力だ



「どうやって?」


一つ一つ紐解いていこう



「…私達をここに入れたみたいに、外から、物資を運び込む、とか」


すなおはしどろもどろになりながらも言葉を繋げた


「結論から言うね それは無理だ」


「それは、なぜ、ですか?」



「君等がいるここは空想世界で、現実の世界とは違う 現実の人間を空想世界にこさせるにはアバターを介して置換する それは、人だろうと、物だろうと同じだ」


アバター技術ってのは、形のないものに形を与える

この空想世界の根幹に根差してる技術だ その世界に適した規格の器を作らないといけない

そしてそれを作るのにもリソースがいる


「物資を運び込みたいのに、物資(アバター)が必要になる そんなことするくらいならそのリソースを使ってこの世界で物資を作成したほうが早い そしてそれはすでに行われていて、それでも間に合ってはいない これが答え」


「じゃ、じゃあ! 別の空想世界を作ればいいんじゃないですか? わざわざ資源が枯渇した世界を作らなくても」


「別の空想世界を作れるか、できるかどうかで言うなら、可能だ」


周りがどよめいた この場に居合わせるものの中ではそれが知りたかったものも多い 豊かな土地を持つ世界 豊かな資源のある世界 それを創造できるのではあれば、そこに移住することも検討に入る 冬の技術は確実に世界にとって最重要技術になっただろう

理想の大地(テマ・スト・リオル) それを夢見るものは多い


「だが、今から別の世界を作るとリソースの奪い合いになってしまうから俺はやらない」


「リソースの奪い合い?」


「この空想世界はただで存在してるのではない 空器ブランクと呼ばれる、人がほとんど知覚していないほどの微小な存在エネルギーを用いて、存在を肥大化させている 世界のアップデートが終われば、在核が生成され、自分で存在を維持できるようになる」


「空器とか、ふかしすぎやろ」

鼻で笑う若者 そんな理論上は存在するかもしれないエネルギー源など空想小説の領分だ


「ならどうやってこの世界が実在できてるのか、あんたには説明できるのか?」


「…」

押し黙る青年


「わからないなら無駄に口を挟むなよ 見てもわからない奴は説明してもわからない それでも理解したフリがしたいなら、こう考えろ 俺が生まれた以前と、以後で、世界のルールが変わったんだよ」


もうその程度の認識でいいぜ

傲然と言い放つ冬に ひくりと頬をひくつかせる青年




「ザインクラフト自体が少し前までは空想小説の領分だったものだ 時代の流れについてこれないポンコツが口を挟むな 時間を無駄に使わせるなと最初に言ったはずだ」


冬は男の言を切って捨て、すなおに向き直る


「この世界にも規格が存在する その規格に合わせるように最初は小さなスケールから始める 次第に世界との調律を始め、世界は拡大していく その拡大が一定の範囲を超えたら、自己で存在の安定を図れるようになる」


「ここにいる奴らはこう考えてるかもしれない 自分だけの理想郷を、人の数だけ増やせる 無限の資源のある世界を 無理だ 世界は有限 リソースも当然有限だ 何でもできるわけじゃない 無茶な世界ほど莫大な存在エネルギーが必要になる そしてこの技術が各都市に流れれば、確実にリソースの奪い合いが発生する 自分達の理想の土地、理想の世界のための、奪い合いがね」


人の欲望に底はない できると分かってしまえば際限がなくなる そして壁にぶち当たる リソースの壁に 

そうなれば当然、邪魔な存在を排除する 

人類がずっとやってきたことだ 



「そん、な…」


「だから俺は他の都市に技術提供をするつもりはない そもそも俺に得るものもない話だ」


たくさんの裏切り たくさんの狂気 たくさんの差別 冬は世界に 人々に 何の希望も持っていなかった 

分かりあえるなんてのは、幻想だと


「それは勝手な話ではないのかね? 我々に許可もなく、このようなものを作って自分勝手だとは思わんのか? リソースとやらも無限ではないのだろう? 我々の資源を勝手に奪っている、ということではないのかね?」


「見えもしなければ扱えもしないものを、なぜお前らに許可を取らなくてはならないのか、理解不能だな そんなにほしけりゃそこらに落ちてる石ころでも舐めてエネルギーを抽出したらどうだ?」


「こ、小僧! 言わせておけば!」


「俺は存在劣化症の治療を受け持つことはあってもほかの技術に関して提供する意思はない そして治療枠は増やさない 俺は一人しかいない 誰を治すのか、それを選ぶのは 都市のトップ同士で調整することだな もっとも、黒金関係者を押しのけてできるかは、あんたら次第だけど」


あくまで俺は黒金関係者を優先するスタンスを取る 

この方が折衝もしやすい




「そういうことだ すなお女史 君が思うほど、都合よくできてない 俺も、この世界もね」


「……だからって、ほかの都市を敵に回すようなやり口をわざわざしなくても」


「なら人んちに勝手に上がり込んで、勝手に行動をしなければいいのでは? 頼んでもないのに勝手に来たんだよ 君等は 俺になんの連絡もなく、いきなりね それは、失礼なことじゃないのかな?」


「…ごめんなさい」


「周りの大人達も君くらい素直に謝罪できてほしいものだ」

感謝する奇天烈な奴は居ても謝罪は一切ないからね



「そうやって君はまた自分の殻に閉じこもるんだね」


話は終わった そう思った時に あいつは口を挟んできた ディラフトシュラッケン


「俺が俺の思い描く世界で何をしようと俺の勝手だ 輩が口を挟むな」


部外者ってのはどうしてこう口を出したがるのか 理解に苦しむ 俺がどこで何をしようと俺の勝手だ こいつらが勝手に騒いでるだけで、人に迷惑をかけてるわけでもあるまい

ましてやこいつは宇宙人 部外者中の部外者だ 他所の星の事情にガタガタ言いやがって 鬱陶しい



「できることが目の前にあるのに、君は挑戦をしない 自分の手の届く範囲のことだけやって満足? これからを想像しないのかい?」


「これからって?」


「未来さ」


未来… あまりにもぼやけすぎて、目をこすっても見えそうにない幻想だ


「それ、何かのネタか?」


「君は自分が未来を切り開ける可能性を持ってることに気づいていない それは誰かと協力する、ということを知らないからだ」



「そうですよ! ほかの都市とも協力して、それで技術をどんどん伸ばしていけばきっと 今の状況も解決できます!」


すなおさんは本当にまっすぐ育ったのだろう 

きっと周りの人間から愛されて生きてきたんだろうな 

愛されるのか当たり前で、愛すことが当たり前 

俺にはあまりにも遠すぎる世界だ


「その場合、確実に戦争が起こるけど それでいいの?」


「……どうして、そう、後ろ向きなことばかり言うんですか?」



「後ろの連中をみてみなよ 血に飢えた野獣のような目でこちらをみてる 互いが互いに牽制しあってる 誰が今後の世界の行く末を握るのか、探り合ってる 自分が、自分が、自分が、 俺もそう みんなそう どうやって、信じられるんだい? その未来とやらを」


冬の瞳はどんよりとしていて、あまりにも底がしれない


その虚空に飲まれてしまいそうで、すなおは怖かった


皆が皆、己の今後の行く末に想いを巡らせている状況でも事態は動く 動いて、しまう


ディラフトがまた何かを言おうとしたその時に

サイレンが響き渡る 町の刻紋が危険を知らせる

冬の顔つきが変わった


「ディラフト 皆をこの世界から退避させろ ここは戦場になる」


驚愕の事態 冬の懸念は形を伴って具現した


「我々は解放軍! 決起の時だ! 我々は我々の尊厳を取り戻す! 我に続け!」


女性の声が町中に響き渡った 内乱が今、始まろうとしている

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