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第十四話 湖の帝王【サラマンダー】⑤


「フゥー」

 陰陽の極から渡された呪符を受け取った。彼は式神『八咫烏』を出現させている。

(勝負は一瞬、一度切り。失敗すれば……)

 死。打つ手は無くなる。良いリスクだ。俄然ヤル気が増してくる。

「ダァ!」

 跳ぶ。焔をバネとした推進力は湖の帝王(サラマンダー)までとの距離を消し飛ばす。

「来るか!」

 湖の帝王は迎え撃つ。高度は変えず、術式を展開する。

大気の霊よ、邪を払え(イ・ランディ・アマナ)!」

 黒い風が斬利を捕えんと迫る。正面、左右の合計三つ。本来なら回避を選択する場面で、彼は──

「そのまま行け!」

 黒い風が3匹の八咫烏に触れた。肉壁となったそれは、風を殺し消え去る。

 剣を叩きつけ──

三日月の太刀(ムー・サラー)!!」

 必殺を叩き込む!

「グッ!」

 湖の帝王は回避を取らない。ガードを選択した。ドラゴンの翼を盾に破壊の斬撃を止める。擦り傷がついた。異常な防御力。そんなの、わかっていた。

紅蓮の焔よ、燃やせ(ファイム・フラット)!」

 自身をも燃やし尽くす焔が2人を囲んだ。湖の帝王にも点火したそれはドラゴンの翼であっても防ぎきれない。焔が皮膚を焼き尽くす中、それでも、ヤツは笑っていた。

「だが、無駄だ。焔如きが我が肉体を焼き払えると思うな!」

「……分かってるよ。人工的な焔じゃこんなもんだ。決定打になりやしない。でもな──」

 呪符が発動する。五芒星が小さく光り、そこから三本脚の烏が出現した。

(八咫烏だ! これなら……)

 八咫烏は彼の腹目掛け一直線に突き進む。この間合いだ。刹那と無い。

「また八咫烏か。芸が無いな!」

 湖の帝王はもう片方の手で極小の竜巻を創り出し、八咫烏にぶつけた。粉々になる八咫烏。呪符に戻り、術式は消え去る。

「──勝ちだ」

 その瞬間、

「俺のな!」

 呪符に描かれた()()()()()()()()()()()、その本来の姿が露呈した。

「何!? 術式の二重化だと!?」

 呪符の上書き。本来書かれていた効果とは別の効果が先ほどまで発動していたものだった。

 なら、本来の術式は?

 上書きした術は『八咫烏』。なれば、下となった術式は?

 この局面、斬利は最も有効で、信用できる術を放つ。その術は?

 刹那の思考が答えにたどり着いた。その瞬間、

 

「「三日月の太刀(ムー・サラー)!」」

 

 同時に術式を叫んだ。

 最強の斬撃は右手を打ち抜き、勢いのままに胴を切断した。

「斬利ィィィィィィィィィ!!」

 落ちる下半身。湖の帝王。ヤツは暗闇の火(ハーラク・サモーティ)とは違い、不死性が存在しない。

 つまりは、致命傷だった。

「はー、まだ、終わらぬ!」

 だが、まだ死なない。不死性が存在しないだけで、その生命力は化け物のそれだ。

「人類の過ちは、儂が断ち切る!」

 翼が剣を弾く。ガラ空きになった胴体に、湖の帝王(サラマンダー)は全身全霊全力を込めた一撃を放つ。

「ハァァ!」

 胸をぶち抜かれた。同時に斬利の意識が飛んだ。

 

 拳一個分の巨大な孔を空け、湖の帝王(サラマンダー)は、()()()()

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