第十三話 湖の帝王【サラマンダー】④
「伝う波は、死を超えて」
巨大な津波が彼らを襲う。先ほど斬利に放った『救いの水よ、潔め給え』の様にホーミング性能は無いものの、その規模が桁違いだった。上下左右、逃げ場は無い。かと言って、堰き止めようにも威力を殺しきれない。
「チッ」
バックステップで退がる斬利に対し、陰陽の極は一歩も引かず、呪符を五枚投げつけた。
「反せよ、黒き泥」
(呪符の同時使用!?)
それも5枚。そもそも呪符を使える異獣混人がごく僅かなのに、同時使用が可能なのは更に一握りだ。サハラ砂漠から砂金を掘り当てる方が確率が高いぐらいだった。
「小手先だけでは仕留めきれぬか」
津波と黒い泥の波が激突する。その二つが激突した瞬間、激突した部位が消滅した。
「おお!」
「遅い。っと!」
不意打ちを狙った一撃を躱される。完全な死角からの一撃をいなしつつ、『大国主』による木槌の大振りを受け流す。
「くく、やはり現存する式神の中で最強と謳われているだけある!」
昂ってきたのか、数トンはあるであろう木槌を掴み、
「斬利、喰らってみるか!?」
大国主ごと、斬利めがけ木槌を投げ飛ばした。落下中の彼は剣を地面に向け、
「伸びろ月の導き!」
数メートル剣先を伸ばし、無理やりブレーキをかける。大国主が飛んでくるのに気づいたのは、この瞬間だった。
(マズ!)
重い一撃を貰い、吹き飛ばされる。吹き飛ばされたのを認識した彼は、ワンテンポ遅れて術を放つ。
「封!」
陰陽の極の声が響いた。その瞬間、急速に突っ込んできた式神が、元の呪符へと変化していた。
呪符を拾った斬利は気づく。
(紋章が消えた?)
と、
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」
駆け寄った陰陽の極。斬利の身体に回復用の呪符を貼り付けた。効果は微量だが、異常な回復力を持つ斬利には十分だ。
「同時に仕掛けたい。肉弾戦を持ちかけるぞ」
無限に発生する竜巻から逃げつつ、作戦会議をする。時々斬利が攻め、陰陽の極が呪符で守る。攻守一体。意外と相性がいいらしい。
「バカ言うな。我は近接戦闘が苦手だ」
「嘘つけ!」
「本当だ。そも、銀狼に特殊能力は無い。幾ら2対1だとて、纏めて潰されるのがオチだ」
実際本当なのだろう。式神をメインとした呪術で戦っている。この戦闘では、近接戦闘を行なっていない。
「じゃどう……なぁ──」
「どうした?」
何かを思いついた斬利。作戦内容を話す。聞いた陰陽の極は少し黙り込み、
「──可能だ」
解答を示した。その言葉にニヤリとなった斬利。と、
「囲めよ、囲めよ」
彼らを水のサークルが囲んだ。指示に従い、中心に集まった。サークルは自然に消滅した。
「やるぞ、陰陽の極!」
「うむ!」




