第二十九話 剣
──爆音と共に瓦礫が降り注ぎ、学園都市の空を黒煙が覆っていた。
アルベルム学園を破壊しているのは、巨大な魔法兵器ゴーレム──その姿は金属やコンクリートを中心の魔石コアに集積させた、まるで廃材の怪物のようなものだった。
「……やっぱり、ファリアを使った魔法兵器は効かない。全部、コアに吸収されてる!」
煙の中、クレセルイ・クアトルムは蒼い瞳で敵を見据え、手にした魔導銃が無力だと判断していた。
隣にいたルーナリアが、ぽつりと呟く。
「……アルベルム学園が……」
自分がもっと早く、ベルセリールの話に耳を傾けていれば、こんなことにはならなかったかもしれない──そんな後悔を押し殺す。
そこへ──
「クーちゃん!」
風を切って現れたのは、黒のドレスを翻す少女。飛竜から軽やかに飛び降りたその姿に、クレセルイの目が見開かれる。
「ベールちゃん!? なんでここに……!」
「こう見えても、乗竜免許は持ってるんだよ?」
いたずらっぽく笑うベルセリールの登場に、クレセルイは思わず声を漏らす。
「……凄いな、ベールちゃん……」
「クー! お姉様! そんな話してる場合じゃないよ!」
ゴーレムへと視線を戻す三人。ルジエール軍も応戦していたが、魔法兵器が通じない状況では劣勢だった。
「あいつを倒すには、中心のコア──デスファリアを破壊するしかない。でも、あれは全てのファリアを吸収する……物理的衝撃も通じない、破局石製だし……」
刻々と変化する魔石の色。紫が濃くなるたびに、危険が迫る。
「……爆発まで、あと五分もなさそうだ……!」
クレセルイは必死に策を練る。その時、ふとベルセリールの首元に輝く“吸収石”が目に映った。
「……吸収石……! あれなら、破局石より硬いかもしれない……」
ルーナリアが目を見開く。
「クー! 以前クーがナルシアで作っていた、あの剣ならいけるかも!」
「……でも、相手はデスファリアだ。ファリアを吸収されてしまう危険が──」
「そこよ、クー! お姉様のファリアの性質を思い出して!」
その言葉に、クレセルイの表情が一変する。
「……そうか……以前、実験でベールちゃんのファリアをデスファリアに近づけた時……逆にデスファリアを“浄化”させて元のファリアに戻ったんだ……!」
「え、クーちゃん達ってもしかして……私のファリアで実験してたの!?」
「うん。結果が凄すぎて、誰にも言わなかったけど……」
「……とりあえず、クーちゃん。私がその剣でコアを突き刺して、ファリアを流し込めば……」
「うん……破壊できる可能性はある! でも、ベールちゃんにそんな危ないこと──」
「危ないとか関係ないでしょ。放っといたら、ここにいる人、みんな助からないんでょ?」
ベルセリールは迷いなく、ルーナリアにも視線を送る。
「クー、やるしかないわ。あの剣、どこ?」
「ナルシアの研究室の奥──巨大な吸収石を削って作った剣、《クリスフェリオン》がある!」
三人は瓦礫を縫い、破壊を逃れた研究施設へと駆け込む。
そこに置かれていたのは、無色透明な大剣。その重量は六十キロを超える代物だが──
「この剣は吸収石製。ベールちゃんのファリアを吸って同調すれば、“羽のように軽くなる”はずだ」
ベルセリールがその無色透明な剣の形をした吸収石の塊に触れると、それは青色のまるで夜空の星のように輝いた。
「きれい……」
「凄い……まるで星空だ……」
その光は、確かに希望の色だった。
「……でもベールちゃん。この剣は首の吸収石と比べものにならないほどファリアを消耗する。無理は絶対にしないで!」
クレセルイの警告に、ベルセリールは片目を閉じてにやりと笑った。
「まかせて。私があのゴーレムのコアに、この剣を突き立てればいいんでしょ!」
その時、彼女が乗ってきた飛竜が再び姿を現す。
「あれ!君は……乗せてくれるの!?君わかってるねー!」
飛竜に飛び乗ったベルセリールが、空へと舞い上がる。
一方で、クレセルイとルーナリアも地上での迎撃に動く。
「お姉様が接近しやすくするため、ゴーレムの注意を引くわよ!」
「うん、僕たちが足止めするんだ!」
──こうして、決戦の幕が上がった。
もう少しで魔石事件も解決です!
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