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偽りの鏡  作者: あとかん
5/8

ワンモア

まーたお前らか。この森体感七割で狼と遭遇するんだよなぁ…。

右手に持った片手剣を地面と並行にして引き、足に力を溜めて


ドッ


大地を蹴った。身体が一匹の狼の下へ駆け出す…互いにぶつかる状況。度重なる戦闘によるレベルアップで強化されたステータスが生きてきてこれまで戦った戦闘の経験、脳内の動きを実現させる。

ここで跳ぶ!相手も跳んできたが、俺の方が"上"だ。

宙で前転し、前方への慣性も乗せた攻撃が狼の体を両断した。俺はそのまましゃがみ、剣を地面に突き立てて両足で地面に着地する。


「まずは一匹!…前方に二匹、どうしてやろうか…っとその前におまえだなぁ!!」


後ろ回し蹴りを後ろに来ていた狼に命中させる。

目で視るだけじゃあ四流だよなぁ!!

怯んだ狼の首をすかさず刎ねる。


「…二匹。」


血が飛び散り、顔に付着するが無視して二匹の元へ走り出す。敵も走り、一匹は爪を振るおうとし、一匹は噛みつこうとする。俺は一匹が噛みつこうと口を開けた瞬間、剣を口に目掛けて前に突き出す。…と同時に「【巨大化】」を使う。

スキル〈巨大化〉……その能力は体と装備が大きくなるというもの。熟練度が上がるとより大きくなり、クールタイムが短くなる。大きくなる倍率は今は1.5倍くらい。大きくなればその分膂力も大きくなるし、リーチも伸びる。しかし、今回重要なのは過程だ。〈巨大化〉は瞬時に()()()()()に大きくなる。これがどう重要かというと

狼の口の中に入った剣が大きくなり口が裂け、同時にもう一匹の狼が振るおうとした爪が勢いが着く前に大きくなる俺の脇腹に食い込み、膨らむ事で弾かれる。


「三匹目!」


つまり俺が重要だと思うところは、膨らむ力による攻撃への転用と敵の攻撃の威力の減衰だ。



…首刎ねて終わりと。

「四匹目。」

《戦闘に勝利した》

《種族レベルが上昇!SPを獲得した》

《職業レベルが上昇!SPを獲得した》

《条件を達成した!〈跳躍〉が取得可能です》

《〈付与魔法〉の熟練度が一定に達した!【ディフェンスアップ】【マジックディフェンスアップ】を覚えた》


すました顔で言うとアナウンスが脳内で鳴り、目の前にログが画面として出る。顔の血が光になっていくのを肌で感じながら確認していく。

12レベおめでとう!…で?〈跳躍〉スキルね……まぁ取得しておくか。

一定の条件下でスキルが取得できるようになるらしい。そして取得するにはスキルごとに指定されたSPを払う必要がある。SPはSP(ステータスポイント)SP(スキルポイント)両方の性質を持つ…ってことだ。ちなみに今回〈跳躍〉の解放に必要なSPは3だった。あと実は〈盾術〉スキルを既に取得できるようになっていたのでもう取得してたりする。盾は使ってないが剣を盾として使ってたからだろうなあ…おつかれ。

俺は天に向かって敬礼する。…木であんまり見えないが始まりの片手剣くんも天国で笑ってくれているような…そんな気がする。


熟練度が一定に、ねぇ…こういうゲームで解放するにしては少し遅すぎではないか?毎戦闘使ってるんだけど…、性能は【アタックアップ】と【マジックアタックアップ】の防御版かな?だとしたら…


「強いな。」


思わず少し声が漏れてしまう。

肉を切らせて骨を断つ的な俺の戦術とも噛み合ってるし現状MPは【アタックアップ】専用だから余裕がある。もう既にあの狼のボス (たぶん)に勝てそうな気がしてきた!


「どこだーーー!!!!」


俺の声がこだまし、木々が騒めくように揺れる。なんか鳥さんがパタパタと飛び去ったような気もする。

よし、これくらい叫べば寄ってくるだろ!



全く敵がこないぞ?ふーむ、威嚇になってしまったか、それとも……まあ大丈夫か。何だろうと俺が勝つ!!

前方を指差し確認し、俺は森の奥へ向かって歩き出す。



…あ、いい感じの草発見。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


…何このバケモノ!?ほぼAGL極振りなのにどうして私より速いの!?お兄ちゃんもその友達もこのバケモノに食い殺された!私死にたくない!!…もう二度と!!

まずはコイツがなんなのかわかんないと!……なんもわかんない!!なんかずっとぼかしがかかったシルエットだし…たぶんオオカミなんでしょうけど!!親近感湧くし!!お兄ちゃんが言ってた通りなら影を使ってくるみたいだけど絶対それだけじゃ説明がつかない!!とりあえず振り切らないと!


プレイヤーが孤独に、駆け回り逃げていた。そう、同じところを周るように逃げていた。振り切りたいならそのフィールドから出ればいい、そんなことは彼女も分かっている。…ではなぜか?彼女は恐れているからだ。バケモノと呼び、逃げ回っているものではない…モンスタートレインにより人の迷惑になることを。それは彼女が強く恐れている死よりも優先されるものだった。


無理!キッツイよ!!〈疾走〉で誤魔化してるけど限度ががあるよ〜!


慣れてないであろう森をもたつかずに器用に走りうなり声をあげる、そんな彼女は半泣きだった。それは敵が彼女よりも速いからだけではない、敵が彼女との直線上にある木や足下の段差などを全て無視して追いかけて来るからでもあった。


直線だったらギリこっちに分がある!…でもぉそれはちょっとぉ!!



敵との鬼ごっこから20分、少しずつ離れていた距離が急激に縮まる。彼女…「居ぬ」が木の根に足を引っ掛け、つまずいてしまったのだ。体勢を立て直すが後ろからは既に敵の爪が迫ってきていた。だが間一髪、瞬時に体を捻り地面を転がることで攻撃を躱すことができた。しかしまだ脅威は去っていない、彼女は敵のその巨体の周りをぐるぐると周り始めた。逆に、…というべきか功を奏す。敵は遠吠えをし、影から槍を射出するが自身の巨体で狙いが定まらず周りの木に刺さっていった。


ぎゃー!!なんか生きてる!!たまたま生きてる!!なにかどれでも当たったら死ー!!てゆーかオオカミ!普通にオオカミ!誰かへるぷー!!


そんなことをしていると狼もぐるぐると回り出し、突如バランスが崩れたのか横に倒れた。居ぬはチャンスとばかりに街の方へ後方の倒れた狼を見ながら走って逃げ出す…少し離れると突如として倒れていた狼がふっと消え、目の前の地面…影から狼が飛び出でて、爪が彼女の眼前に迫る。しかしその爪は


ドオン


空からの落下物による轟音と土煙によって掻き消えた。彼女は衝撃によって吹き飛び体が転がる。立ち上がるとその土煙には一つの人影があった。


「会いたかったぜぇ狼さんよぉ、リベンジといこうじゃな…い…か……あれ?なんか色々違くない?」

居ぬ:????????????????????

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