遅きに失する
少し遅めの夕食を食べ、自室に戻る。
風呂よし、ご飯よし、トイレよし、ペットボトルよし、VRゴーグルよし、ソフトよし!まさか、5年前に買ったVRゴーグルを使う日がまた来るとはなぁ。このVRゴーグルはStart Re:2、通称【星鳥】。これで、Endless Chronicle Online、略して【ECO】を遊べるらしい。
「さて、ちょっと早いがログインするか。」
現在時刻23時、サービス開始まであと1時間で始められないが、設定は出来るらしい。設定中は三倍の時間を過ごせるのか気になるな。
そうして、俺は久しぶりにVRゲームをするのだった。
『この魂はあなたであり、あなたの全ての可能性。まずは姿を与えてください。』
淡い白色の球だけがある空間で、無機質な女性の声が響き、ウィンドウが表示される。
キャラメイクの時間だ!まずは容姿決めをするらしい。見た目は…現実の俺ベースでいいか。髪に青入れて、目は黒くしよう。…うぉっ身長も変えれるのか。俺の身長は172cmで十分な高さではあるのだが、欲を言えばあと10cmは欲しかったんだよな。戦闘的には身体は小さい方が攻撃が当たり辛いとかあるのだろうが、デカい方が強そうに見えていいのだ。
『次に才能を与えてください。』
次は職業(才能)を決めだ。職業によってステータス補正や、覚えることのできるスキルも変わってくるみたいだ。
「多すぎんだろ…。」
スクロールに要した時間、およそ7秒。マイナーチェンジはほんの少ししかないのが怖い。戦士や魔法使いなどのメジャーな職業、アルバイトや飛脚などのネタっぽい職業、囚人や生贄などの地雷そうな職業。他にはあまり意味のなさそうな職業もかなりある。なんだよ愛妻家って、もはや職業と関係ないよ。
ゆっくり見てもいいけどサービス開始と同時に始めたいんだよなぁ。視界の右上の時間表示を見る限り、普通に時間過ぎてるしそんなに悠長してられない。
「俺は真面目にやるか。」
アイツのことだし、面白職業選ぶだろ。
俺は傭兵を選んだ。理由は簡単、戦闘系の職業でありながら、金を稼げそうだからだ。
『次は力を与えてください。』
今度はステータス割り振りと、スキル決めをするようだ。ステータスはスキルを決めてからにしよう。スキルもかなりの数ある…が、職業の数の方が多いスキルは5個まで選べるが、職業は一つまでなのになんで?????力入れるところ間違ってますよ???
よし、一旦切り替えよう。
勉強ができるようになるスキルは…さすがにないかな。じゃあそれに近いスキル……、いや俺は何を理由にしてこのゲームをしようとしている?勉強は確かにそうだ。でもそれじゃない根本がある。昔、ゲーム始める理由なんて友達に誘われたからくらいしか無かったはずだ。ゲームを遊ぼう。俺が勉強をやる理由はいくらでもあるが、俺はゲームをやる理由をつくらなくなった。アイツが誘ってくれたんだ。しっかり遊ばなきゃな。
「次に名前を与えてください。」
《フィアレス》っと。
決定を押す前にステータスを一度確認する。
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《no name》
種族
職業 傭兵 Lv1
HP 100/100
MP 50/50
STR 0 → 15
VIT 0 → 10
INT 0 → 5
DEX 0 → 5
AGI 0 → 10
LUK 0 → 5
SP 50 → 0
共通スキル
〈翻訳〉〈????〉
一般スキル
〈剣術〉〈付与魔法〉〈偽装〉〈探知〉〈巨大化〉
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戻って設定をやり直す事が可能だったので傭兵を変えようか悩んだが、まぁ一期一会か。そんなことより巨大化のスキル!!でけぇのはつえぇんだって。共通スキルは初めからあった。種族が空欄なのはこの後選ぶから…
あれ?今何時だ?
0:10
俺は焦り、決定を連打する。
まだまだ設定があったが詳細は見ず決定を連打する。何か話しかけられている気がするが、早く終われという感情に囚われなにも頭に入ってこない。『Endless Chronicle Onlineの世界へようこそ』のテキストメッセージが浮かぶ。俺は光輝に連絡を入れる準備をする。そのとき、一瞬の浮遊感の後に視界に西洋風の街並みが入る。俺はとりあえず走り出し、連絡を入れる。
『俺なら広場の噴水にいる。名前はヒカリ。』
連絡は一瞬で帰ってきたがずっと嫌な予感がしている。そうしてひらけた場所に出る。そこには噴水があった。
「おーい!ヒカリいるかー!」
「いるぞー!」
集まっている6人組の中から声がした。俺は走って向かう。その時、気づく。
「…まさか。」
このゲームのパーティの最大人数は6人。
頭の上にヒカリの文字を浮かす親友が言う。
「ごめん、席無いわ。」
「ど゛う゛じでだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」
膝から崩れ落ち、俺は慟哭した。
この世界では涙は出ないようだ。




