前日にて
キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴り、俺は友達と一緒に下校する。
「なぁサク!『夏休みだからって浮かれてないで勉強するように』だってよ!高校一年の夏から勉強するやつを探すの難しいなんて先生も分かっているだろうになあ。」
「いや俺は勉強する予定だぞ。」
「ぜんげんてっか〜い。くそ簡単だったわ。」
この勉強をしようとしている奴は五十嵐朔夜、俺だ。そして、この適当な会話をして来るのが、親友の坂巻光輝。顔が良くて、俺より優しい。そして何よりバランスがいい。
「本当お前変わったよな。」
「何が?」
「サクがいいならいいけど。で、顔色悪いぞ。昨日も勉強とバイトだろ。詰めすぎると早死にするぞ。」
俺の頭に血がのぼり、足を止めて光輝のシャツの襟を掴み上げるが、その直後はっとなり手を離す。
「す、すまん。」
「早い、早過ぎるぞー。俺の想定より、サラマンダーよりずっとはやい。」
焦る俺は一度呼吸を整える。
「すまん。」
「謝罪は一度で十分だ。それにしても、お前がそうなってから怒るの久しぶりに見たわ。」
「そうだな。…俺疲れてたんだな。体力は多い方だと思ってたんだが。」
「とりあえず、ゲームするか寝るか選びな!」
「その二つから絶対に選ばなきゃダメか?」
「二つから絶対にだ。」
「ゲームで。」
「その返事を待っていた!」
光輝は笑顔で指をパチン☆と鳴らす。
「でさ、これは強制じゃなくて提案なんだけど、『Endless Chronicle Online』ってVRMMOが明後日サービス開始するんよ。遊ばない?」
6年前フルダイブのVRゲームが開発され、今では主流になっているVRゲーム。6年前から流れを追っていた者としては感慨深いものがあるが、最近は光輝との会話からしか情報を得ていないので、あまり把握できていない。
「詳細を知りたい。」
「まず、『三種の人戯』って言う小さな会社が開発・運営しているらしい。で、プロゲーマーのニシン氏がβテストをして『すごく…リアルでした。』ってべた褒めしてたんだ。そこで気になってサイトでプロモーションビデオを見て予約したってわけ。一旦見た方がいい。」
そう言ってスマホの画面に映し出されたPVを俺に見せてきた。広大な大地と海、綺麗な森林、NPCとの会話、魔物との戦闘、アイテムの生産。内容はありふれたものだったが、リアルだった。現実世界と見間違える程に。
「なんだこれ。」
「でしょ!なんだこれなんだよ!特にNPCがなんだこれ?本当になんだこれ??」
「おい、なんでお前が困惑してんだ。」
光輝の頬を軽くペシャッと叩き、正気に戻す。
「そうそう、なんでこのゲーム誘ったかって言うとね、できそうだと思わない?勉強。」
「いや勉強できるVRはこれまでにもあったろ。てかホームでもできるし。」
「そうなんだけどなんとこのゲーム、ゲーム内で3日経つときに現実では1日しかたっていないんです!いっぱい勉強できるね。」
「は?やば。実質寿命3倍じゃん。何円すんのこれ?」
俺が光輝の方を見ると指を一本あげていた。
「十万?」
「高すぎだろ一万だよ。正確にはもうちょいするけど。」
「時間はもっと高くてもおかしくないだろ...。」
「買う?」
「買います。サービス開始はいつ?」
「2日後、正確に言うと7月23日0時00分00秒に開始する。」
俺その日シフト入ってる〜。困った。16時から22時までだから12時間のロスだ。
「どこで予約した?」
「なんと、…もうサクの分まで予約してます!!」
「はぁ〜、好き。優秀すぎ。」
「まぁ、未来見えてますから。」
「その冗談好きだねー。」
「おーい。」
直後、後ろ知った声がしたような気がした。
何処かで聴いたような…家か?テレビか?学校か?そういえば学校で光輝以外で誰かと話したな…。あ、
「「やべ。」」




