3話
あたしは公衆電話を探し出して、その番号を押した。
昨日知った事実を伝えるべきだと思った。
そしたら、その犯人が捕まるんじゃないかって・・・
すがるような思いで受話器を手にした。
『はい、國島です』
國島刑事の声が聞こえ、思わず受話器を耳から外してしまう。
けど、ここで切ったらダメだ。
『凪那・・・です』
『凪那ちゃん!?どうしたの?』
驚いた様子の國島刑事に、少しだけ嬉しくなった。
『國島刑事に話しておきたいことがあって・・・』
そしてあたしは、昨日幸子に聞いたことを全て話した。
『そういうこと何だけど、警察はこんなことも掴んでないの?』
『それがね・・・』
『わかりました。調べといて下さい』
國島刑事の話しによると、銀行員に話しを聞いたところ、一人の少女が金を奪って、店の外で仲間と合流した。
としか、言わないらしく、警察も疑問点はあったが、それを信じてあたし達をマークしたそうだ。
犯人が口封じをして、あたし達に罪を被せた。
それが國島刑事の推測だ。
國島刑事は上の人にこの事を伝えるって言ってくれた。
もう心配はないよね。
いつもより多めに買い、皆が待つ工場へ向かった。
だけど、かなり走ったようで、工場からは距離があった。
『荷物持ったから走れないな・・・』
溜め息混じりに言うと、少し足を早めた。
工場が見えてくる頃には、夕焼けが出ていた。
皆お腹空いてるだろな。
安心しきったあたしは、そんな軽い気持ちでいた。
けれど、工場の中に入ると、そんな気持ちは一変した。
中には誰もいなかった。
『何で?』
思考が停止した。
何で、皆・・・
ここがバレるわけないのに・・・
工場を見渡しながら歩いていると、隅に紙が落ちてるのが見えた。
それを拾い上げてみると・・・
みつかった。逃げる。お前も一人で逃げろ
書きなぐったような字が残されていた。
皆・・・逃げれたのかな?
突然不安が襲いかかってきた。
皆・・・
でも、國島刑事が言ってくれたはずなのに・・・
ピーポー、ピーポー
そんなことを考えていると、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
『何で・・・』
『姫縞凪那だね。一緒に来てもらおうか』
『嫌、何で・・・』
中から数人の男性が出てきて、皆少し警戒したようにあたしを囲んだ。
『何で?強盗しただろ。さあ、来なさい』
男はわざとらしく、優しい口調で言った。
『あたしじゃない・・・國島、國島刑事は?』
その問いに刑事さんは答えなかった。
『柏木さん・・・』
後ろから女の刑事が、何やら男に話しているが、そんなことも視界に入らないぐらい混乱している。
裏切られた?
はめられた?
『そんなはず・・・そんなはずない。國島刑事は・・・あたしを・・・だって』
頭を抱えながら、ブツブツ話すあたしに、刑事達は皆哀れみの目で見つめながらも、警戒はしている様子だ。
『國島刑事・・・』
何度も呟きながら、ある物に視点を合わせる。
『そっか・・・あたしは結局、誰にも必要にされないんだね』
涙を溢すと同時に、素早く柏木と呼ばれていた刑事の拳銃をとる。
『貴様!!』
慌てて取り返そうとする柏木だが、それよりも先に拳銃を自分のこめかみに当てる。
刑事が全員一歩下がり、柏木の変わりにさっきの女の刑事が出てきた。
『銃を下ろしなさい』
『どうせあたしのこと何か・・・死んだって誰も悲しまないよ』
涙で視界は歪んでいた。
目の前に家族が見えた気がして、あたしは笑顔で引金を引いた。
やっと皆と一緒にいられる・・・




