最終話
『お父さん、お母さん、誠・・・これからはずっと一緒だよ』
『凪那ちゃん。凪那ちゃん・・・』
誰かが呼んでいる。
誰?
あたしはずっと家族と話していたのに、邪魔しないでほしいのに・・・
『凪那、いってきなさい』
『お母さん・・・』
『お姉ちゃん、いってらっしゃい』
『誠・・・』
何で皆そんなに笑顔なの?
『お父さん・・・』
『凪那、お前は何も心配しなくていい。いってきなさい』
『うん』
何で家族はこんなに温かいんだろう?
でも、温かい家族はもういない・・・
『凪那ちゃん。凪那ちゃん』
誰・・・
あたしを呼ぶのは誰?
『凪那ちゃん。良かった・・・本当に良かったよ』
『くにじ、ま・・・刑事』
あたしは・・・
『生きてる・・・の?』
『ああ、君は生きてる。君はここにいる。だから、もう二度とあんなマネはするな』
國島刑事の手は震えていて、逸らした顔にはきっと涙が流れていたと思う。
『でも・・・あたしは、犯罪者。どうなったっていいでしょ』
『君は、君は犯罪者じゃないよ。確かに君が金を運んだのは事実だ。だけど、君達ははめられたんだ』
國島刑事は・・・
『でも、貴方は裏切った』
自分の胸に秘めてる感情が全て出てきそうで、少しだけ心の距離をおいた。
『あれは・・・すまない。君からの電話を貰った時には、既に僕は上層部にマークされていたんだ。だから君との会話も聞かれていたし、そのことを信じようと、否・・・聞き入れようとしなかったんだ。すまない。君を守りたかったのに・・・』
『守りたかった?』
どうして、あたし何かを・・・
それに・・・
『どうしてあたしは生きてるの?』
『君はずっと眠っていたんだ。一年間も・・・何度も手術を繰り返して、ようやく今意識が戻ったんだ』
一年もずっと眠っていたんだ・・・
その間ずっと國島刑事は・・・
『國島刑事はあたしのこと、最後まで信じてくれた。そうなんだね』
『まぁ、あぁ、そうだな・・・』
國島刑事は恥ずかしそうに言った。
その仕草が余計に嬉しかった。
あたしを心配してくれている。あたしを大切だって思ってくれる。そんな人があたしの前に現れた。あたしは生きてていいんだね。胸をはって生きてていいんだよね。
その後2ヶ月後に、あたしは退院することが出来た。
一緒に逃走した仲間達は、一度は少年院に入ったものの、真犯人が見つかったことで、数ヶ月で出してもらうことが出来た。
お互いに名前しか知らなかったあたし達は、それから先一度も会うことがなかった。
きっと皆それぞれに新しい道を歩んで、過去には振り返りたくなかったのかもしれない。
だけど、確かにあたし達はあの時とても楽しかった。
あの感情だけは誰も忘れることがないだろう・・・
あたしはそれから、刑事を目指す為に一生懸命勉強した。
いつか國島刑事と渡り歩ける日が来ると信じて・・・




