2話
ようやく振り切った時には、愛とは離ればなれになっていた。
結局一人なのかな・・・
あたしはどうして逃げているんだろう?
あたしは捕まりたくないのか?
でも、どうだっていいはず・・・
だって、あたしは・・・
それから何日か、一人で歩き続けていた。
盗んだお金を皆で別けた分もあり、自販機で養うことが出来た。
『凪那ちゃん』
『あっ・・・』
國島刑事でも、刑事は刑事だ。
『さすが、昔は陸上部なだけあって、速いな』
何だか追いかけっこをしてるみたいで、楽しくなった。
弟がよくあたしを追いかけてきて、あたし逃げてばかりだったな・・・
『あたしに追いつけますか?』
楽しげに挑発しながら、走り回る。どうしてこんなに走れるのだろうか?
しばらくすると、もう追いかけてくる気配はなかった。國島刑事もおじさんだな。
笑いながら歩いていると、一番身長の小さい女の子とあった。
『あっ、良かった。ずっと一人かと思った。あたし沙希。あなたは?』
『凪那』
こんな純粋そうな子が、何でここにいるんだろう・・・
『ねえ、凪那ちゃんはどうしてここに来たの?凪那ちゃん優しそうなのに・・・』
常に微笑を浮かべている沙希。
まるで自分の心を隠しているかのように・・・
『あたしは・・・誰かに相手にされたかった・・・かな?』
自分にも問いかけながら言うと、沙希は微笑んでから、こう言った。
『そうなんだ。そんな理由なんだ・・・』
沙希は安心したような、落胆したような顔をした。
何を期待し、沙希は何故ここに来たのか。
聞きたかったけど、聞けなかった・・・
『この世の中。だから犯罪者が多いんだよ』
今度はとても悲しげに、ぽつりと呟いた。
しばらく沙希と歩いていると、主犯の子と合流出来た。
『無事だったんですね』
おさげに眼鏡という、いかにも昔の学級委員長みたいな格好の子。
『あっ、あたし幸子っていいます。お二人は?』
『沙希と凪那』
名前を言い合うと、誰も口を開こうとせず、沈黙が続いた。
幸子が主犯だということが、あまりにも信じられないからだ。
『後は愛だけだね。何処にいるんだろうね・・・』
『それより何処かで休憩しない?もうずっと歩きっぱなしだよ』
『そうだね』
そう言って人のいない道を歩いて、何処か身を隠せそうなとこを探す。
しばらく歩いていると、工場が見つかった。
しかし・・・後ろから何かが来る気配がした。
きっと警察・・・
『二人は遠回りして、先に行って。あたしはその間警察と鬼ごっこするから』
少しだけ楽しそうに言うと、二人は不思議そうに顔を見合わせてから、頷いた。
二人が行ったのを見送ると、声をかけた。
『國島刑事ですか?』
『君はいつもすぐに逃げないけど・・・もしかして遊ばれてるかな?』
國島刑事は少しだけ嫌そうな顔をした。
『だって・・・至近距離からでも逃げる自信あるから』
あたしが自信満々に言うと、國島刑事は溜め息をついてから言った。
『君みたいな子がどうして強盗何かを・・・何か理由があるんだろ?僕に話してみて』
國島刑事はマダあたしのことを信じてるんだ。
きっと施設の奴等はこう思ってるだろ。
<とうとう問題を起こしたか>って・・・
誰もあたしのこと何か考えてくれなかった。
『理由何て・・・ないよ』
ただ誰かに見てほしかった。
誰かに叱ってほしかった。
あたしは大切な一人の人間だって、誰かに思ってほしかった。
『じゃあ、どうして強盗何かしたんだ?』
『それは・・・』
國島刑事はあたしのことをわかってくれている。
理解しようとしてくれてる。
『國島刑事みたいに・・・國島刑事は、あたしのこと好きですか?』
『へっ?何の話しだ・・・』
國島刑事は少し驚いた後、恥ずかしそうに言った。
何でそんな反応するの?
『冗談ですよ。でも・・・もしあたしが國島刑事のこと、好きだって言ったらどうします?』
どうしてあたしはこんなことを・・・
國島刑事のことが、好きなの?
そんなこと・・・
『大人をからかうもんじゃない』
國島刑事は我に返ったように、怒鳴り付けた。
あたしはそんな國島刑事の態度が気に入らなかった。
『つまんない』
吐き捨てるように言い、走った。
國島刑事は直ぐに追って来なかったのか。
後ろから人が来る気配はなかった。
そして工場に向かうと、中には三人いた。
『愛も合流出来たんだ』
『元々あたいはここに居たんだよ』
『そっか』
あたしは疲れたようにその場に座り込んだ。
『大丈夫か?』
愛が心配そうに覗き込んでくれた。
『しばらくは見つからねえと思うから、少し休め』
『ありがとう』
あたしは端っこに行き、身を丸めるようにして横になった。
疲れたんじゃない。
否、実際にだいぶ疲れてはいる。
でも、それだけじゃなくて・・・
少し眠っていたみたいで、皆も眠っていた。
ただ一人『凪那さん。あの・・・話したいことがあります』
幸子だけは起きていた。
『何?』
工場の奥に行き、小さな声で話す。
辺りは暗くなり始めていて、奥に行くとほとんど何も見えなかった。
『あの・・・皆さんが誤解してることがあるんですけど、実は・・・あの掲示板を書いたのも、お金を盗んだのもあたしじゃないんです』
『えっ?でも・・・』
確かにこの子があの時お金を持って・・・
『あたしが行ったら、ちょうど覆面をつけた男二人がいて、あたしにお金渡して来たんです』
『どういうこと?』
だって普通奪ったお金をこんな子供に渡すわけがない。
もしかして・・・仲間?
でも、それならこのお金誰にも使わせないんじゃ・・・
様々な疑問が渦巻く中、幸子は一言だけ言った。
『はめられた・・・』
はめられた?
それって、まさか・・・
嫌な予感がした。
背筋が凍るような・・・
『教えてくれてありがとう。もう寝たら』
『はい』
微笑みながら言うあたしに安堵したのか、不安そうな顔が笑顔になった。
あたしは不安で、朝まで一睡も出来なかった。
『あのさ、この場所しばらくはバレなさそうだからさ。皆今日はここで大人しくしててよ。あたしちょっと食料集めてくる』
『それならあたいも・・・』
立ちかけた愛を手で制止し、あたしは一人で外へ出た。
いつもよりも周りに意識を集中させて、歩いた。
國島刑事・・・
会いたい・・・
『って・・・あたしは、國島刑事のことが好きなの?』
足を止めて呟く。
誰に言うでもなく、自分に問うように呟いた。
『そんなわけ・・・』
そんな時、タイミング悪く後ろから足音が聞こえた。
電柱に隠れながらよく見ると、刑事だった。
何となく雰囲気でわかる。
國島刑事ではないことから、あたしは相手の足音に耳を傾けながらゆっくりと歩いた。
そして十字路になった所で、横の道に行き、走った。
他の刑事とは関わりたくない。
その想いを胸に・・・
あたしはひたすら走った。
もうとっくに刑事何ていないのに、まるで誰かを探しているかのように、走り回った。
そしてあたしは想いだしたように止まった。
080-9987・・・
昔國島刑事に教えてもらった携帯の番号。
一回もかけた事なかったのに、どうして覚えてるんだろう?
<家族のことで何か話せることがあったら、気軽に電話して>
初めて会った時に渡されて、それ以来会っていない。
そんな番号思い出す何て・・・




