1話
誰も信じられない。
誰も相手にしてくれない・・・
ある日あたしは携帯である掲示板を見つけた。
その掲示板には凄く共感出来る人たちばかりで、皆一人ぼっちの人だった。
しばらくその掲示板にいると、目をひく書き込みが入った。
<明日の正午みどり銀行で強盗をする>
あたしはその書き込みを見た瞬間。
胸が熱くなるのを感じた。
しばらく何も書き込まずに、掲示板を見ていると、皆あの書き込みには一切触れなかった。
きっと皆あたしと同じ気持ちなんだ。
翌日あたしは施設から逃げ出すようにして、銀行へと向かった。
あたしとほぼ同時ぐらいに数人の女の子が銀行の前に着いた。
何も言わなくてもわかった。
昨日掲示板で話した子達だ。
銀行に入ろうとすると、中から鞄を持った女の子が出てきた。
あたし達は重い鞄を皆で協力して持ち去った。
サイレン音がしていた。
警察・・・
『これからどうしよっか』
『こんだけあるんだよ?何だって出来るよ』
『でもさっき警察が来てた』
『海外に逃げるとかわ?』
『バレちゃうよ』
こうして、あたし達の逃亡生活は始まった。
『もう顔とかバレたのかなぁ?』
とりあえず畑の近くの倉庫に身を隠すことにした。
『大丈夫だよ。だって聞き込みしたって誰もあたし達のこと何て知らないんだから』
『そうだね・・・』
『あたし何か買ってくるよ』
しかし・・・
あたしは警察を侮っていた。
コンビニから帰ろうとすると・・・
『凪那ちゃんだよね?』
『えっ』
あたしはすぐにこの男が警察だと察した。
『違います・・・』
急いでこの場を離れようとしたが、次の言葉であたしの動きが止められてしまう。
『姫縞凪那ちゃんでしょ。あの一家惨殺事件の唯一の生き残りの・・・』
語尾になるにつれ声が小さくなる刑事さん。
もしかしてこの人は・・・
『國島刑事?』
あたしが名前を呼ぶと、刑事は驚いたような、嬉しそうな表情をした。
『君がまさか覚えくれている何て・・・』
そして、刑事さんは少し暗い調子で言った。
『だけど君がまさか強盗をする何てね・・・』
その言葉であたしは今の状況を思い出したかのように走り出した。
それと同時に向こうもハッとしたように追いかけてきた。
『待て』
運動何てまるでしていないのに、あたしは塀を越えたりして、楽々と刑事をまくことが出来た。
2年も走ってないのに、マダ走れるんだ・・・
お父さん、お母さん、誠・・・
2年前のある日。
マダ中学2年生になったばかりのあたしは、何と陸上部の短距離走で優勝することが出来た。
『家族の皆きっと喜ぶわよ』
今日の試合は神奈川県で行われた為、家族は見に来れなかった。
喜びと、期待を胸に家路を歩いた。
しかし、そんな喜びは、すぐに絶望へと変わってしまう。
『何の騒ぎ?』
家の前に凄い人だかりが出来ていた。
嫌な予感を感じながら、家へと近づいて行った。
パトカーが何台か止まっていた。
足が震えるのを感じた。
何があったの?
あたしはその場から逃げ出すように、走った。
数M走ったところで、誰かが後ろから肩を掴んできた。
『君・・・もしかしてあそこの家の子かな?』
20代前半ぐらいの男は、きっちりとスーツを来ていて、何処か初々しさを感じた。
『そうですけど・・・』
吐き捨てるように言うと、男は少し悲しげに言った。
『僕は東京警察署の國島っていいます。家族なら、何があったのか伝えておくべきだと思ってね』
伝えなくていい。
聞きたくない。
そう思っているのに、あたしは刑事に耳を傾けていた・・・
あの時の刑事に会う何て・・・
とりあえず場所を変えないと・・・
そして、あたしは走って皆の元へと戻った。
『もう警察に顔バレてるよ。皆少しずつ遠い所に行こう。4人いるから、二手に別れていこう』
あたしは、この中で一番年上の女の子と行動を共にした。
皆どんな思いでここに来たんだろう?
『あのさ・・・』
歩きながら尋ねようとしたが、どう聞いていいのかわからず、口ごもってしまう。
『何でお前みたいな真面目そうな奴が来たんだ?』
あたしより先に相手が尋ねてきた。
尋ねられると何も言えなくなるものだ。
『まあ、言いたくなきゃいいけど・・・』
それから二人共何も話さず、しばらく歩いていた。
『あたしは・・・きっと誰かに見てほしかったのかもしれない。あたしの存在を・・・』
あたしが話し始めると、足を止めた。
『そうか。あたいはある奴を困らせたくて、否・・・迷惑かけたかったんだ。あたい愛っていうんだ。あんたは?』
『凪那・・・皆何か抱えて生きているんだよね』
二人でしんみりとしていると、嫌な予感が走った。
周りを見渡すと・・・
『警察!!』
その言葉を合図に二人は走り出した。




