4話 死の配達人 前編
とある古びれたアパート…
コンコン!
ドアをノックする音が聞こえる。
暫くすると中から髪はボサボサで髭を生やした中年男性が出てきた。
酷くやつれている様子だ。
「誰だ?」
「はい!私、夢を届けようと言うプロジェクトをしております西田と申します。おめでとうございます!あなたは夢を叶える対象者に選ばれました!」
「はぁ?…」
中年のやつれた男は状況が理解出来ずポカンとしている。
西田と言う男は一枚の紙を取り出した。
「これに願い事を書いてください。必ずあなたの願い事が叶います」
やつれた男はムッとした表情で言った。
「馬鹿にしてるのか!?あんた宗教の勧誘か?とっとと帰ってくれ!」
そりゃいきなり願い事が叶いますと言われても信用できるはずがない。
すると西田は言った。
「駄目もとで書いてみてくださいよ!必ず叶います!」
やつれた男は頭をクシャクシャと掻いた。
イライラしているようだ。
「わかったよ!書きゃいいんだろ!」
やつれた男は西田から奪うようにして紙を取った。
そしてドアを勢いよく閉めた。
その男はとりあえず願い事を書いてみた。
「今すぐ三億円が欲しい」…と
実はこの男、リストラされ家賃の滞納も溜まっている。
やつれた男は願いを書いた後、苦笑いして寝っ転がった。
「あの野郎…もしこれが嘘だったたら訴えてやるからな」
その瞬間押入れの中からドサッ!という音がした。
まさかと思い押入れの中を見てみると黒いバッグがあった。
そのバッグを開けると何と三億円が入っていたのだ。
やつれた男は呆然と三億円を見つめた。
「ウ…ウソだろ!?」
願い事が叶ったのだ…
しかしその男はそれから二日後の夜に体中切り刻まれた姿で発見された。
更に心臓が抉り取られていたと言う。
狼人間を倒した龍二と理恵…
龍二は理恵の記憶を探した。
すると龍二はハッ!と思い出した。
「まさか…理恵…あの理恵なのか?」
理恵はため息をついた。
「やっと思い出してくれたか…私は龍二が転校して来たときから気づいていたのに」
「まぁ…そう言うな。それにしても11年ぶりか…まさかお前と一緒の高校に通う事になるとわな」
「私だって龍二を見たときビックリして大声だしそうだったよ!」
龍二と理恵はお互いフッと笑った。
実は理恵の父も獣騎士で五郎とは親交があり一緒に悪霊退治をしていた事があった。
二人はその時に出会ったのである。
理恵の父親が亡くなってから中々会う機会がなくなってしまったのである。
龍二は小学校に行かなかった為、親友はおろか友達すらいなかった。
また理恵もその当時、人見知りで内向的であった為友達は少なかった。
そんな彼らだが何故か気が合った。
確かに合った回数は7、8回程度だったが龍二と理恵は親友と言える仲だった。
理恵はゆっくりと歩き出した。
「じゃっ!また明日!お休み!」
「おぉ!」
龍二もその公園を後にした。
そして月曜日…
龍二が教室に入ると藤次、拓也、彩、早苗が四人で話をしていた。
「俺さぁ昨日、犯人を捕まえるために公園に行った筈なんだけど何故か気づいたら自分の部屋のベッドで寝てたんだよな」
藤次がそう言うと拓也、彩、早苗も驚きの表情を見せる。
「えっ!?それ僕もだよ!?」
「私もよ!?」
「不思議よねぇ…」
龍二は喋りかけられないようにする為にそそくさと席に着いた。
彼らをベッドに寝かせた張本人で説明が面倒くさいからだ。
まだ朝礼が始まるまで後、10分ある。
理恵はまだ来ていないようだ。
左の席を見てみると美咲が勉学に励んでる。
龍二はこの前に言いそびれた事を言おうと声をかけた。
「ちょっといいか?」
すると美咲は悲しそうな…いや…龍二に怒りの眼差しを向けた。
「見てわからないの!?今、忙しいの!」
「す…すまん」
再び美咲は勉強を始める。
「じゃあ…昼休みに体育館の裏側に来てくれ…話がある」
美咲は龍二の言葉を無視して勉強を続けた。
そして昼休み…
龍二は体育館の裏側で待ったが残り五分になっても美咲は現われない。
龍二が諦めて立ち去ろうとした瞬間美咲が現われた。
龍二は美咲が現われるやこう言った。
「来たか…この前の件についてだが周りには喋らないでくれ」
この前の件とは美咲が七不思議を体験した出来事である。
「話すわけないでしょ!言ったところで誰も信じてくれないわよ」
そして美咲が言った。
「私の話も聞いて!」
「話?何だ?」
美咲は声を震わせながら言った。
「何でケンちゃんを殺したの?」
その言葉に龍二は眉間に皺を寄せた。
「何でケンちゃんを殺したのか聞いてるの!早く答えて!」
美咲の目から涙が零れ落ちる。
龍二は困惑した。
何故ならケンちゃんという人物に心当たりはないからだ。
「ちょっと待て!ケンちゃんって誰だ?俺はそんな奴知らないし人間を殺した事なんてない」
美咲は大粒の涙を零しながら言った。
「惚けないでよ!一年前の十月二十八日…ケンちゃん…川井健太は殺された!」
「だから何で俺が!?俺は川井健太って奴も知らない…それに一年前は別の場所に住んでたから有り得ない。誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」
美咲は龍二の胸倉を掴んだ。
「ケンちゃんを殺したのはあれは間違いなくあなたが変身したあの騎士の姿だった!」
龍二は驚きのあまり言葉を失った。
獣騎士が人を殺めたという話は今まで聞いたことがない。
「何とか言ってよ!辰巳君!!」
龍二は下を俯いたままだ。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン!
昼休み終了のチャイムが鳴った。
美咲は龍二の胸倉から手を放した。
そして龍二の顔を睨み教室へ戻ろうとした。
龍二は美咲に声をかけた。
「待ってくれ」
美咲は龍二の方を振り向かずに足をとめた。
「お前の大事な人を奪った獣騎士は俺じゃない…俺がその騎士を見つけてみせる!だから…俺を信じてくれ!俺はやってない!」
美咲は無言のまま再び歩き出した。
龍二は美咲の後姿を見つめる事しか出来なかった。
その日の帰り道…
校門のところに理恵が立っていた。
「よっ!」
「おぉ…」
龍二は元気なく返した。
理恵は心配そうな顔をした。
「何かあった?元気なさそうだけど?」
「俺の事はどうでもいい…ところで何か用か?」
龍二が聞くと理恵は話し始めた。
「今、時間ある?ちょっと付き合ってほしいんだけど?」
すると龍二は素っ気無く答えた。
「わかった」
そして龍二が連れてこられたのは理恵の家だった。
「久しぶりだね。龍二が私の家に来るの」
「そうだな…」
理恵は新聞をを持って広げた。
「これを見て」
龍二が見るとその新聞には内臓を抉り取られる事件が続出していると書いてある。
「殺された人達の家から怨念が感じ取れた。これは間違いなく霊の仕業よ…そこで龍二にも手伝ってほしいの」
龍二は少し頷きながら言った。
「わかった」
理恵は気難しい顔をしながらいった。
「この悪霊、次に襲う人が全く読めないの。邪念は感じ取れたけど僅かしか残っていなかったしどんな霊なのか想像もつかないわ」
龍二は考え込んだ。
その頃…
「私、夢を届けようと言うプロジェクトをしております西田と申します。おめでとうございます!あなたは夢を叶える対象者に選ばれました!」
「えっ?」
「これに願い事を書いてください。必ずあなたの願い事が叶います」
「はぁ…」
勢いに押され紙を美咲は受け取ってしまった。
西田の目がキラリと光った。
悪霊の魔の手は美咲にまで及ぼうとしている…
龍二と理恵は美咲を悪霊の魔の手から救えるのだろうか?…
続く




