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3話 満月の夜に 後編

家に帰ると早速、五郎に狼男について聞き込みをする。

どんな奴が来ても対応できるようにまず戦う前に相手がどんな奴なのか知らべておくのだ。

これは獣騎士にとって当たり前である。


「師匠ちょっと話が…」


座禅を組んでいた五郎が立ち上がった。


「狼人間の事か?」


「何故それを?」


五郎はため息をつきながら喋った。


「最近の事件を聞いたとき薄々そう思っていた…新次郎が仕留め損ねた最後にして最強の一匹が残っていたからな」


五郎は引き出しの中から日誌を取り出した。


「これは!?」


その日誌には今まで父・新次郎が戦ってきた悪霊やモンスター、妖怪などの特徴が細かく記されていた。

龍二はその日誌の狼男の部分を隅から隅まで読みつくした。

どうやら狼男は首を切られない限り不死身なようだ。

鋭い爪を持ち恐るべき怪力の持ち主とある。

何とか最後一匹を追い詰めたが結局取り逃がしたらしい…

しかし新次郎の獣騎士としての腕は全獣騎士の中でも五本の指に入ると言われるほど凄い。

その父が後一歩まで追い詰めたのに取り逃がす事は有り得ない。

何かあったのだ…

父が殺せなかった理由が…


五郎はしみじみと語りだした。


「お前の父が残したものだ…お前が一人前になったら渡すように言われていた…と言ってもお前はまだまだだがな」





五郎の頭の中にあの日の光景が蘇る…


それは15年前の夜だった…


「ご無沙汰してます…師匠」


「どうかしたのか?こんな時間に」


その夜、新次郎はいつもにもまして険しい顔をしていた。


新次郎はいきなりこう切り出したと言う。


「師匠…もし私に何かあったら龍二をお願いします」


唐突にそんな事を言われても五郎は彼の心情を理解できなかった。


「新次郎…お前何を言ってる?」


新次郎はその質問には答えず話を続けた。


「後、これを…」


そこで新次郎は五郎に日誌を渡した。


「これは!?」


「私が今まで戦ってきた魔物達の詳細が詳しく記してあります…これを龍二が一人前になったら渡してほしいのです」


五郎は嫌とは言えずその日誌を受け取った。


「では…師匠…また会いましょう…失礼します」


そう言って新次郎は一礼した。

その一礼に五郎はありがとうとさようならの両方の意味を感じ取った。


そして新次郎は師匠に背中を向けて歩き出した。


五郎は新次郎の寂しそうな背中を見て新次郎は死を覚悟しているように見えた。

獣騎士になる者は誰でも死ぬのを覚悟しなければならない。

しかし新次郎の悲壮な決意は五郎にも伝わってきた。

今、新次郎を呼び止めても彼は立ち止まらないだろう。

この三日後、新次郎はこの世を去った。






深夜1時…


綺麗な満月が顔を出している…

狼男が現れるにはもってこいだ。


「師匠…行って来ます」


「くれぐれも油断するな」


龍二は大きく首を縦に振った。

そして玄関を出た。








その日の深夜二時のとある公園…



明日は休みとはいえ高校生がこんな時間に出歩く事は普通無い。


龍二が到着すると藤次、拓也、彩、早苗が来ていた。

全員意気込んでいる。


藤次は鼻息を荒くしながら言った。


「俺達で絶対犯人捕まえようぜ!!」


意気揚々と歩き出した龍二以外の五人…


少し歩くと凄まじい殺気を感じた。


立ち止まって辺りを見回す龍二…

その時、龍二は気づいた…

もう囲まれてしまっている事に…


「しまった…囲まれてしまっている…師匠…話が違うじゃないか」


全員を守りきるには…


龍二は呪符を五枚取り出した。


「臨兵闘者皆陣列在前…悪しき者から彼らを守りたまえ」


小さな声で呪文を唱えるとその呪符は紫色に光り五人の背中に張り付き五人は紫色の球体となりどこかへと消えた。


龍二は一度深呼吸をした。


「出て来い!いるのはわかっている!」


すると五人の男女が現れた。


見た目は普通の人間だ…


しかし目が黄色く光っている…


まるで闇で獲物を狙う野獣のように…


男女が四人並んでいたが一人の女性が一歩前に出た。


「中々いい男ね…食べ応えがありそうだわ」


龍二は表情を崩さず言った。


「仲間を増やしたのか…辰巳新次郎と言う獣騎士に痛い目にあわされてる筈だ…おとなしく浄化しろ…抵抗すれば痛い目にあうぞ」


するとその女は獣のような表情で龍二を睨んだ。


「お前ら獣騎士…いや人間は私の家族、親友を奪っていった…人間を喰らわなければ私達は生きてはいけない!お前ら人間もそうだろ!生き物を喰らっているではないか!?そのくせ自分達が喰われたら私らを根絶やしにするなどと言い出す!お前ら人間はいつも自分勝手だ!自分達さえ良ければそれで良いと思ってる醜い生き物だ!」


龍二は唇を噛んだ。

確かにこの女の言う事も一理あると思ったからだ。

龍二は思った…

もしかしたら父も同じ事を思いその罪悪感から狼人間を逃がしてしまったのかもしれないと…

しかし情けをかけるのは獣騎士にとっては命取りになる可能性が高くあるまじき行為である。


「言いたい事はそれだけか?とっととかかって来い」


そう言うと一人の男の体から毛が見る見るうちに生えていった。

顔も次第に狼のような顔になっていく。

数秒後には半狼半人の姿になった。


他の四人はまだ狼人間にはなっていない…


龍二のお手並み拝見と言ったところだろうか…


狼人間は龍二の方へ向かっていった。


そして鋭い爪を龍二に振り下ろした。


それを龍二はあっさり交わすと狼人間の腹部にパンチを入れた。


だが龍二のパンチが効いていないようだ…


「どうやら半不死身と言うのは本当のようだな」


狼人間は休む間を与えず攻撃を続ける。


何とか攻撃をかわし続ける龍二…


狼人間は龍二の腹部目掛けて体当たりした。


「うおっ!!」


龍二は木の茂みに吹っ飛ばされた。


狼人間は今がチャンスとばかりに龍二が吹っ飛ばされた場所に飛び掛った。


その光景を見て残りの三人が不気味な笑みを浮かべる。


そしてリーダーらしき女が言った。


「あの獣騎士口ほどにもないわね」


ゆっくりと龍二が飛ばされた場所に向かう。


その場所に向かっていると足下に狼人間の首が転がってきた。


それに驚く三人…


龍二がゆっくりと茂みの中から姿を現した。

手には剣を持っている。


まずリーダーであろう女そして男女二人は遂に狼人間になりその姿を現した。


龍二は狼人間達の方向に走った。

また三匹の狼人間も龍二を迎え撃った。


鋭い爪と龍二の剣が激しくぶつかる。


お互い一歩も譲らない…


攻撃し防いでかわして…


そう言った攻防が続いたがさすがの龍二にも疲れが出てきた。


いくら龍二でも狼人間三匹を一人で倒すのは至難の技だ。


鋭い爪が龍二の胸を切り裂き頭突きをくらわした。


「グオッ!!」


龍二は少し後ろに吹っ飛ばされた。


龍二は何とか立ち上がる。


そんな時聞き覚えがある声が聞こえた。


「だらしないなぁ龍二…」


龍二は唖然とした。


龍二の目の前に立っていたのは理恵だった…


「お前…なんでここに!?」


すると理恵が持っている鞭から白い炎が現われ理恵を包みこんだ。


理恵は白いボディーをした白鳥の獣騎士にへと姿を変えた。


理恵も実は獣騎士だったのである。


龍二も立ち上がり目を瞑る…


青い炎が龍二を包み込み龍騎士に姿を変えた。


「龍二はあのリーダーを倒して。私は後の二匹を相手にするから」


「あっ…あぁ」


勢いに押されて返事をしてしまう龍二…


白鳥騎士は二匹の狼人間に攻撃を仕掛けた。



龍騎士は狼人間のリーダーと睨みあった。


龍騎士の剣が青い炎に包まれた。


龍騎士と狼人間は同時に走り出した。


「ウォォォォォォォォォッ!!」



「ガァァァァァァァァァッ!!」


勝負は一瞬でついた。


龍騎士の剣が狼人間の首を切り落とした。


最強と聞いていた狼人間との決着はあっさりとついた。



そんな龍騎士に白鳥騎士が声をかけた。


「龍二お前強くなったな…」


二人は装甲を解除し元の姿に戻った。


普段は大人しく丁寧な言葉遣いだった理恵のタメ口に龍二は少々驚いた。


「龍二は私の事覚えてないようだね…私は忘れた事ないのに」


その言葉に龍二は戸惑った。


どうやら理恵は龍二のことを知っているようだ。


龍二は必死に記憶を探った。






続く

















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