5.氷の剣
サディックが開けた箱の中に入っていた剣はとても綺麗な青い色をしていた。
「さぁ、手に取ってみて使ってみて欲しい」
サディックにそう言われて剣を箱からだそうとはしたが何か怪しい。
ちょっと待て。
手に取る前に鑑定スキルで剣のステータスを確認しておこう。
名称:魔剣 氷
価値:測定不能
備考:この世界に伝わる魔剣の一つ。属性は氷。強力な氷の魔力を帯びており剣に選ばれし者は氷の魔法を使えるようになる。ただし、耐性の無い者が持つとその者が凍ってしまうので要注意。
「なんですか、これ?!」
思わず私は叫んでしまった。
「あっ、鑑定の能力で分かっちゃうんだっけ?」
サディックは悪びれもせずそう言った。
「分かっちゃうんだっけ、じゃないですよ! 私が知らずにこれを持ったら凍っちゃうところじゃないですか!」
いきなり命の危機に晒されるとは思ってもいなかった。
「いや、ごめんね。エマなら何か特殊な力で持てそうな気がしたんだよ」
「いやいや、私にそんな力はないですから」
「どんな武器でも使いこなさるって?」
「うっ……確かに言いましたけど呪いの力を跳ね除けることなんてできませんって!」
「でも、ちょっとだけ持ってみて、ほら!」
サディックは下手な感じで言い寄ってくる男のような言い方をした。本当にこの人がこの武装商団とかいうところの団長で大丈夫なのだろうか。
「私が凍っちゃったらどうするんですか?」
「それは大丈夫だから。僕も持って一回凍ってるから」
サディックはそう言った。どういうことだろう。
時間が経過すると自然に解凍されるとか、か。
「あ、自然解凍はしないと思うよ。呪いの氷だからこの世界が灼熱地獄になっても溶けないんじゃないかな? 灼熱地獄になっても溶けない氷なら有り難くてみんなに崇められるかもしれないけど」
「そんな形で崇拝されたくありません!」
「それは冗談で。この国は王都に女王様がいて、八個の方角にそれぞれ中核都市があって王女様がそれぞれの都市を治めてるんだよ」
急にサディックが国の仕組みを解説し始めた。何か話は繋がるのだろうか。
「王女様達はそれぞれ強力な魔法を使えるんだけど、この都市の王女のフラン様は火の属性の魔法の使い手だから呪いの氷も溶かしてくれるんだよ。それで僕も凍り付けから生還したってわけ。だからエマが凍ってもまた助けてもらえばいいよ」
「でも、お言葉ですがフラン様は『もう、溶かすの大変だったんだから二度と剣を持つ馬鹿が出ないように封印しておくんだぞ、次は呪いを解くのに協力しないからね』っておっしゃっていましたが……」
付き添いの男がそんな怖いことを言っていた。それなのに私は持たせられそうになっていたのか。
「大丈夫でしょ。お菓子でも持っていけば許してくれるって」
王女様、そんなにかんたんではなでしょうに。
「というわけで持ってみて欲しいんだけど」
いやいや、全然話が繋がらない。
持つと凍るし、頼りしている王女様とやらは次は無いって言ってるらしいし、そんなに簡単に言われても困る。
「そんな命の保障もないのに簡単に言われても困ります」
「でも、エマは恐らくこの先の当てもないんでしょ? 成功しても失敗しても挑戦してくれたら今までの試験結果で幹部として迎えるから。多少だけど贅沢もできるよ」
当てもないのは確かだ。サディックには正体がすでに見破られてきるような気がする。
「当てがないのは確かです。挑戦します。その代わり、凍ったら絶対に助けてくださいよ!」
「大丈夫、心配しないで。凍った時は王女様と交渉するから」
サディックの軽い言い方がいまいち信用できないが覚悟を決めて氷の剣を持つことにした。
改めて箱の中を見る。
青い綺麗な剣が入っている。
鉄や鋼のような金属の光り方とは違う独特な光沢があるような感じがして吸い込まれてしまいそうな美しさだ。
「ええい、どうにでもなれ!」
私はそう言って剣を手にした。
その瞬間、全身に寒気が走った。
これはこのまま凍るということか。
冬の寒さとも風邪を引いた時に感じる寒さとも違う何か独特の寒気がする。
身体も震えてきた。
しかし、まだ身体は凍らずに耐えている。
サディック達もどうなるのかと、私のことを見つめているのが目に入った。
身体が凍らないということは能力のおかげでまだ耐えているのだろうか。
身体が震えて口を動かすのもままならない。
こんなことで呪いを解けるかは分からないが、私は力を振り絞って口を動かす。
「私の言うことを聞きなさい!!!」
残りの力を振り絞り大声で叫んだ。
すると氷の剣が光出し、私の身体の寒気は引いていった。
何とか凍らずに耐えることができたのだろうか。
私は力を使い切ったことと、寒気と震えが治まり凍らなかったことに安心し、その場で力尽き倒れてしまった。




