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第3話 脱出 その9

舞が駆るS1000Rは、ヒョウ達のG36AMGに追いついた。

「そっちは無事か?」

舞は無線で呼びかけると翼が返答する。

『こっちはみんな無事だ。そっちも無事でよかったよ』

「何とかな。コレのお陰で助かった」

舞はS1000Rを労うようにポンポンと叩く。

『これから、どのセーフルームに向かうんだ?』

「ここから近いのは?」

翼は『ちょっと待て』と言ってナビで場所を調べる。

「俺の家か、熊気の家だな。どっちにしま……」

「熊気の家に行こう」

舞は即答した。

『……了解。じゃあ車に付いてきてくれ』

「分かった……!」

その時、舞は何気なくサイドミラーを覗くと、複数の車の姿がそこには映っていた。

「後ろから追っ手だ!」

舞はアクセルを全開にする。

少し遅れて熊気も車のスピードを上げた。

舞達を追いかけてくるのは、二台のディフェンダーだ。

ディフェンダーは道路に立っているゾンビをひきながら、一台は舞のバイクに、もう一台は熊気達の車を狙って追いかけてきた。

舞の視界に十字路が見えてくる。それを見て舞は無線をオンにした。

「この先で二手に分かれる。私は左に、お前達はそのまま前進してくれ」

今度はヒョウが舞に返答する。その声音はとても心配そうだった。

「……了解。後で合流しましょう」

舞はヒョウ達の方を見て頷くと、ギリギリまで直進して、勢いよく左折した。

後ろの一台が運転を誤って、どこかにぶつかることを期待したが、その目論見は淡くも崩れる。

ディフェンダーの一台はヒョウ達の車を追いかけ、もう一台はしっかりと舞達のバイクを追いかけてきた。

舞はS1000Rを加速させる。

そして道路で横転しているトラックや、さまようゾンビ達の間を縫うように避けていく。

後ろのディフェンダーの窓から、傭兵達三人が体を乗り出した。

そしてバイクに向けてVZ58を発砲する。

舞はS1000Rを蛇行させるように走らせて、銃弾を回避する。

避けながら、右手でバイクを操り、 空いた左手をバッグに突っ込む。

入っているのはH&KのMP7。マガジンには四〇発の四・六ミリ弾が収められている。

舞は銃後方にあるチャージングハンドルを引いて薬室に初弾を装填してバッグから取り出した。

その間にもディフェンダーはどんどん距離を詰めてくる。

舞はブレーキを踏んで減速すると、ディフェンダーの右側を並走する。

ギョッとする運転手に向けて、MP7をフルオートでばら撒いた。

約二〇発の弾丸が、運転席を貫通して運転手を穴だらけにした。

バランスを崩したディフェンダーは、そのまま勢いよくバスと正面衝突して止まる。

一難去ってまた一難。

新たな追跡者達が現れた。

それは黒のオフロードバイク。ヤマハのWR250Rだ。

黒く染められたそれが二台、舞の駆るS1000Rとの距離を詰めてくる。

舞は後ろを向き、MP7でオフロードバイクを撃つが軽々と避けられてしまう。

逆に敵がマイクロウージーを取り出して乱射する。

舞と美雨の周辺に九ミリ弾が次々と掠めていく。

舞は空になったマガジンを捨てて、弾切れになったMP7を一度バックにしまう。

すると、バックの中で新しいマガジンが自動で装填された。

舞は再装填されたMP7を取り出し、敵に向けて再び撃つ。

だが又も撃った弾丸は避けられ、道路に面したビルのガラスを粉々に粉砕するだけだった。

オフロードバイクの二人も負けじと撃ち返してくる。

舞は姿勢を低くしてそれを避けると、一台のオフロードバイクに近寄る。

そのまま、体当たりするように勢いよく蹴り飛した。

運転手は吹っ飛び、歩道にあった電話ボックス

に砲弾の様に身体ごとぶつかった。

残りの一台がS1000Rの真後ろについた。

舞は反撃しようとするが、射線に美雨が入って撃てない。

オフロードバイクの運転手は、反撃できない舞を狙って、マイクロウージーをフルオートで全弾撃ってきた。

舞は反撃する為に、一度速度を上げて距離をとり、左足を軸にして百八〇度ターン。そして正面の敵に向けてMP7を撃った。

ウージーの九ミリとMP7の四・六ミリが交差する。

舞には一発も当たらず、逆に敵は胴体から頭を撃たれてオフロードバイクから転げ落ちる。

主を失ったバイクは、路面を滑って舞の前で止まった。

「美雨。無事か?」

舞はS1000Rが被弾してないか確認しながら、後ろの美雨の安否も確認する。

「はい。怪我はしてません」

「よかった。今からみんなと合流する。辛いかもしれないが、もう少し後ろで我慢してくれ」

「だ、大丈夫です!」

美雨はギュッと舞の腰に回した両腕に力を込める。

舞が、S1000Rを発進させようとした時、道路の奥から新たな敵の車両が現れた。

「くっ! 美雨、飛ばすぞ!しっかり掴まって!」

「はい!」

美雨の返事が聞こえるよりも早く、百八十度ターンさせて、急発進。

前輪が浮き上がるウィリー状態のまま、急追してくる車両から逃げ出した。

新たに追ってきたのは、自衛隊にも採用されている装輪装甲車。ブッシュマスター防護機動車だ。

ブッシュマスターは道路に止まっている車を弾き飛ばしながら、舞達を追い回す。

そのルーフには、RWSと呼ばれる車内で操作できる無人砲台が取り付けられている。

RWSが装備しているブローニングM2銃機関銃が舞達に火を吹いた。

ズドドドドッと凄まじい銃声が轟き、装甲車をも貫く十二・七ミリの弾丸が迫る。

舞はハンドルを操作して反対車線に避けた。

逃げるS1000Rを追って、曳光弾が後を追って来る。

なおも逃げる舞達に向けて、ブッシュマスターのM2重機関銃が弾をばらまく。

アスファルトが爆発するように穴が開き、路上駐車していた車は次々と穴だらけになっていく。

撃たれた車の何台かが、燃料に引火して爆発した。

S1000Rの周辺にも何発かの弾が掠めていく。

舞は左手のMP7の残弾全てをブッシュマスターに叩き込む。

しかし全て弾かれてしまい、跳ね返った弾丸は周りの車に突き刺さる。

舞は弾切れになったMP7を投げ捨て、助けを求めるために無線で呼びかける。

「今装甲車に追われている。そっちから援護はできるか?」

返事は返ってこず、雑音しか聞こえない。

舞は諦めずに、銃撃をかわしながら呼び続ける。

「誰か応答してくれ。こちらは装甲車に追われている。逃げきれない!」

舞がそう必死に叫ぶ間も、ブッシュマスターのRWSのカメラがS1000Rを照準する。

M2重機関銃が発射される寸前、間一髪でG36AMGが体当たりをした。

ぶつけられた衝撃で照準が狂い、舞を狙って放たれた弾丸は立ち並ぶビルの二階の窓を粉砕しただけだった。

『間に合ったー。舞無事?』

舞の無線からヒョウの声が聞こえてくる。

「遅いぞ!」

『ゴメンゴメン。追ってくる奴らがしつこくてね。追い払うのに手間取っちゃった』

舞の視線がG36AMGを捉える。ボディは銃弾でできた弾痕だらけだった。

窓ガラスも傷だらけで無事なのは一枚もない。

「そっちはみんな無事か?」

『ええ。車はボロボロだけど、みんなピンピンしてるわ。だから舞。ここはアタシ達に任せて。ね?』

「……分かった。私達は先に第二のセーフルームに向かう。敵は任せたぞ」

『オッケー。ここは任せて、早く行って!』

「死ぬなよ!」

舞はそれだけ言って一気に速度を上げた。


ブッシュマスターはS1000Rを追おうとしたが、それをヒョウ達が乗るSUVが体当たりで邪魔される。

ブッシュマスターは、標的を目の前で邪魔するSUVに変更した。

翼がサイドミラーを覗き込む。

「ブローニングM2がこっち狙ってるぞ!」

熊気はハンドルを巧みに操作して、撃たれる直前に回避する。

その脇を銃弾が掠めていく。

飛んできた破片がG36AMGのボディに音を立てて当たる。

「ちょっと熊気。もう少し早く避けなさいよ!」

「分かってる」

熊気はそれだけ言うと、黙って回避行動に集中する。

ヒョウ達はここまで来るのにほとんどの弾丸を消費してしまい反撃もままならない。

「どうする? このままじゃ俺たち遅かれ早かれミンチになっちまうぞ!」

翼が前の席にいる二人に解決策を尋ねるが、帰ってきたのは沈黙だけだ。

「待って。一つ手があるわ」

ヒョウが何がを閃いた。

「何だ? 何があるんだ?」

「この先の角を右折すれば、ガソリンスタンドがあるわ。それを爆発させればいくら装甲車でも……」

「倒せるかどうかは分からんが、目眩しにはなるかもな。よしその手に乗った!」

翼は残っていた手投弾をかき集める。二個残っていた。

「これだけあれば充分だ」

「オッケー。派手に決めましょう。熊気そこの角を右!」

ヒョウの指示を受けて、熊気はSUVを右折する。

しかし十メートル程先にディフェンダー二台が道を塞いでいた。

熊気は急ブレーキをかけて止まる。

「何で先回りされてるんだ? 熊気バックだ」

翼に言われるよりも早く、ギアをバックに入れるが、その進路はブッシュマスターに塞がれてしまう。

「挟まれた……」

翼は素早くレッグホルスターからCZ100を抜いてスライドを引く。

熊気も胸のホルスターからレイジングブルを取り出した。

後ろを塞ぐブッシュマスターから傭兵達が降りてきて銃を構える。

翼と熊気は同時にドアを開けた。

そして車を遮蔽物にして、前後を塞ぐ敵を撃つ。

傭兵達もすぐさま反撃してきた。

翼と熊気の放つ銃弾は、敵を次々と倒していく。

しかし傭兵の数が多く、激しい反撃にあう。

VZ58が放つ七・六二ミリ弾が、遮蔽物にしている車に次々と食い込んでいく。

熊気のレイジングブルの弾が切れた。

一度車内に戻って再装填しようとした時、ある違和感に気付く。

「ヒョウ」

「な〜に?」

ヒョウは車から出ようともせず、助手席に座ってあくびをしていた。

「何してるんだ?」

「うん? ああ、ここであんた達が死ぬのを待ってたんだけど、やっぱりザコじゃ無理ね」

「何を……がっ!」

ヒョウが笑顔で熊気に振り向いたと同時に、彼の首に冷たくて鋭い物が突き刺さる。

それはヒョウが持つ愛用のナイフだった。

熊気は助けを呼ぼうとするが、喉を貫かれて声が出ない。

翼は外で撃ち合っていて気づいていなかった。

「さようなら。熊気」

ヒョウは躊躇うことなく、ナイフを捻って引き抜いた。

熊気の喉から鮮血が勢いよく溢れ出し、車のハンドルを赤く染めた。

「コレ借りるわね」

ヒョウは今しがた殺した熊気のレイジングブルを奪って翼を待ち構える事にした。

「くそっ。拳銃で狙うには距離が遠い」

翼は弾が切れたCZ100をリロードする為に車内に戻る。

新しいマガジンを銃に差し込んだその時、異変に気付く。

鼻が血の匂いを感じ取ったのだ。

「ヒョウ。誰か撃たれたのか?」

「……翼。熊気が、熊気が撃たれた」

前の席を見ると熊気がうずくまっている。

「おい熊気。大丈夫か? おい!」

翼は勇気に近づいて傷を診る。

首の致命傷はどう見ても刃物でできた傷だった。

「どういう事だ? おいヒョウ。これはどういう事……」

「こういう事よ」

ヒョウは翼の左肩にレイジングブルを押し当てた。

翼は咄嗟に避けようとするが間に合わない。

車内で轟音が鳴り響き、44マグナム弾が発射される。

弾丸は翼の左肩に直撃。20式戦闘服のおかげで貫通はしなかったが、衝撃で肩の骨が砕けた。

「ぐあぁあああっ」

翼は何とか車から脱出した。いつの間にか敵の銃撃は止んでいる。

「逃げないでよ。翼」

翼は左腕が動かないので、銃をベルトに引っ掛けてスライドを解除して薬室に初弾を装填。

すぐさま助手席に向けて三発撃った。

しかしヒョウは姿を消していて、弾丸は椅子に穴を開けただけだった。

「くそっヒョウ。ヒョウ!」

翼は左肩の痛みも忘れて、油断なく銃を構えながらヒョウの姿を探す。

「呼んだ?」

翼は声がした方に銃を向ける。

だが右手はあっさりと掴まれてしまう。

ヒョウはその手首にナイフを突き刺した。そのまま骨に沿って、肘まで刃を下ろしていく。

「がああああぁああああっ」

翼の絶叫が辺りに響き渡る。

ヒョウはそれを笑いながら見下ろしていた。

「ヒョウ……お前……!」

翼は反撃しようと両手を動かすが、どちらも言う事を聞かない。

「諦めて。もうその腕じゃ何もできないわ」

ヒョウは翼に馬乗りになった。

「痛い? 辛い? アタシが楽にしてあげるわ」

ヒョウは持っているナイフを逆手に構えてゆっくりと下ろしていく。

狙いは翼の右目だった。

動けない翼は、ヒョウの笑顔と目の前に迫るナイフを、意識がなくなるまで睨みつける事しかできなかった。

「ふう」

ヒョウは翼を突き刺さしたナイフを引き抜いて立ち上がった。

アスファルトに倒れた翼は自身の血の海に沈んでいく。

ヒョウは持っていたレイジングブルを後部座席に投げ捨て、傭兵達の方へ歩き出す。

ヒョウに銃口を向けるものは誰もいなかった。

「はいは〜い。撃たないでね。アタシは味方よ」

ヒョウは、わざとらしく両手を上げながら傭兵達と合流した。

その時、背後からエンジン音が轟く。

「あら?」

振り向くと、死人しか乗っていないはずのG36AMGが動き出そうとしていた。

運転しているのは首を刺された熊気だった。

ヒョウを轢き殺して一矢報いようと、死力を尽くしてアクセルを踏み込む。

それを見て周りの傭兵達が、一斉にVZ58を構える。

「待った」

ヒョウは傭兵達を手で制する。

「トドメはアタシが刺すわ」

自分に猛スピードで迫る車にひるむ事なく、ヒョウはGB34に新しいグレネード弾を装填。

「これで本当にお別れ。バイバイ」

運転席の熊気を狙って引き金を引いた。

発射されたグレネード弾はフロントガラスに直撃して爆発。

熊気は爆風で死亡。乗っていたG36AMGも大破して何回も回転して爆発炎上するのだった。

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