第3話 「無名」たちの依頼
最初の依頼は拍子抜けするほど地味だった。裕福な織物商人の地下室からネズミを駆除すること。ドラゴンでも盗賊でもない。ただの暗闇と、耐え難い悪臭。
「冒険ってこんなものじゃないと思ってた」
フィンが鼻をつまみながら呟いた。
「冒険ってのは、金が払われる分だけそう呼ばれるんだよ」
マーティンが松明の具合を確かめながら答えた。
地下室は外から見るより広く、ネズミも商人の言っていたよりずっと多かった。レオンが先頭に立ち、内心の不安を押し殺して、努めて落ち着いた足取りで進む。マーティンが後ろを固め、フィンはまだ持っていない武器の代わりに木の棒を振り回していた。
ネズミの群れが一斉に襲いかかってくると、計画はものの三秒で崩壊した。フィンが叫んで転び、樽に足を引っ掛ける。レオンが庇いに入って腕に引っかき傷を負う。マーティンは悪態をつきながら藁束に火をつけ、獣たちを追い払った。
すべてが終わると、三人は地下室の床にへたり込み、荒い息をついていた。
「最悪だった」フィンが呻く。
「でも生きてる」マーティンの声はまだ少し震えていた。
レオンはそれに気づき、傷を布で縛りながら静かに尋ねた。
「大丈夫か?」
マーティンは長い間、部屋の隅にある空の水樽を見つめていた。
「水のある狭い場所が苦手なんだ」ようやく言った。「特に、暗いところは」
「なぜ?」フィンがすぐに食いつく。
「お前には関係ない」
だが、その声の何かが、単なるわがままではないとレオンに教えていた。彼は深追いしなかった。ただ頷き、話題を変えた。
「報酬をもらいに行こう。今日の松明の判断、助かった。一杯おごる」
マーティンが感謝の眼差しを一瞬だけ向けた。短く、ほとんど気づかれないほどに。だがレオンはその視線を覚えていた。パーティの最初の小さな秘密が、そっと信頼の天秤に乗せられた。レオンはそれに触れないと決めた。マーティン自身の準備が整うまでは。




