第15話 海辺の街
依頼は港町ヴァイルハーフェンへと三人を導いた。旅を始めて初めて見る、本物の海だった。
フィンは桟橋で立ち止まり、青灰色の広大な海に見とれて口を開けたままだった。
「大きい……!」
「ただの水だろ」マーティンが鼻を鳴らしたが、その声はどこか不自然に強張っていた。
レオンはすぐにその違和感に気づいた。いつもは先頭を歩くマーティンが、今は少し後ろに下がり、波を見つめる目にはどこか、憧れとは呼べない切なさが宿っていた。
夕方、フィンが魚市場を見に出かけた隙に、レオンはマーティンと二人きりで桟橋に残った。
「海と何か関係があるのか、聞いたことなかったな」レオンは慎重に切り出した。
マーティンは長い間、桟橋の杭にぶつかる波を見つめていた。
「関係なんてない」あまりに早口で答えた。「ただ……騒がしい場所ってだけだ」
レオンは深追いせず、ただ隣に座り、沈黙を分かち合った。
長い間を置いて、マーティンがぽつりと呟いた。
「実はな、水が怖いんだ。本当に。あの川での俺の様子、見ただろ」
「でも、あのとき入っただろう」
「あのときは選択肢がなかったからだ」マーティンはもう少し黙り込んだ。「海は違う。……何かを思い出させるんだ」
彼はそこで言葉を止めた。レオンには、その少ない言葉さえどれほど彼にとって重いか分かった。それ以上押さなかった。
「話したくなったらいつでも聞くよ」ただそう言った。
マーティンは感謝を込めて頷いた。まだ水平線を見つめたまま、太陽がゆっくりと海に沈み、波を不穏な深紅に染めていく。
秘密は明かされなかった。だが初めて、マーティンは誰かにその秘密の端に触れさせた――それだけでも、決して小さなことではなかった。




