第16話 水面の影
夜、レオンは隣の敷布が空になっているのに気づいて目を覚ました。
外に出ると、桟橋の水際に座り込み、膝を抱えているマーティンを見つけた。月光が波に散らばり、マーティンはまるでそこに何か――あるいは誰かを見ているかのように、じっと見つめていた。
「眠れないのか?」レオンが静かに声をかけ、隣に腰を下ろした。
マーティンはびくりと震えたが、身を引かなかった。
「昔、ここで大事なものを失ったんだ」乾いた声で、水から目を離さずに言った。「物じゃない。人だ」
レオンは息を潜めた。この不意の率直さを驚かせて逃がしたくなかった。
「全部を話す準備はまだできてない」マーティンは続けた。「まだ、な。でも……それは海の傍で起きたことだった。それ以来、水を見るたびに、あの日を思い出す」
「今、話す必要はないよ」
「分かってる」マーティンはその夜初めて、かすかに笑った。「でも、無理に聞き出そうとしないでいてくれて、ありがたい」
二人はしばらく黙って、水面に伸びる月の道を見つめていた。レオンは、友の過去にある、とても痛々しい何かの縁に触れたのだと感じていたが、それ以上その糸を引くことはしなかった。
「知ってるか」ついにマーティンが立ち上がり、ズボンの埃を払いながら言った。「いつか、海の近くに家を持つかもしれない。ここじゃない。もっと静かな場所に。水を見ても怖くないような場所に」
「いい夢だね」レオンが静かに言った。
「お前が最初だ、これを声に出して言った相手として」マーティンは打ち明けた。その声には、安堵に似た何かがあった。
二人が部屋に戻ったのは明け方近くだった。まだぐっすり眠っていたフィンは、二人がいなかったことにすら気づかなかった。だが、その夜、レオンとマーティンの間で何かが変わった。暗い水の上に張られた信頼の細い糸が、少しだけ強くなった。




