第12話 喧嘩
すべては老人がきっかけだった。
市場の外れで彼らはその老人と出会った――背が丸まり、血の混じった咳をし、医者にかかる金すらない老人だった。レオンは迷わず、持っていた金をすべて渡した。何週間もかけて新しい装備のために貯めていた、あの金を。
その夜マーティンがそれを知ると、彼の顔から血の気が引いた。
「全部の金を渡したのか? 見ず知らずの爺さんに!?」
「彼は医者にかからなきゃ死んでいた」
「俺たちは家すら失うところだったんだぞ!」
「マーティン……」
「いや!」マーティンは久しぶりにレオンに対して声を荒げた。「お前はいつもこうだ! 俺とフィンなんて存在しないみたいに、勝手に全部決める! あれは三人で稼いだ金だぞ!」
レオンは口を開きかけて説明しようとしたが、途中で止まった。マーティンが正しかったからだ。優しさそのものを非難しているのではない。決断が実際、他の二人に一言も相談せずに単独で下されたことを言っているのだ。
「お前の言う通りだ」レオンは静かに言った。「聞くべきだった」
だが、謝罪はすぐに怒りを鎮めなかった。マーティンは無言で荷物をまとめ、天井から埃が舞い落ちるほど激しく扉を叩きつけて出て行った。
それまで隅で不安げに座っていたフィンが、レオンを見た。
「悪気があってのことじゃないよ」静かに言った。「あいつはただ、怖いんだ。また何もかも失うことが」
レオンは閉じた扉を見つめながら頷いた。彼は理解した。無条件に正しいと信じていた優しさも――そばにいる人間の気持ちを踏みにじれば、人を傷つけることがあるのだと。




