第十章 ep1
「ヴィーゴ、なぜ戻ってきた」
謁見の間にあたるのだろうか。少し広めの部屋に、獣の皮でできた敷物がしかれており、そこに男が座っていた。身に着けている革の上着にはびっしりと刺繍がはいっているし、頭に巻いている布にも同じように刺繍がはいっている。その上から飾り石がついた組み紐で縛っている。
わたしたちが普段みている華やかとは少し違うけれど、美しい細工だと思った。
そして、わたしがいちばん驚いたのは、その男がヴィーゴと瓜二つだったから。
双子のお兄さんってことなんだろう。
「そう言うと思ってたよ、兄貴。何故って、おれの正体がばれそうだったからさ。命は大事だろ? 最近、姿を現した、ノルド・マーリングの王女さまはおっかないぜ」
「王女?」
「そう、王太子と国王は、病で寝込んじまってて、姿を見せなくなっちまった。その代わりに妾腹だという王女さまがでてきたってわけ。その王女さま、結構すげぇ力を持った魔詩師みたいだぜ」
セラフィナの兄である王太子が亡くなったことは、ヴィーゴは知らないようだった。確かにその情報は伏せているとセラフィナも言っていた。
それにしても、王太子と国王に毒を盛ったのは、ヴィーゴではないということだろうか。
「まずいな」
「だろ。まずは兄貴に報告ってことで……これ、土産」
と言ってヴィーゴはわたしを指さした。
「ちょっと、ヴィーゴ、どういう意味よ」
「なんだ、この娘は?」
「魔詩師のお嬢さん」
まだ、正式に魔詩師になったわけじゃないけれど、確かに多少は魔詩を使えはするので、あえて訂正はしなかった。
「なっ?」
ヴィーゴのお兄さんはびっくりしたように、わたしの手元を見た。
「なら、おまえが抱えているのは、魔音楽器か?」
わたしが答えずにいると、いらいらとした口調で、さらに話をつづけてきた。
「おい、答えろ」
「名すら名乗らず、好き勝手言うものに答えるつもりはないわ」
「ふん、面白い娘じゃないか。おれは、ヴァルナル。このヴィーゴの双子の兄で、ギュールズの族長だ」
「ミーリャ・ラングよ。王立魔法音楽院の生徒よ。まだ魔詩師じゃないわ」
「でも、魔詩は使えるのだろう?」
「ええ、少しは」
「その魔音楽器を見せてくれ」
わたしは、どうにも気が進まなかったけれど、ビーン、ビーンとオリヴェルがいつも以上にうるさい。
「その音は、おまえの楽器が鳴っているのか」
「たまに、勝手に鳴るんです」
ままよと思って、オリヴェルの包みを開けると、ヴァルナルは立ち上がり、わたしのまえまでずかずかと歩み寄ると、オリヴェルを取り上げようとした。
「何をするの!」
「これは! これをどこで手に入れた!」
「どこでって、父さんの形見よ! 離して、これはわたしの魔音楽器なの!」
「違う、これは、おれの、おれたちの姉さんの形見だ」
明日からは、怒涛の2時間更新となります。
ミーリャの物語もクライマックス。ぜひお楽しみくださいね!
面白いと思ったら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援お願いします!
これからも、毎日更新の励みになります!
よろしくお願いいたします




