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第七章 ep1

 ルーデンスの郷へ向かうときは、ギルバートが手綱を握る幌馬車での移動だったのに、帰りは、華美ではないけれど頑丈な作りの箱型馬車での移動になった。

 馬車に乗ったのは、わたしとセラフィナのふたりきり。ジーク様をはじめ魔詩師の方々は、馬車の周りを馬で移動している。

 途中の街で宿泊するときも、最も高価な宿を貸し切りに、一番広い部屋をセラフィナとわたしが使う。

 さすがに、王女の身分に戻ったセラフィナと一緒の部屋に泊まるのはどうかと思い、一度は断ったのだけれど、セラフィナのほうから一緒の部屋にいて欲しいと言ってきた。

 これまで二人でいると、自然といろいろと会話が続いていたのに、セラフィナはほとんど口をきかなくなっていた。

 家族を亡くしたばかりなのだから、仕方がないと思っていたけれど、どうやらそれが原因ではなかったようだった。

「実のところ、兄を亡くしたといっても、ほとんど顔も見たこともないからな、どう悲しんでいいのかわからん」

 セラフィナはそう言っていた。

 王女と言っても妾腹だったセラフィナは、王宮でもはずれにある外宮で育ったそうだ。セラフィナの存在は、貴族の中でもそれほど多くの者が知っているわけではないそうだ。わたしも入学したときにはじめて、セラフィナという王女がいたのを知ったくらいだ。


 馬車で揺られること三日、わたしたちは王都ノルディスに戻ってきた。

 王立魔法音楽院にはもう戻れない。まだまだ、学びたいことがあったけれど、わたしはセラフィナと一緒にいることを選んだ。そのことに後悔はないけれど、短すぎる楽院生活がちょっと残念ではある。

 王宮に入ると、セラフィナは王立魔法音楽院に入学するまで暮らしていたという外宮に戻ることになったらしい。王太子の死は、表向きには隠されたままということだった。

 問題となったのは、わたしの身分だ。侍女にはしないとセラフィナは言っていた。侍女になれと言われても、お茶のひとつも満足に入れられないわたしが、侍女にはなれないと思う。普通に側仕えをしてくれている侍女のみなさんに申し訳ない。

 はじめて踏み入れた宮殿は、自分にはふさわしくない場所のように思えた。正直言えば逃げ出したい気持ちになってしまった。でも、弱音を吐いてはいられない。

 王女の正装に着替えたセラフィナと違い、わたしはこれまで通り、王立魔法音楽院の制服のままで良いことになった。部屋もセラフィナの隣の部屋を使うことになった。これまでにない待遇のようで、王宮の中でもひと悶着あったらしい。

 王都に到着した日は、それだけで疲れ果ててしまい、わたしは自分にあてがわれた部屋に通されると同時に眠ってしまった。

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