第六章 ep7
ジーク様を先頭に、わたしたち二人がその後を追う。走ってしまうと息が切れ、いざというとき魔詩を詩えなくなるため、魔詩師は息が乱れない速歩を身につけている。わたしもセラフィナもその基本はもう身についてはいるが、ジーク様についていくのは、簡単なことではなかった。
ジーク様は、背も高く、そして足も長い。その長い足で走る寸前の速さで歩かれたら、わたしたち二人は、とてもじゃないが追いつけない。
もう歩くことだけで必死になっていたとき、ジーク様が急に話しかけてきた。
「さっきの馬鹿げた光の魔詩は、どっちの仕業だ」
そもそも、話をされるとは思っていなかったので、反応ができなかった。
「森中を灼くほど、光を放ったのはどっちだと聞いている」
わたしの背中で、ビーン、ビーンと先にオリヴェルが返事をしている。
なんだか自慢げな返事の仕方だが、それ、空気読み間違ってるから。
このジーク様の口調。絶対叱られるほうだから。
「……あの、わたしです」
「そうだろうな。セラフィナ殿下ならば、あれほど向こう見ずな使い方などされるはずはないからな」
「ジークヴァルド。そこまでにしてやれ」
「殿下、あなたはミーリャに甘すぎるようだ。どうやら、あなたもヴァネッサも目は無事だったから良かったものの」
「……」
「ミーリャ、あの光を見てしまった者は、もう二度と視力が戻らない可能性があった。それは、我が隊にいた魔詩師も、森の入り口近くまで逃げてきていたルーデンスの郷の者も含めてだ」
「え?」
「幸い、我が隊には、癒しの魔詩を得意とするものがいたから、すぐに治療ができた。しかし、いつもそうだとは限らない。おまえは、敵を退けるために、味方を犠牲にすることもいとわないというのか?」
「そんな……ことになるなんて」
「おまえは、おまえの力を見くびっている」
「……」
わたしは忘れていたのかもしれない。
なぜ、五年もの間、公爵邸の地下にいたのかを。
すべての魔力を解放するということが、どれほど危険なことなのか、知っていたはずなのに。
ジーク様から、いったい何を学んでいたんだ。
「そこまでにしておけ、ジークヴァルド。二度目だぞ」
「は」
そして、そのままジーク様は口を開くことがなかった。
ふと、この時違和感がよぎった。
ジーク様とセラフィナの会話が、まるで主従のようだったからだ。
これまでは王立魔法音楽院の院長であり、詩長として、ジーク様はセラフィナに接していたはずだ。
なのに、まるでセラフィナは王女のような振る舞いをしてはいないか。
緊急事態だから?
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