第六章 ep4
セラフィナがリュート・ジゼルをざっと調弦すると、ヴァネッサさんの声に重ねるように土の詩を紡ぎ始めた。
ヴァネッサさんは、はっとしてこちらを振り向いたが、それでもハープを弾く指も詩う声も途切れない。
わたしは、オリヴェルを手に、まず水の魔詩で、赤ちゃんの握りこぶしほどの水の玉をいくつか生み出した。
セラフィナが土の詩をうまく詩いついだことで、すこしヴァネッサさんに余裕ができ、一息ついだ。
そこにちょうどできあがった水の玉をヴァネッサさんに投げ手渡した。
「ヴァネッサさん、それ飲んでください!」
長時間詩い続けて、喉は限界のはずだ。とにかく水で一度潤す必要がある。
ヴァネッサさんは、突然顔の前に投げ飛ばされてきた水の玉に驚いていたが、大きな口を開けてぱくっと食いついた。そのままそれを飲み込んだのがこちらからでもわかった。
続けて飲み込めるだろうタイミングを計って、次の水の玉を投げた。その後ふたつほど投げたところで、ヴァネッサさんが声をあげた。
「もう、大丈夫よミーリャ! 生き返ったわ」
ちょっと復活したところで、ヴァネッサさんが、また土の詩に戻る。
今度は水の玉をセラフィナに向かって投げ渡した。
「おお、器用なことができるのだな」
水の玉を飲み込んだ後、セラフィナが感心して言った。
「水の詩は得意なんだよね」
セラフィナはそれほど多くは飲まなくても良かったようで、二つほど水の玉を飲んだところで、また土の壁のほうへ戻っていった。
わたしも自分で水の玉をひとつほおばった後、こちらへ放たれてくる火矢に向かって、水玉を投げつけて消し止めた。
大雨を降らせて、火矢を消し止めることもできるけど、そうするとヴァネッサさんとセラフィナが魔詩で作っている土の壁もどろどろになってしまうかもしれない。それを考えると安直に雨を降らせるわけにはいかないのだ。
この場の火は抑えられても、すでに郷で燃え広がってしまった炎はどうしようもない。わたしがこの場を離れれば、郷の火は消し止められても、またここから燃え広がってしまう。
どうするのがいいのか、思い悩んでいると、セラフィナの声が途切れた。
「だめだ、これ以上、もたない!」
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