第六章 ep1
けたたましい鐘の音が鳴っている。
きっとまた、あの夢だ。
ゆうべ、あんなに楽しい宴だったのだから、夢もその続きでよかったのに。よりにもよって父さんが亡くなったときの夢を見るなんて。
その続きを見たくなくて、何度も寝返りを打つ。
ビーンとオリヴェルも鳴っている。
あれ?
いつもの夢と少し違う。
ぱちりと目が開いた。
あの鐘の音は、夢じゃない!
「ミーリャ! 起きるの遅いんだよ! あの鐘! 絶対なんかあったぞ!」
わたしは、隣の寝台でぐっすり眠っているセラフィナを起こしたが、ゆすったくらいでは、まったく目を覚まさない。
「あー、もう! セラフィナ起きて!」
「うーん。もう食べられんぞ。明日にしてくれ」
「ミーリャ、おれをそいつの隣に置いてくれ」
わたしは、オリヴェルをセラフィナの寝台に置くと、手早く着替え始めた。
オリヴェルは、ビーンと何度か弦を鳴らしていたけれど、ゆすっても起きないセラフィナがそんな程度で起きるわけがない。
「起きろーーーーーー! この小娘がーーーーーーっ!」
突然、オリヴェルが十一本すべての弦を大音量で鳴らした。
冗談じゃなく、部屋が揺れるかと思った。
「な、なんだ?」
さすがに、セラフィナも目をこすりながら、体を起こした。
「おい、貴様、あの鐘の音が聞こえないのか?」
「鐘? オリヴェルの怒号しか聞こえなかったが」
「そんなに耳が悪くっちゃ、魔詩師になんぞ、なれねぇな! 耳の穴かっぽじって聞いてみろ!」
森の奥のほうから、カンカンとけたたましい鐘の音が鳴り続けている。その鐘はどんどん近くの鐘に引き継がれて、いまでは、五つ、六つの鐘が同時に鳴らされている。こういう緊急時に鳴らされる鐘は、その鐘を耳にしたものが、近くの鐘楼にあがり鐘を鳴らし継ぐことで、郷の中にいる者にまで、警告を伝えるような仕組みになっているのだ。
鐘の音はどんどん近づき、とうとう郷の中にあるだろう鐘楼の鐘も鳴り始めた。まるで腕がもげるほどの勢いで打ち鳴らされている。
寝台の側においていた普段着に袖を通し、外に逃げることも考えて外套を着込む。リュート・オリヴェルの包みをもう一度しっかり確認してから背負うと、他の荷物はあきらめた。
それはセラフィナも同じで、背負っているのは、リュート・ジゼルの楽器ケースだけだった。
すぐに建物の外に出たいところだが、初めての場所でどこに出ればいいのか、建物の外に出たとしても、郷のどこが安全なのかもわからない。
そもそも、この郷で何が起きているのかすら、わからない。
いつでも動ける状態にはなったものの、この後どうするか、ふたりで目を見合わせた時、外から足音が聞こえた。
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